著者
小泉 英明 牧 敦 山本 剛 山本 由香里 川口 英夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.207-214, 2004-03-01
参考文献数
12
被引用文献数
6

デカルトは「考える,故に我あり」といった,「考える」のは私たちの脳である.その生きた脳の解剖学的形態と,精神活動を含む高次脳機能を可視化する方法論を述べる.安全に脳機能を調べることができる無侵襲高次脳機能イメージング法の出現によって,脳神経科学の分野でもパラダイムシフトが起きている.高次脳機能を計測する方法論の原点について述べ,更に,最近になって広範な応用が注目されている近赤外光トポグラフィーを中心に紹介する.
著者
牧 敦 小幡 亜希子 田中 尚樹 桂 卓成 小泉 英明
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.7-12, 2007

【要旨】現在、様々な脳機能イメージング法が開発され、認知そして神経科学の融合が始まってきている。しかし、人の機能は遺伝子・脳・行動と大きく3階層に分けることができ、脳機能イメージング法で計測できることは脳の機能に限られる。この3階層は、それぞれ異なる計測方法によってそれぞれの特性を明らかにすることが可能であり、これら計測方法の統合によって人の理解へ1歩進むであろう。まず、行動から計測される個人の立体視能と光トポグラフィによって計測される立体視時の脳活動の関連性を示した。この結果から、立体視能によって2群に分けられた被験者が立体視を行った際、頭頂連合野・後頭頂連合野における脳血液量(総ヘモグロビン濃度変化)が立体視能と同様な傾向を示すことがわかった。次に、採血によって決定されたアセトアルデヒド代謝酵素の遺伝子多型と、光トポグラフィによって計測された視覚刺激に対する脳活動(飲酒時)の関連性を示した。この結果からは、遺伝子によって2群に分けられた被験者がチェッカーパタン(赤黒8Hz反転)を見た際、後頭葉1次視覚野近傍における脳血液量が遺伝子多型によって異なる時間経過を取ることが明らかとなった。本論文では、これらの実験結果を再構成し、異種計測方法の統合によって、人の本質的な理解が深まる可能性を議論する。