- 著者
-
山本 富美子
二通 信子
- 出版者
- 公益社団法人 日本語教育学会
- 雑誌
- 日本語教育 (ISSN:03894037)
- 巻号頁・発行日
- vol.160, pp.94-109, 2015 (Released:2017-06-21)
- 参考文献数
- 9
人文・社会科学系に多い「資料分析型」論文で,論文筆者が資料をどのように引用・解釈して結論へと導いているのか,論理展開のための解釈構造を分析した。その結果,引用・解釈に関わる文には「A中立的引用文」,「B解釈的引用文」,「C引用解釈的叙述文」,「D解釈文」の4種があり,それぞれ独自の機能を果たしていることが判明した。Aは資料の着目点を中立的立場から引用・提示し,Bは資料を論文筆者の立場から引用して解釈構造の軌道に乗せる。Cは資料との内容的関連性を持たせつつ論文の解釈構造の中で引用叙述し,Dは資料には一定の距離を置いて読み手を論文の解釈構造の中に巻き込み,主張・結論へと導く。論理展開パターンにはDの論点提示からA,B,Cの引用・解釈,Dの論文筆者独自の議論を経て,重要な論理展開要素の認定または内容の小括で締めくくられる。量的特徴からもB,C,Dの効果的指導が求められる。