著者
三浦 大助 和田 穣隆
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.7, pp.283-295, 2007-07-15
参考文献数
87
被引用文献数
5 8

平均噴出率・楕円率・ルーフアスペクト比を用いた検討から,圧縮テクトニクスと西南日本の中期中新世カルデラ火山の関係について,以下のような考察が得られた.カルデラ火山とテクトニクスの関係では,マグマの噴出しやすさが重要である.陥没構造の違いは,陥没の仕事量の相違である.西南日本のカルデラ火山群は,圧縮と引張の中間的性質を示す極めて大きな平均噴出率である.楕円率・規模・ルーフアスペクト比とトレンチ距離の関係では,トレンチ側で楕円率×活動規模が大きく,ピストン型カルデラが発生しやすいことがわかった.古応力方位はNNE-SSW〜NE-SWの最大圧縮応力方位(σ_<Hmax>)と推定され,この時代の中央構造線(MTL)の左横ずれ変位と一致する.さらに,火山フロントの後退条件を検討した結果,マグマ供給率の低下とテクトニック応力の増加によって起こると考えられる.
著者
佐藤 隆春 中条 武司 和田 穣隆 鈴木 桂子
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.Supplement, pp.S53-S69, 2012-08-15 (Released:2013-02-21)
参考文献数
63
被引用文献数
1 6

室生火砕流堆積物は1960年代以降,大規模な珪長質火山活動の噴出物としてとらえられてきた (志井田ほか, 1960など).ここ十数年の間に,火山地質,地質構造,古地磁気方位,化学組成,構成鉱物の特徴など,多面的な研究が進められてきた.これらのデータの多くから室生火砕流堆積物は,熊野酸性火成岩類や中奥 (なかおく) 火砕岩岩脈群などと共通する特徴を示し,紀伊半島中軸部〜東部に形成されたカルデラ火山群が給源火山であることが明らかになった.室生火砕流堆積物の遠方相に対比される石仏凝灰岩層は給源カルデラ群北端から50 km以上流走したと推定される.本巡検では高温で大規模な火砕流堆積物(high-grade ignimbrite)の岩相と縁辺部における岩相を中心に観察し,大規模火砕流噴火の推移を体感してもらいたい.
著者
三浦 大助 和田 穣隆
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.7, pp.283-295, 2007 (Released:2008-03-29)
参考文献数
87
被引用文献数
3 8

平均噴出率・楕円率・ルーフアスペクト比を用いた検討から,圧縮テクトニクスと西南日本の中期中新世カルデラ火山の関係について,以下のような考察が得られた.カルデラ火山とテクトニクスの関係では,マグマの噴出しやすさが重要である.陥没構造の違いは,陥没の仕事量の相違である.西南日本のカルデラ火山群は,圧縮と引張の中間的性質を示す極めて大きな平均噴出率である.楕円率・規模・ルーフアスペクト比とトレンチ距離の関係では,トレンチ側で楕円率×活動規模が大きく,ピストン型カルデラが発生しやすいことがわかった.古応力方位はNNE-SSW~NE-SWの最大圧縮応力方位(σHmax)と推定され,この時代の中央構造線(MTL)の左横ずれ変位と一致する.さらに,火山フロントの後退条件を検討した結果,マグマ供給率の低下とテクトニック応力の増加によって起こると考えられる.
著者
和田 穣隆 南川 実咲
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.281-291, 2021-12-31 (Released:2022-02-22)
参考文献数
23

Surface structures of magmatic dikes reflect dike emplacement processes. Excellent exposures of the Miocene Hashigui-iwa dike (Wakayama, SW Japan) exhibit well-preserved surface structures including drag folds, scour marks, extension fractures, and cusps. Scour marks are evident on the drag-folded surface, and are in turn cut by extension fractures. Inside the cusps, which are clefts formed by adjacent convex margin irregularities, the drag-folded margins enclose mudstone lenses. Based on our field observations, we infer an emplacement mechanism whereby magma fingers ascended through moderately consolidated host sediments, forming scour marks on chilled margins and causing repeated drag folding. Continued magma flux allowed the fingers to expand, generating extension fractures on the chilled margins. Ultimately, the fingers coalesced, forming the now-preserved cusp structures.
著者
高嶋 礼詩 和田 穣隆 星 博幸 新正 裕尚 工藤 崇 西 弘嗣
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
日本地質学会学術大会講演要旨 第125年学術大会(2018札幌-つくば) (ISSN:13483935)
巻号頁・発行日
pp.162, 2018 (Released:2019-08-16)

【災害のためプログラム中止】 平成30年北海道胆振東部地震により学術大会のプログラムが大幅に中止となりました.中止となったプログラムの講演要旨については,著者のプライオリティ保護の見地からJ-STAGEに公開し,引用可能とします.ただし,学術大会においては専門家による議論には供されていませんので「災害のためプログラム中止」との文言を付記します.(日本地質学会行事委員会)
著者
山下 透 檀原 徹 岩野 英樹 星 博幸 川上 裕 角井 朝昭 新正 裕尚 和田 穣隆
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 = THE JOURNAL OF THE GEOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.7, pp.340-352, 2007-07-15
参考文献数
49
被引用文献数
10 7

紀伊半島北部に分布する室生火砕流堆積物とその周辺の凝灰岩(石仏凝灰岩,古寺凝灰岩,玉手山凝灰岩)および外帯中新世珪長質岩類について,屈折率を用いた軽鉱物組合せモード分析を行った.その結果,紀伊半島北部の中期中新世珪長質火砕流堆積物の斜長石系列は,すべてオリゴクレース~ラブラドライトで特徴付けられることから,これら4者は対比された.加えて室生火砕流堆積物は外帯に分布する熊野酸性岩類の流紋岩質凝灰岩の一部と対比できた.これらのことから,室生火砕流堆積物と石仏凝灰岩,古寺凝灰岩,玉手山凝灰岩は15 Maの熊野地域のカルデラを給源とする同一の大規模火砕流堆積物であると推定される.また熊野酸性岩類の中のアルバイトで特徴付けられる流紋岩質凝灰岩は,同じ軽鉱物組合せをもつ中奥弧状岩脈を給源とする可能性がある.<br>
著者
新正 裕尚 古川 邦之 折橋 裕二 外西 奈津美 和田 穣隆
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.7, pp.533-538, 2018-07-15 (Released:2018-08-18)
参考文献数
13
被引用文献数
6

岐阜県南部に分布する可児層群の最下部を占める蜂屋層は第一瀬戸内累層群東部で最も古い地層であり,主に非海成の火砕岩類からなる.蜂屋層最下部の栃洞溶結凝灰岩部層の溶結凝灰岩から分離したジルコンのレーザーアブレーションICP-MSによるU-Pb年代測定を行ったところ,238U-206Pb年代の加重平均として22.38±0.17Ma(2σ)が得られた.この年代は蜂屋層の堆積開始時期を拘束する.分析を行った溶結凝灰岩試料の蛍光X線分析による全岩主成分・微量元素組成を併せて報告する.
著者
山下 透 檀原 徹 岩野 英樹 星 博幸 川上 裕 角井 朝昭 新正 裕尚 和田 穣隆
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.7, pp.340-352, 2007 (Released:2008-03-29)
参考文献数
50
被引用文献数
1 7

紀伊半島北部に分布する室生火砕流堆積物とその周辺の凝灰岩(石仏凝灰岩,古寺凝灰岩,玉手山凝灰岩)および外帯中新世珪長質岩類について,屈折率を用いた軽鉱物組合せモード分析を行った.その結果,紀伊半島北部の中期中新世珪長質火砕流堆積物の斜長石系列は,すべてオリゴクレース~ラブラドライトで特徴付けられることから,これら4者は対比された.加えて室生火砕流堆積物は外帯に分布する熊野酸性岩類の流紋岩質凝灰岩の一部と対比できた.これらのことから,室生火砕流堆積物と石仏凝灰岩,古寺凝灰岩,玉手山凝灰岩は15 Maの熊野地域のカルデラを給源とする同一の大規模火砕流堆積物であると推定される.また熊野酸性岩類の中のアルバイトで特徴付けられる流紋岩質凝灰岩は,同じ軽鉱物組合せをもつ中奥弧状岩脈を給源とする可能性がある.
著者
新正 裕尚 和田 穣隆 折橋 裕二 角井 朝昭 中井 俊一
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.109, no.12, pp.689-696, 2003-12-15
被引用文献数
6 10

奈良県吉野町樫尾の吉野川に沿って分布する玄武岩・流紋岩複合岩脈から約1m径の花こう岩質包有物を見出した.この包有物の起源を探るため全岩化学分析とレーザーアブレーションICP質量分析法によるジルコンのU-Pb年代測定を行った.その結果全岩化学組成は外帯花こう岩類の一員である大峯花こう岩質岩と類似すること,最も若い年代を示すジルコン群がら求めた花こう岩質岩の固結年代は13.2±1.0Maであることが判った.これらから中央構造線南方に中新世の花こう岩質岩の潜頭岩体が存在すると推定される.