著者
生田 正文 丹羽 正和 檀原 徹 山下 透 丸山 誠史 鎌滝 孝信 小林 哲夫 黒澤 英樹 國分(齋藤) 陽子 平田 岳史
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.3, pp.89-107, 2016-03-15 (Released:2016-06-21)
参考文献数
67
被引用文献数
11

既往文献の火山ガラス屈折率データからは識別が困難であった桜島の歴史時代の噴火(文明,安永,大正)軽石について,本研究では火山ガラスの水和部と未水和部とを区別して屈折率測定を行い,斜方輝石の屈折率も含めてそれぞれの軽石に違いがあることを見出した.一方,宮崎平野南部で掘削したコアに含まれる軽石濃集層に対して鉱物組成分析,火山ガラスの形態分類や屈折率測定,斜方輝石の屈折率測定,および炭質物の放射性炭素年代測定を行い,本研究による歴史時代の桜島噴火起源の軽石の分析と比較した.また,それぞれの火山ガラスについてレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法による主成分・微量元素同時分析を行った.その結果,軽石濃集層は桜島文明テフラに対比されることが判明した.桜島文明テフラは,軽石の状態で宮崎平野南部まで到達していた可能性が高い.
著者
工藤 崇 檀原 徹 岩野 英樹 山下 透 柳沢 幸夫
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.273-280, 2011

新潟県加茂地域,三条市塩野淵において,中部中新統の七谷層から黒雲母に富むテフラを発見し,塩野淵バイオタイト(Sbi)テフラと命名した.本テフラは灰色を呈する層厚9 cmの結晶質中粒~極粗粒砂サイズの凝灰岩で,七谷層の玄武岩~安山岩火山砕屑岩と明灰色塊状泥岩の間に挟在する.本テフラの構成鉱物は,斜長石(オリゴクレース及びバイトゥナイト組成),石英,サニディン,黒雲母,不透明鉱物を主体とし,微量のジルコンと褐れん石を伴う.本テフラのジルコンFT年代は13.8±0.3 Maであり,微化石層序と調和する.本テフラは,同じく七谷層に挟在し,紀伊半島の室生火砕流堆積物に対比されるKbiテフラと同様な層準にあり,非常によく似た層相を示す.しかし,SbiテフラとKbiテフラは,斜長石組成の不一致,微量に含まれる重鉱物の組み合わせの不一致,ジルコンのウラン濃度の不一致から対比されない.したがって,今後,両者の対比にあたっては注意が必要である.
著者
工藤 崇 檀原 徹 岩野 英樹 山下 透 三輪 美智子 平松 力 柳沢 幸夫
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.5, pp.277-288, 2011
被引用文献数
1 2

新潟堆積盆加茂地域において,中部中新統の七谷層から黒雲母に富むテフラを発見し,駒出川バイオタイト(Kbi)テフラと命名した.本テフラは灰色を呈する層厚9 cmの結晶質中粒~粗粒砂サイズの凝灰岩で,七谷層上部の明灰色泥岩中に挟在する.本テフラの構成鉱物は石英,斜長石(オリゴクレース~ラブラドライト組成),サニディン,黒雲母を主体とし,微量のざくろ石,赤色および無色のジルコンを伴う.本テフラは浮遊性有孔虫化石帯区分のN.9帯,石灰質ナンノ化石帯区分のCN4帯に含まれ,堆積年代は14.2~14.7 Maと見積もられる.本テフラのジルコンFT年代は14.6±0.3 Maであり,微化石層序と良く調和する.記載岩石学的特徴,FT年代,微化石層序の一致から,Kbiテフラ,紀伊半島の室生火砕流堆積物,房総半島木の根層中のKn-1テフラの三者は対比可能であり,熊野酸性岩の形成に関連した広域テフラの可能性が高い.
著者
山下 透 檀原 徹 岩野 英樹 星 博幸 川上 裕 角井 朝昭 新正 裕尚 和田 穣隆
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 = THE JOURNAL OF THE GEOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.7, pp.340-352, 2007-07-15
参考文献数
49
被引用文献数
10 8

紀伊半島北部に分布する室生火砕流堆積物とその周辺の凝灰岩(石仏凝灰岩,古寺凝灰岩,玉手山凝灰岩)および外帯中新世珪長質岩類について,屈折率を用いた軽鉱物組合せモード分析を行った.その結果,紀伊半島北部の中期中新世珪長質火砕流堆積物の斜長石系列は,すべてオリゴクレース~ラブラドライトで特徴付けられることから,これら4者は対比された.加えて室生火砕流堆積物は外帯に分布する熊野酸性岩類の流紋岩質凝灰岩の一部と対比できた.これらのことから,室生火砕流堆積物と石仏凝灰岩,古寺凝灰岩,玉手山凝灰岩は15 Maの熊野地域のカルデラを給源とする同一の大規模火砕流堆積物であると推定される.また熊野酸性岩類の中のアルバイトで特徴付けられる流紋岩質凝灰岩は,同じ軽鉱物組合せをもつ中奥弧状岩脈を給源とする可能性がある.<br>
著者
檀原 徹 星 博幸 岩野 英樹 山下 透 三田 勲
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.7, pp.384-389, 2007 (Released:2008-03-29)
参考文献数
44
被引用文献数
3 1

中期中新世前期(15 Ma)テフラの広域対比を提案する.記載岩石学的および放射年代学的分析から,房総半島のKn-1凝灰岩は約400 km離れた紀伊半島の火砕流堆積物と対比される.Kn-1は木の根層中に挟まる約16 m厚の珪長質凝灰岩で,紀伊半島北部の室生火砕流堆積物とそれに対比される火砕流堆積物(玉手山凝灰岩,石仏凝灰岩)と共通した造岩鉱物および火山ガラスをもつ.Kn-1のジルコンのフィッション・トラック年代は約15 Maで,紀伊半島の火砕流堆積物の年代と区別できない.玉手山-石仏-室生火砕流堆積物は熊野酸性岩類や大峯花崗岩類を含む紀伊半島外帯火成活動で起きたカルデラ噴火に由来することから,Kn-1凝灰岩も紀伊半島外帯(おそらく熊野)起源の広域テフラと考えられる.
著者
山下 透 檀原 徹 岩野 英樹 星 博幸 川上 裕 角井 朝昭 新正 裕尚 和田 穣隆
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.7, pp.340-352, 2007 (Released:2008-03-29)
参考文献数
50
被引用文献数
1 8

紀伊半島北部に分布する室生火砕流堆積物とその周辺の凝灰岩(石仏凝灰岩,古寺凝灰岩,玉手山凝灰岩)および外帯中新世珪長質岩類について,屈折率を用いた軽鉱物組合せモード分析を行った.その結果,紀伊半島北部の中期中新世珪長質火砕流堆積物の斜長石系列は,すべてオリゴクレース~ラブラドライトで特徴付けられることから,これら4者は対比された.加えて室生火砕流堆積物は外帯に分布する熊野酸性岩類の流紋岩質凝灰岩の一部と対比できた.これらのことから,室生火砕流堆積物と石仏凝灰岩,古寺凝灰岩,玉手山凝灰岩は15 Maの熊野地域のカルデラを給源とする同一の大規模火砕流堆積物であると推定される.また熊野酸性岩類の中のアルバイトで特徴付けられる流紋岩質凝灰岩は,同じ軽鉱物組合せをもつ中奥弧状岩脈を給源とする可能性がある.