著者
坂本 淳 山岡 俊一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.270-276, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
12
被引用文献数
6 1

わが国の地域鉄道は危機的な状況にある.2000年以降,全国で38路線の地域鉄道が廃止され,現存する地域鉄道においても厳しい経営状況に直面している.一方で,地域鉄道は単に交通手段という役割だけでなく,地域活性化等の便益があるといわれている.このことから,地域にとって鉄道を維持することの意味を整理することが求められている.そこで本研究では,2000年以降に廃止された地域鉄道に着目し,国勢調査データを用いた分析を行った.まず,廃止された鉄道の駅周辺における人口,居住期間,住居種別,年齢,利用交通手段の2000年~2010年の間の変化を,現存する地域鉄道のそれと比較した.次に,廃止された地域鉄道について,廃止前後5年間の人口変化率を比較した.分析の結果,廃止された地域鉄道の駅周辺の若年人口や定住者の減少率が,現存する鉄道駅周辺のそれと比較して有意に大きいことがわかった.さらに,廃止された地域鉄道のうち特定地方交通線については,廃止前後で人口減少率が増加していることが確認できた.
著者
三村 泰広 山岡 俊一 富永 哲史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.22-00334, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
7

近年,地方都市では財政上の課題を背景に道路整備や維持管理における住民の当事者意識の重要性が叫ばれている.当事者意識の醸成を図るに当たり,まずは道路に対する価値意識の理解が不可欠である.本研究は,特に住民に身近な生活道路に対する価値意識を把握しようとするものである.東海3県に居住する調査会社のモニター(n=1,039)を対象に,生活道路に求める価値を調査した.結果,地方都市に住む住民は,生活道路の価値として,安全・安心であること,高齢者や子供,障害者といった交通弱者の使いやすさ,通りやすさを重視していることを示した.また,これらの価値に対する意識の高さが,当該道路の維持管理における当事者意識の高さと相関するとはいえず,むしろ,行政主導で維持管理すべきとする意向の高さと相関していることを示した.
著者
三村 泰広 山岡 俊一 富永 哲史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00181, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
9

本研究は,これからの地方都市における幹線道路,生活道路といった道路種別ならびに,中心市街地,郊外,中山間地域の道路における道路維持管理について,多様な地域に住まう住民の意識を把握することで,今後の地方都市における道路維持管理の在り方に関する基礎的知見を得ることを目的としている.政令市を除く愛知県,三重県,岐阜県の東海3県に居住する方(n=1,039)を対象に道路維持管理の重要性,維持管理方法の受容性を調査した結果,それぞれ,当初想定した道路種別や整備される地域性によって当該意識に差が生じており,これらの傾向を踏まえた道路維持管理の在り方が重要であることが明らかとなった.
著者
山岡 俊一 田川 央
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.843-849, 2007-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

本研究では、植栽枡によるフォルトが密に設置してあるコミュニティ道路とイメージフォルトが設置されているコミュニティ道路において、自動車の走行挙動を観察する実態調査、被験者に自動車で対象コミュニティ道路を走行させる走行調査、周辺住民を対象としたアンケート調査を実施した。これらの調査結果より、イメージフォルトのドライバーに対する注意を促す効果 (注意喚起効果) が確認でき、住民の植栽枡の維持管理に対する意識が明らかとなった。
著者
山岡 俊一
出版者
呉工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

地区交通対策の事後評価に関する研究は多数見られるものの、長期供用後の評価に関する研究は数少ない。また、地区交通対策の実務においても、長期供用後のメンテナンスや追加的な対策を実施した例もあまり見られない。そこで本研究では、供用後5年が経ちコミュニティ・ゾーンが地区に馴染んだ名古屋市長根台地区を事例に、交通量・自動車走行速度・路上駐車台数等の調査、地元住民を対象としたアンケート調査を実施し、各調査で得られたデータを分析することにより供用後数年経過したコミュニティ・ゾーンの効果を再評価した。また、地区内の交通状況が改善され地区内住民から良い評価が得られたとしても、周辺に悪影響を及ぼしたり、周辺住民に自分たちの地区が整備されていないことに対する不公平感を感じたりしているかもしれない。そこで、長根台地区周辺の交通状況と道路に対する意識、長根台地区内の道路に対する意識と評価、長根台地区内のハード的対策とソフト的対策に対する意識、周辺住民への事業の周知・説明の有無等をアンケートで尋ね、周辺住民の立場からコミュニティ・ゾーンを評価した。以下に得られた知見を列挙する。(1)ゾーン内の自動車交通の抑制効果は整備直後とほとんど変わっていない。(2)交通事故件数が、事業完了3年後と5年後で事業実施前の件数に戻っており、特に自動車と自転車の事故が多い。(3)地元住民のコミュニティ・ゾーンに対する各種評価も依然として満足傾向にある。(4)各種物理的デバイスは地元住民から十分な評価を得ている。(5)安全で快適な地区を維持するために、自主的な対策を講じている住民が存在する。(6)ゾーン内住民は安全性と快適性を重視し、ゾーン周辺住民は利便性を重視している。(7)ゾーン内住民とゾーン周辺住民でコミュニティ・ゾーンに対する不満は共通点が多い。(8)ゾーン周辺住民はコミュニティ・ゾーンの形成によるゾーン周辺道路の悪化は無いと考えている。