著者
端野 道夫 田村 隆雄 末永 慶寛 山中 稔
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

2007年台風4号に伴う大雨時に,香川県馬宿川流域(地質:砂岩・泥岩,土地利用:森林)と香川県鴨部川流域(地質:風化花崗岩,土地利用:森林・田畑・宅地が混在)を対象に,(1)山地渓流水の詳細な雨水・物質流出観測ならびに数理モデル・シミュレーションの実施と,(2)洪水ピーク前,ピーク直後,及びピーク後における源流部から河口部までの河川水濃度の観測を実施し,地質や土地利用の相違が雨水・物質流出機構に与える影響について数量的に検討した.なお一雨降水量は共に約200mmであった.特に重要な知見を以下に示す.1.砂岩・泥岩質の馬宿川の方が雨水の直接流出率が高いため,小規模降雨であっても馬宿川の方が,物質流出量が多くなる特徴がある.2.森林域での地下水涵養量は,風化花崗岩の鴨部川流域の方が大きいため,地下水帯からの単位時間当たりの物質溶出量は鴨部川流域の方が大きい.(SiO_2の場合で1.6倍)3.珪酸は山地森林域を流出源とするため,土地利用が高度化した鴨部川流域(森林域42%)では馬宿川流域(森林域100%)と比較して流出比負荷量は小さくなる,(SiO_2の場合で46%減)残念ながら,大雨前まで小雨であったこと等から海域の水質にまで影響を与えるような洪水規模とはならず,2流域に隣接する海域の調査・解析はできなかったが,ほぼ同じ降雨波形,降水量のもと,異なる地質,土地利用が雨水・物質流出機構に与える影響について数理モデルを用いて具体的に評価できたことは,非常に重要な成果であったと考える.
著者
木下 博久 長谷川 修一 野々村 敦子 山中 稔
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.472-484, 2019-02-10 (Released:2019-12-24)
参考文献数
50
被引用文献数
1 3

流域スケールにおける斜面崩壊の潜在的危険度を評価することを目的として,谷密度のみを変数とする簡便な評価手法を提案し,その有効性,適用性を検討した.国土地理院発行2万5千分の1地形図及び10mDEMを用いた地形解析から谷線を抽出し,谷密度を算出した.谷線はコンターの平均曲率(H)から求め,H>0.1を閾値とすることで,谷地形としての再現性が高くなることを確認した.表層崩壊,土石流を主とする既往土砂災害を対象として,災害発生斜面の流域の谷密度と比較した結果,谷密度が高い流域ほど豪雨時に不安定となり崩壊が発生しやすい場所が多く存在すること,また,谷頭付近を発生源とする崩壊が多いなどの傾向が認められた.谷密度と崩壊頻度との関係は,0.5~1.5km2程度の流域において比較的良い相関(r=0.60~0.66)を示した.このことから,対象とする解析領域の大きさを考慮することで,本手法は表層崩壊や土石流といった斜面崩壊の危険度評価に有効な手法となり得ると考えられる.今後さらに既往災害事例との比較を重ね,また,地形地質的素因が谷密度に与える影響を考慮するなどで,様々な崩壊タイプに対する本手法の汎用性,適用性の拡大が期待される.
著者
長谷川 修一 山中 稔 野々村 敦子 伊藤 久敏 菅原 弘樹
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

東北日本の太平洋側にある松島は,松島湾とその内外にある大小260余りの島々からなる日本三景の一つである景勝地である.長谷川ほか(2008)は,松島周辺の地形,地質を検討した結果,巨大な地すべりによって形成された可能性が高いとの仮説(松島巨大地すべり説)を示した.本研究では松島巨大地すべり説を実証する目的で,東松島市宮戸島において2015年に深さ70mのオールコアボーリングを実施した。また、想定すべり面の上盤側,想定すべり面,想定すべり面の下盤側の3箇所から得たジルコンのU-Pb年代を試みたが,誤差の範囲で一致する15.2 Maを示し、地すべり説を積極的に支持する結果は得られなかった.