著者
加藤 弓枝
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、江戸時代において、身分的・空間的境界領域の人々による学問の営為がいかなるものであったのかについて注目し、とくに和歌を中心に考察した。その結果、とりわけ非蔵人の学芸活動の実態に関して明らかにすることできた。具体的には、彼らが「書籍講」という独特の「講」を営み、書物を共同購入していたことを明らかにすることができた。これらの成果によって、近世文壇史・文化史へ新たな視点を提示することができた。
著者
加藤 貴英
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

高炭酸ガス吸入は呼吸中枢を刺激し,呼吸・循環機能を賦活させる.本研究では,この特異的生理学的応答をスポーツトレーニングに応用した.1日1時間2週間の間欠的高炭酸ガス吸入を持久性アスリートに行わせた結果,高炭酸ガス換気応答が高まり,運動時の最大換気量が増加した.本研究の結果から,間欠的高炭酸ガス吸入は持久性アスリートの換気能力を高める可能性があることを示した.
著者
早坂 太一
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
豊田工業高等専門学校研究紀要 (ISSN:02862603)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.35-44, 2008

I performed several psychophysical experiments and studied the mechanism of human object recognition based on Paivio's dual coding theory, since degree of viewpoint dependency is different between novel objects and ones we see every day. The difference of experimental results was examined,, by using the combination of solid parts with temporary names. I suggest that the existence of such verbal information influences the human performance of object recognition.
著者
杉浦 藤虎 伊藤 和晃
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ロボカップへの参加は問題解決能力の育成や,高度な技術力の習得に効果が高いことが知られている。一方,世界大会はコミュニケーション力やプレゼンテーション力を高められる貴重な機会でもある。ロボカップで好成績を残すようになると,出前授業としてロボットのデモンストレーション依頼が増えてきた。しかし,ロボカップに参加する学生は社交的で派手な学生は少ない。そこで,校外において学生自ら開発したロボットを積極的にアピールする機会を提供し,リーダーシップの取れる人材育成の試みを行った。アンケート調査の結果,ロボカップ世界大会出場および出前授業の経験が学生自身の積極性に関する意識改革に大きく寄与したことが示された。
著者
小林 睦
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,豪雨時の土構造物の変形・崩壊挙動を調べるために,盛土斜面および多数アンカー式補強土壁を対象にした遠心力場散水シミュレーションを実施した.その結果,飽和領域が表層部から拡大していく盛土斜面では,土の内部摩擦角よりも法面勾配が大きい場合は,見掛けの粘着力が消失して不安定化して崩壊に至ることが分った.また,補強土構造物においては,適切に排水機能を維持することの重要性と,豪雨時の不安定化の進展の様子を捉えることができた.
著者
後野 昭次
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

〇研究目的:豊田高専・機械工学科の学生に対しては、様々な場面で、設計・製図・工作を行う機会がある。しかし、設計初心者である学生が設計・製図を行なう場合、寸法の記入方法に間違いが多い。なぜなら、設計初心者の学生にとって、工作・組立・測定経験が少ないため、どのような寸法記入を行えば、工作者・組立者・測定者にとって適切な寸法記入になるか実感が持てないからである。そこで、あえて間違った寸法記入の図面により製作した部品の組立・測定がスムーズにいかないことを体験させると同時に、正しい寸法記入の図面により製作した部品の組立・測定がスムーズに行えることを体験させることで、正しい寸法記入方法を理解させるための教材開発を行った。〇研究方法:主にこの教材は、機能上必要な寸法の記入方法がわかる教材を製作した。教材は、平行ピン2本と平行ピンがはまるアルミ製の部品2~3個で構成されて、寸法を記入した場所によって、組立ができたり、組立ができないものである。それは、平行ピン間に寸法が入っているものであったり、端面から平行ピンまでに寸法が入っているものなどで、計3種類製作した。〇研究成果:この教材を学生に試してもらったところ、正しい寸法記入が理解できたと答えた学生が多く、この教材の有効性が確かめられた。この教材により、机上の設計製図の学習だけでなく、実物で実感できるようにすることにより、学年が進んで、卒業研究のための部品製作のための設計製図において、適当に寸法を記入するのではなく、考えられた図面が描かれることが期待できる。
著者
杉浦 藤虎 伊藤 和晃
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

ロボコン経験者向けに特化した,自律移動型サッカーロボットの設計と研究開発を基本とした低価格な創造性開発実験セットを構築した.その上で,ロボットおよびシステムの性能評価と実験に参加した学生の創造力の向上の度合いを定量的に評価した.システムの性能は,ロボカップジャパンオープン2006年3位,2007年準優勝,ロボカップ世界大会2006年決勝トーナメント進出ベスト12,同2007年ベスト8の成績から判断して十分に高いと考えられる.創造性開発実験の4つのテーマとして行った内容を以下に示す.1.画像・通信に関して,2台のカメラによるグローバルビジョンシステムとした.画像処理の認識・検索処理の際,全画面でなく,マシンやボール周辺のみの部分解析を行うとともに,高性能無線機の導入により処理の高速化を図った.2.電子回路に関して,処理能力向上のため,ロボットに搭載したCPUを16ビットマイコンに変更した.ホイールの空転を防ぐための加速度センサを追加し,さらにキック力を容易に制御するためトリガーデバイスをリレーからFETに変更した.受信回路における誤り訂正回路,電磁ソレノイド用充電回路などを設計,作製した.3.戦略プログラムの作成に関しては,観測ノイズを低減するためのカルマンフィルタや動力学ソフトを導入した.またパスプレーに対応する協調動作,シミュレーションなどのプログラムを開発した.4.ロボット製作に関しては,メカナムホイールを使用したキーパー専用ロボット,全方向移動ホイール,ドリブル機構,キック機構,およびボール速度測定装置などを作製,改良した.以上の作製を通して実験に参加した学生の創造力や技術能力を定量的に評価した.その結果,サッカーロボットを用いた実験に参加する前と比較して,参加者の創造力,思考方法や問題解決能力は,顕著に向上することなどが示された.
著者
今岡 克也
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

この研究では木造住宅の居住者体験型簡易耐震診断法を確立させるために100棟以上の耐震診断結果のある木造住宅を対象にして水平加振実験を行って固有振動数やねじれ振幅率などを耐震診断数値と比較・検討を行った。その結果, 1階に対する2階の面積比が50%以上の場合には,固有振動数が1階の構造評点と良い相関があることが判明した。また,住宅の重心軸上で水平起振器を設置できる場合には,ねじれ振動を正確に励起させることができるので,ねじれ振幅率が1階の偏心率と良い相関があることが判明した。
著者
杉浦 藤虎 伊藤 和晃
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ロボカップサッカー競技ロボットの作製と開発を段階的かつ継続的な負荷と捉え,より高い課題を学生に課すことで創造性育成教育を行い,その効果をアンケート調査により検証した。その結果,ロボカップ参加学生の問題解決能力や思考方法などの顕著な向上を確認した。一方,世界大会に参加する上で必要な英語運用能力は学生自身が十分でないことを認識した結果となった。今後も学生の興味を引きつける教材・課題を通して,創造性や英語コミュニケーション能力の向上が期待される継続的な機会と環境を学生に提示することが有効であることが示された。
著者
今岡 克也
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は,1997年3月16日愛知県東部地震(M:5.8)の際に調査したアンケート震度の中から,高層建物内に居た人の震度に着目して,建物-地盤系の微動測定に基づいて,地震時の建物の揺れ易さを評価するものである。初めに,1999年8月21日和歌山県中部地震(M:5.5)と2000年7月15日新島地震(M:5.9)で,地震波形が観測できた三重県と静岡県内の地震計設置地点で微動測定を実施し,地震波形の卓越周期や継続時間と微動特性との関係を明確にした。次に,アンケート震度か得られた高層建物の中から震度が大きかった16棟を選び出して,建物-地盤系の微動測定を行い,(1)地盤の卓越周期,(2)建物の固有周期,(3)建物最上階の増幅倍率などを算定した。さらに,微動の測定結果を利用して,愛知県東部地震で得られた既存の地震波形から建物直下の波形を推定し,地震時の建物応答を算定し,アンケート震度と比較した。以下に,本研究で得られた研究実績をまとめる。1.愛知・三重・静岡県内の約220地点で,微動の卓越周期とM5.5〜5.9の地震波形の卓越周期を比較した結果,微動の卓越時のH/V倍率が5倍以上の場合には,8割以上の地点が地震波形の卓越周期とほぼ一致することが判明した。さらに,両者の卓越周期がほぼ一致する場合では,微動の水平動とH/Vスペクトルの卓越周期もほぼ一致することが分かった。2.建物-地盤系の微動測定によって,建物の固有周期が地盤の卓越周期と近接している高層建物は,地震時に同じ周期で長く大きく揺れる共振現象が起きることが判明し,それによって建物内のアンケート震度が大きくなることが推定できた。
著者
今岡 克也
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は,いつでも・どこでも・比較的簡単に測定できる微動の有効性を確かめるために、東海地域で地震観測を行っている施設内で微動測定を実施し,地震動と微動の特性を比較・考察することを目的としている.平成13年度から東海4県(愛知県,三重県,静岡県,岐阜県)内の地震観測施設で微動測定を実施し,表層地質などと関連させて得られた県内の地盤震動特性について,地元の新聞を通じて県民に公表するとともに,県庁や市町村の防災担当者に文書で説明した.次に,2000年10月6日鳥取県西部地震(M7.3)などの際に東海地域で得られた地震動波形を分析して,地震動と微動の特性を比較した.その結果,以下のことが判明した.(1)基板と堆積層とのせん断波速度のコントラストが大きく、かつ、堆積層が成層に近い地域では,微動H/Vスペクトルから表層地盤の1次卓越周期を容易に得ることができる.逆に,断層などの影響で堆積層が不整形になると,微動H/Vスペクトルの卓越が複数となり,また,水平動の卓越との対応も悪くなる.(2)地震の規模がM7.3と大きな場合,地震動波形と微動のH/Vスペクトルの1次卓越周期は長い周期域(4〜5秒)まで良く一致する.(3)地震動と微動のH/Vスペクトルの平均倍率を比較すると,地震動のH/V倍率は微動に比べて1.5〜2倍程度大きくなる場合が多い.(4)基盤と地表面との地震動波形から得られた表層地盤の伝達関数の1次卓越周期は、地震動のH/Vスペクトルから得られたものと良く一致する.
著者
堀井 憲爾 和田 淳 SUNOTO M.A. SOEKART J. SIRAIT K.T. 河崎 善一郎 仲野 みのる 角 紳一 依田 正之 中村 光一 山部 長兵衛 鬼頭 幸生 SUNOTO M. E. SOEKARTO J. SIRAIT K. T. 堀井 憲爾
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

インドネシアは、11月から4月に至る雨期には、ほゞ連日の雷雨に見舞われ、年間雷雨日数は、多いところでは150日にも達する世界的な雷多発地帯の一つである。雷の特性は、わが国の夏形雷に近いと思われるが、高緯度のわが国の雷との比較研究は意義がある。一方、インドネシアの電力施設は、現在、急速な開発途上にあり、送配電システムの雷防護対策は、極めて重要な技術として,その基礎となる雷の研究が重視されている。雷の研究は、自然雷の観測と共に,人工的に雷を制御し、誘発させて、雷放電特性を詳細に解明するロケット誘雷実験が欠かせない。ロケット誘雷実験は、わが国において、本研究組織のメンバ-により十数年の実施経験がある完成された技術である。このメンバ-とインドネシア側の大学、研究所のメンバ-の共同によるロケット誘雷実験が、昭和64年度より開始されて、平成2年4月6日には、インドネシアではじめての誘雷に成功した。本年度のロケット誘雷実験は、昨年度に引続き,ジャカルタの南ボゴ-ル地区のプンチャ峠近くの国営グヌンマス茶園内で、平成3年12月19日から平成4年2月19日までの2ケ月間実施された。同地点は、標高が1400mあり、ジャカルタ平原を見下ろす絶好の実験地である。この茶園内の小山の頂上に9基の発射台を立て,地上電界の測定・監視により、雷雲の接近時に、直径0.2mmの接地されたスチ-ルワイヤ付きロケットを真上に向って発射した。ロケットは英国製の船舶用救命索発射用ロケットを利用し、約500mの高度に上昇する。上昇途中でロケットから上向きのリ-ダ放電が進展し、その直後にロケットに落雷が起り、ワイヤに沿って雷電流が流れ、ワイヤは爆発燃焼してア-ク放電となる。実験期間中に30回近くロケット発射の機会があったが、ロケット不良が多く、うち15回の正常飛行により6回の誘雷に成功した。電流値は、現在詳細解析中であるが、最大12KAに達し、電流の極性はわが国の夏雷と同じく、負が5回と多く,正が1回であった。地上電界は、針端コロナ電流で最大3μAに達し、10kV/mを越える強電界を示した。今回の実験での特記すべき結果は、わが国の実験でもこれまで観測されなかった,避雷針への誘雷に成功し、流し写真の撮影にも成功したことである。12月25日,17:30の最大ー12kAに達する雷放電の第1線が、ワイヤに沿って発射台へ放電した後、約0.5秒後の第2撃が,発射台より約4m離れた10mの高さの避雷針へ放電した。その後,0.06秒後の第3撃もやはり避雷針へ放電しており、避雷針の保護効果は、多重雷の後続電撃に対して極めて有効な場合があることが確認された。15回の発射のうち1回は、ロケットが上昇途中でワイヤが地上から切れ、雷雲と大地との間の空間にワイヤが張られるという珍しい状況となり、いわゆる雷雲内放電誘発の実験となったが、残念ながら誘電には成功しなかった。今後,この方式の実験を再挑戦する必要を認めた。また,1回は空間電界計を塔載したロケットを打上げたが、電界計の不調のため観測に失敗した。この他,インドネシア電力公社の援助により、実験場内に300mの試験用配電線を架設し、誘雷放電時にこの配電線に誘導されるサ-ジ電圧の観測の準備を進め、特に分圧測定システムの技術について指導を行った。今年度は、実験の開始時と中間段階で、日本側から計5名が実験に参加し、技術指導と共同観測を行ったが、ロケットの操作、デ-タの観測記録は,すべてインドネシア側の責任で実施され、この実験に関する技術移転はほゞ完了したと考えてよい。しかし、英国製ロケットの不良が多く、次回からはわが国のロケットを輸出する必要があり、また一部の高度測定技術(電流波形記録,電磁界変化記録など)については、来年度以降も引続き技術指導と援助が必要であり、これに沿った施策推進が望まれる。なお、次年度以降も、乏しい資金ではあるが、インドネシア側で実験を継続する意向があり、日本側もできる限りこれに協力する覚悟である。