著者
曽根 文夫(山崎文夫) 岡田 なぎさ
出版者
山口県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は局所冷却時の皮膚血流調節における冷受容体機能の役割と冷え症者の皮膚血流調節の特徴を明らかにすることであった。局所冷却時の皮膚血流量の減少反応は冷受容体刺激剤メントールの局所投与によって影響されなかった。このことは冷受容体機能が局所性皮膚血管収縮に主要な役割を果たしていないことを示唆する。冷え症者の血流量調節システムの特徴として、全身および局所冷却中に下肢末梢部において皮膚血管収縮が顕著に起こること、それには高いアドレナリン感受性が関与していることが示唆された。
著者
松浦 和文 山崎 文夫
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.175-180, 2021 (Released:2021-04-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1

〔目的〕腹式呼吸が気分と脳血流に及ぼす影響を検討した.〔対象と方法〕健常成人10名を対象とし腹式呼吸あるいは通常呼吸を行った後ストループ課題を行った.実験中,前頭部の酸素化ヘモグロビン濃度(Oxy-Hb)を測定し,呼吸前後とストループ課題後の気分を評価した.〔結果〕腹式呼吸後は混乱-当惑,緊張-不安,総合的気分状態得点が低下しストループ課題後も緊張-不安の低下が持続した.Oxy-Hbは腹式呼吸後に低下したが通常呼吸後は増加した.両呼吸条件でストループ課題後にOxy-Hbは増加した.〔結語〕1)腹式呼吸は気分を改善して前頭葉の血流抑制作用をもたらすこと,2)腹式呼吸後に精神性ストレスを受けた際,緊張-不安の低下が持続することで気分も改善傾向が続き前頭葉の血流量も低い傾向があることが示唆された.
著者
曽根 涼子 山崎 文夫 藤井 宣晴 鍋倉 賢治 池上 晴夫
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.465-474, 1993-10-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
29
被引用文献数
1

激運動後における迷走神経活動の回復過程を呼吸性心周期変動の大きさの変化から検討することおよび呼吸性心周期変動の位相の変化を明らかにし1その変化の発生機構について検討することを目的として, 健康な男子大学生6名を被検者としてトレッドミルによるexhaustive走を行なわせ, 心周期および血圧の呼吸性変動の大きさおよび位相の変化を運動後5時間にわたって追跡調査した.呼吸周期および一回換気量は, それぞれ全測定を通して6秒および21に規制した.1) 呼吸性心周期変動の大きさはexhaustive走によって著しく減少するが, 運動後約2時間で前値に復した.呼吸運動を基準とした呼吸性心周期変動の位相は運動によって有意に遅れた.そして運動後2時間は急速に, それ以後は徐々に回復する傾向を示した.2) 呼吸性SBPの大きさおよび位相には運動後に顕著な変化は認められなかった.以上の結果から, 激運動によって抑制された迷走神経活動は運動終了から約2時間で回復すると考えられる.また, 運動後には呼吸性心周期変動の位相は明らかに遅れた.これは迷走神経の活動度の低下を反映している可能性がある.
著者
山崎 文夫
出版者
産業医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

暑熱環境下では涼しい環境下に比べて、起立時に血圧の低下が起こりやすく、起立耐性は低下する。動脈圧反射機能は起立時に動脈圧を正常な範囲内に維持するために必要不可欠な機能である。圧反射の反応性を考える際、応答量に加えて、圧受容器が刺激されてから心拍変化が起こるまでの時間など応答時間も考慮する必要がある。すなわち心拍応答が短ければ、変化した血圧を短時間で正常範囲内に回復させる能力が高いと考えられるが、心拍の圧反射応答時間に暑熱負荷がどのように影響するかは明らかでない。そこで本年度は、心拍の動脈圧反射反応時間に及ぼす暑熱ストレスの影響について検討した。被験者は健康な成人9名であり、実験の内容や危険性についての説明を受けた後、同意書に署名した。水環流スーツを用いて被験者の皮膚温を調節し、正常体温時と全身加温時に圧反射機能テストを行った。圧反射機能テストにはネックチャンバーを用い、頚部に+40mmHgあるいは-60mmHgの圧を負荷することによって、頚動脈圧受容器を刺激した。各圧負荷は2-3分間の休息を挟んでそれぞれ5回行った。頚部への圧刺激から心拍反応がピークに達するまでの時間(+40mmHg、正常体温時2.5±0.3秒、加温時3.5±0.3秒;-60mmHg、正常体温時1.2±0.2秒、加温時2.2±0.3秒)は、全身加温によって有意に増加した。全身加温によって、+40mmHgの圧刺激から血圧反応がピークに達するまでの時間(正常体温時4.3±0.5秒、加温時6.7±0.6秒)は有意に増加したが、-60mmHgの刺激に対するその反応時間(正常体温時5.1±0.5秒、加温時4.5±0.6秒)は変化しなかった。これらの結果から、心拍および血管運動の頚動脈圧反射反応は、暑熱ストレスによって遅延することが示唆された。