著者
山口 慎太郎 伊藤 裕 吉野 純
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.213-223, 2020-07-25 (Released:2020-09-04)
参考文献数
73

老化・加齢は癌,糖尿病,アルツハイマー病などの種々の疾患の最も重要な危険因子として知られている.未曾有の超高齢社会にある我が国において,高齢者の健康寿命の延伸を図る新しい方法論の開発は喫緊の課題であると言える.Nicotinamide adenine dinucleotide NAD+は,約110年前に発見された古典的な補酵素として知られている.言わばルネッサンスを迎えた近年のNAD+生物学研究の爆発的な展開により,ヒトを含めた哺乳動物において,老化に伴うNicotinamide phosphoribosyltransferase(NAMPT)を含むNAD+生合成酵素活性の低下,あるいはCD38に代表されるNAD+分解酵素活性の亢進により,全身性に臓器NAD+量が減少することが明らかとなった.そして,遺伝子改変動物モデルを駆使した解析により,このNAD+量の減少が老化に伴う機能障害,老化関連疾患の病態形成に重要な役割を果たすことが解明されつつある.さらに,数々の疾患モデル動物,老化マウスを用いた検討により,nicotinamide mononucleotide(NMN),nicotinamide riboside(NR)に代表されるNAD+中間代謝産物が,健康増進作用,抗老化作用を発揮することも続々と報告されている.これらの結果は,NAD+生物学研究の臨床応用,社会実装への機運を高め,現在,ヒトにおけるNAD+中間代謝産物の安全性,効能を検討する臨床研究が世界的に展開されている.本総説では,目紛しいほどの進化を遂げるこれらNAD+生物学研究トランスレーショナル研究の進捗を最新の知見を交え紹介し,超高齢社会日本におけるその研究の意義,可能性を考察したいと思う.
著者
中谷 英章 入江 潤一郎 稲垣 絵美 藤田 真隆 三石 正憲 山口 慎太郎 岡野 栄之 今井 眞一郎 安井 正人 伊藤 裕
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
日本臨床薬理学会学術総会抄録集 第42回日本臨床薬理学会学術総会 (ISSN:24365580)
巻号頁・発行日
pp.2-P-M-2, 2021 (Released:2021-12-17)

【目的】最近の動物実験においてニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の細胞レベルでの減少がインスリン抵抗性やアルツハイマー病に代表される老化関連疾患を引き起こすこと、NAD中間代謝産物であるニコチンアミドヌクレオチド(NMN)を投与することによりNAD量を増加させ、病態を改善することが報告されている。しかし、ヒトにおけるNMN投与の安全性については不明である。そこで我々は健康成人男性にNMNを経口投与し、その安全性を確認する臨床試験を行った。【方法】10名の健康成人男性に対し、100mg、250mg、500mg のNMNを1週間毎に段階的に経口投与し、投与前と投与後5時間までの血液データや尿データ、投与時の身体計測、心電図、胸部レントゲン、眼科検査を行った。【結果・考察】NMNの単回経口投与により血圧、心拍数、体温、血中酸素飽和度は変化しなかった。血液データでは、軽度の血清ビリルビンの上昇、血清クレアチニン、クロライド、血糖値の低下以外は変化を認めなかった。投与前後での眼科検査や睡眠の質スコアは変化を認めなかった。また、血中のNMNの最終代謝産物は濃度依存性に上昇し、体内でNMNの代謝がきちんと行われたことが確認された。【結論】健康成人男性においてNMNの単回経口投与は大きな副反応を認めず安全であった。
著者
山口 慎太郎 安藤 道人 神林 龍
出版者
東京大学
雑誌
国際共同研究加速基金(帰国発展研究)
巻号頁・発行日
2017

本年度は、以下の平成30年度研究発表の雑誌論文に示してあるように、多くの査読付き論文を出版するという成果を得ることができた。それらの出版にいたる過程では、下記に記載したさまざまな学会、大学でのセミナー発表を行い、そこでは有意義な討論を行うことができた。また、西宮市と協力して行った保育利用申込者に対するアンケートも集計を行うことができた。それにより、基本的な記述統計を整理し、西宮市に報告書を提出した。平成31年度はデータのさらなる分析を行う予定である。また、学術論文の出版を目標としており、さらなる研究成果が平成31年度に見込まれている。現在は研究実施計画に従って、引き続いてデータ収集・分析の最中であり、今後のさらなる研究成果は平成31年度に得られることが見込まれる。