著者
山本 博資 有本 卓
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

上記課題の研究により,下記の成果を得た。1.秘密情報が離散情報で,暗号の安全性レベルを盗聴者の秘密情報に対する条件付きエントロピーで評価する場合(a)通信路が離散的放送型通信路(Discrete Brroadcast Channel)の場合に対して、暗号文レート R,鍵レートRk、安全性レベルh,正規の受信者に対する歪許容値Dの達成可能領域(Achievable region)を確定した.(b)通信路がガウス性ワイヤータップ通信路(Wiretap Channel)の場合に対して、暗号文レート R,鍵レートRk、安全性レベルh,正規の受信者に対する歪許容値Dの達成可能領域(Achievable region)を確定した.2.秘密情報が連続値を取り,暗号の安全性レベルを盗聴者が達成できる歪の最小値で評価する場合(a)通信路が離散的放送型通信路(Discrete Brroadcast Channel)の場合に対して、暗号文レート R,鍵レートRk、安全性レベルhD^^〜,正規の受信者に対する歪許容値Dの達成可能領域(Achievable region)の内界(inner bound)を導出した.(b)通信路がガウス性ワイヤータップ通信路(Wiretap Channel)の場合に対して、暗号文レート R,鍵レートRk、安全性レベルD^^〜,正規の受信者に対する歪許容値Dの達成可能領域(Achievable region)の内界(inner bound)を導出した.3.秘密情報が離散情報で,暗号の安全性レベルを盗聴者が達成できる歪の最小値で評価する場合(a)通信路が無雑音通信路(Noiseless Channel)の場合に対して,暗号文レートR,鍵レートRk、安全性レベルD^^〜,正規の受信者に対する歪許容値Dの達成可能領域(Achievable region)の内界(inner bound)と外界(Outer bound)を導出した.
著者
原田 邦彦 山本 博資
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.185, pp.31-36, 2006-07-21
被引用文献数
2

線形ネットワーク符号化において,有限体IF_q上のメッセージX^h=(X_1,X_2,...,X_h),(X_i ∈IF_q)が伝送されるとき,各辺にはh個のX_iの線形結合が伝送される.本稿では必ずしも安全とは限らない線形ネットワーク符号を用いて秘密情報S^r(r&le;h)を伝送するとき,これに乱数情報R^<h-r>を付加した入力メッセージX^h=(S^r,R^<h-r>)に線形変換を行うことで,任意のl本の辺の盗聴に対して,h-rをしきい値とする強いランプ型秘密保護特性を実現する手法を提案する.すなわち,l&le;h-rならば,S^rは完全に安全であり,h-r<l<hならば,の秘密情報S^rのうち,任意のh-l個のシンボルが完全に安全である.さらに,実現のために十分な有限体サイズqの評価を行う.
著者
杉原 厚吉 小柳 義夫 山本 博資 室田 一雄 今井 浩 杉原 正顯 村重 淳
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は,従来から開発されつつある分野ごとの個別のロバスト計算技術を横断的に整理し,分野の境界を超える共通で普遍的なロバスト計算のためのアルゴリズム設計パラダイムを構築することであった.この目的のために,本研究参加者がそれぞれの手法を持ち寄り,交流をくり返す中で,五つの設計原理を抽出することができた.その第一は,「計算対象の背後に存在する構造不変性の利用」で,位相構造の優先による幾何不整合の防止,物理法則を継承する数値解法,因果律に反しない計算順序の選択などの技術を含む.第二の原理は,「対象世界の拡大による計算の安定化」で,図形を超図形へ拡張することによるミンコフスキー演算の安定化,離散対象の連続緩和による整数計画法の高効率化,記号摂動による例外解消などの技術を含む.第三の原理は,「対象世界を制限することによる計算の安定化」で,連続関数の格子点への制限による計算の安定化,実数計算を整数計算へ制限することによる幾何計算の無誤差化,などの技術を含む.第四の原理は,「不確定性のモデル化による計算の安定化」で,物理パラメータを値から領域へ置き換えることによる制御安定化,値を区間に置き換えることによる特異積分方程式の解法などの技術を含む.第五の原理は,「仮定の排除による汎用性の確保」で,発生確率に関する仮定を排除することによるユニバーサル符号技術や異常検出技術などを含む.さらに,抽出した原理を指針に用いて,新しいロバスト計算技術も開発できた.その中には,第一の原理に基づいて,対象の背景構造をディジタル画像近似を介して統一的に抽出して利用する「ディジタル位相優先法」,第二の原理に基づいて,望みの例外のみを選択的に解消することによって摂動の副作用を防ぐことのできる「超摂動」などの技術がある.これらの活動を通してロバスト計算技術を新しく生み出すことのできるパラダイムが構築できた.