著者
石井 直方 中里 浩一 佐々木 一茂 小笠原 理紀 田村 優樹 越智 英輔
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

加齢性筋減弱症 (サルコペニア)に伴う速筋線維特異的萎縮と線維数減少、結合組織増生などの質的変化の機序はいまだ不明である。本研究では、サルコペニア動物モデル、およびヒトを対象とし、筋線維タイプ、ミトコンドリア、筋サテライト細胞、運動神経、結合組織における質的変化とその要因に関する知見を得るとともに、それらに対するレジスタンス運動の効果を検証する。
著者
芦田 雪 檜森 弘一 舘林 大介 山田 遼太郎 小笠原 理紀 山田 崇史
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.I-95_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】伸張性収縮(Ecc)は他の収縮様式に比べ,効果的に筋肥大を誘引すると考えられている.ただし,その根拠となる報告の多くは,ヒトの随意運動を対象としており,収縮様式の違いによる運動単位の動員パターンの差異が,筋肥大効果に影響を及ぼす可能性を否定できない.一方,実験動物の骨格筋では,最大上刺激の神経-筋電気刺激(ES)を負荷することで,すべての筋線維が動員される.さらにESでは,刺激頻度により負荷量を調節することが可能である.そこで本研究では,刺激頻度の異なるESを用いて,収縮様式の違いが筋肥大効果に及ぼす影響を詳細に検討することを目的とした.【方法】Wistar系雄性ラットを等尺性収縮(Iso)群とEcc群に分け,さらにそれらを刺激頻度10 Hz(Iso-10,Ecc-10),30 Hz(Iso-30,Ecc-30),100 Hz(Iso-100,Ecc-100)の計6群に分けた.実験1では,ESトレーニングが筋量に及ぼす影響を検討するために,各群(n=5)のラット左後肢の下腿三頭筋に表面電極を貼付し,ES(2 s on/4 s off,5回×4セット)を2日に1回,3週間負荷した.なお,Iso群は足関節底背屈0°で,Ecc群は足関節を20°/sで背屈させながらESを負荷した.右後肢は,非ES側とした.実験2では,単回のESが筋タンパク質合成経路である mTORC1系に及ぼす影響を検討するために,各群(n=6)に実験1と同じ刺激条件のESを1回のみ負荷した.その6時間後に腓腹筋を採取し,mTORC1系の構成体であるp70S6KおよびrpS6のリン酸化レベルを測定した.【結果】すべての刺激頻度において,ESによる発揮トルク及び力積はIso群に比べEcc群で高値を示した.体重で補正した腓腹筋の筋重量(MW/BW)は,Ecc-30,Iso-100,Ecc-100群において,非ES側と比較しES側で増大するとともに,Ecc-30およびIso-100群に比べEcc-100群で高値を示した.p70S6Kのリン酸化レベルは,30 Hzおよび100 Hzの刺激頻度において,Iso群と比較しEcc群で高値を示した.また,全ての個体における発揮トルク及び力積と,MW/BWの変化率,p70S6KおよびrpS6のリン酸化レベルとの間には高い相関関係が認められた.【考察】本研究の結果,EccはIsoに比べ,筋に対して強い物理的ストレスが負荷されるため,タンパク合成経路であるmTORC1系がより活性化し,高い筋肥大効果が得られることが示された.また,この考えは,刺激頻度を変化させ,負荷強度の異なる群を複数設けたことにより,より明白に示された.【結論】筋肥大効果は,収縮様式の違いではなく,筋への物理的な負荷強度および負荷量により規定される.【倫理的配慮,説明と同意】本研究におけるすべての実験は,札幌医科大学動物実験委員会の承認を受け(承認番号:15-083)施設が定める規則に則り遂行した.