著者
沢崎 達夫 小林 正幸 新井 肇 藤生 英行 平木 典子 岩壁 茂 小澤 康司 山崎 久美子
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.108-122, 2016 (Released:2018-06-03)
参考文献数
39

日本カウンセリング学会資格検討委員会は,その任期中に新たなカウンセラーの資格について検討を進めることになった。そして,公認心理師資格が実現した中,現在のわが国におけるカウンセリングの位置づけをより明確にし,また日本カウンセリング学会の発展に向けて何をすべきかを,さまざまな観点から議論してきた。認定カウンセラーに続く新たな資格は,将来的には「カウンセリング心理士」として実現される手はずであるが,そこに至る道筋の一端をここに示す。全体の構成は,「カウンセリング,カウンセラーとは(概念,定義,活動内容,領域など)」,「カウンセリング心理学と臨床心理学」,「学校におけるカウンセリングの将来展望」,「カウンセラー資格の現状と課題」,「国際資格について」,「カウンセラーとして学ぶべきこと」となっている。これらを踏まえて,日本カウンセリング学会として,カウンセリングをどのように捉え,どのようなカウンセラーを養成すべきかを明確にし,それを実現するための具体的なカリキュラムと養成方法を検討していくことが今後の課題となっている。
著者
大芦 治 岡崎 奈美子 山崎 久美子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.41-51, 1996

本研究は, 虚血性心疾患の危険因子として知られるタイプA行動パターンの発達モデルを検討しようというものである。検証したモデルは, 両親の有名大学を志向する社会・文化的な価値観が子どもに対して学習, 進学に関する過干渉, 過保護を主とした養育態度を生起させ, それが, 子どものタイプA行動パターンの発達を促進するというものである。被験者は, 大学生(子ども)とその両親である。子ども側には, タイプA行動パターンに関する質問紙を, 両親側には有名大学を志向する価値観の質問紙, 養育態度に関する質問紙をそれぞれ実施した。結果はパス解析を用いて分析された。仮定されたモデルはほぼ支持されたが, 子どもが男子の場合と女子の場合で若干差がみられた。すなわち, 男子では母親からの影響が, 女子では父親からの影響がそれぞれ大きかった。この性による違いを考察する中で, 本研究で扱った進学や教育に関する要因以外に様々な社会・文化的な要因が介在することが予想され, 今後に検討課題を残すこととなった。
著者
下山 和弘 大芦 治 海野 雅浩 内田 達郎 長尾 正憲 小田切 一浩 山崎 久美子
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.132-140, 1993

高齢歯科患者の主訴と抑うつ傾向との関連を明らかにするために, 東京医科歯科大学高齢者歯科治療部の外来患者 (男性88名, 女性132名, 平均年齢74.5歳) を対象にZungの自己評価式抑うつ性尺度 (SDS) により抑うっ傾向の調査を行った。SDSの質問項目よりQOLの因子と抑うつ感の因子を抽出し, SDSの総得点, QOLの因子得点, 抑うつ感の因子得点と口腔内状況との関連については以前報告した。今回は被検者を主訴により義歯不適合 (上下顎全部床義歯装着者) 群義歯不適合 (その他の義歯装着者) 群, 義歯破折群, 義歯不適合・歯疼痛動揺群歯疼痛動揺 (義歯装着者) 群, 歯疼痛動揺 (義歯非装着者) 群, 心身医学的対応症例群その他の主訴をもつ群に分類し, 上記の3得点について2 (男女別) ×2 (該当する主訴の分類) の分散分析を行った。歯疼痛動揺 (義歯装着者) 群ではその他の群と比較するとQOLの因子得点が有意に低く, SDSの総得点が低い傾向があった。また心身医学的対応症例群ではSDSの総得点および抑うつ感の因子得点が有意に高かった。SDSの総得点は主訴の相違によらず女性が男性よりも有意に高かった。すなわち主訴の相違は男女間の抑うっ傾向の差に影響していなかった。本研究の結果から高齢歯科患者の主訴と抑うっ傾向との問には関連があることが推察された。歯科治療時には顎口腔系における主訴の内容を踏まえたうえで, 患者の抑うっ傾向を含めた精神的身体的な状態の把握が必要であることが示唆された。