著者
岩崎 武輝 奥村 次郎 山本 嘉昭 松井 薫 水口 善夫 宇野 正敏
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.531-538, 2011 (Released:2012-03-27)
参考文献数
16

目的:今までの子宮頸部細胞診のいわゆる日母分類からベセスダ新分類の移行に伴い,成績判定及び事後指導に関する日本人間ドック学会のガイドラインを再考する必要が出てきた.武田病院グループ健診施設の婦人科部門の子宮頸がん検診において,ベセスダ新分類を導入した判定基準を作成し,それを基に今後事後指導を実施したいと考える.方法:武田病院グループ5健診施設のうち,同一検査所に依頼している4施設の,2010年2月初めから6月末までの子宮頸がん検診受診者4,948人について,受診者年齢・ベセスダ分類・日母Class分類を行った.新分類に基づいて,健診施設としての判定及び診断をつけ,それに対応した事後指導表を新たに作成した.結果:武田病院グループの4健診施設における最近5ヵ月間の子宮頸がん検診受診者数は4,948人であった.ベセスダシステム2001分類では,異常なしを示すNILMは4,853人であった.従来の日母Class分類では,異常なしを示すClass I,IIは4,914人であった.異常なしに関して,単純に計算すると新分類(ベセスダ分類)では従来分類(日母分類)に比べて61人の減少,総受診者数の1.23ポイント減となった.主な原因は,採取方法による細胞数の不足によるものと考えられた.新分類では,NILMは異常なしの結果報告でよく,それ以外の診断のついた受診者はすべて受診勧奨となり,要精密検査の紹介状を必要とする事後指導が必要であった.新分類の結果に対する受診者への平易な説明文が重要と思われた.結論:NILM以外に判定された区分は,すべてD判定となり,事後指導が必要である.今後,現在学会で分類されているA,B,C,D,Eと子宮頸部細胞診結果の対応を,新しくベセスダ分類に対応した判定区分の新ガイドラインを学会としても設定すべきと考えられた.
著者
山中 章義 鞠 錦 笠原 恭子 山本 嘉昭 吉田 彌太郎
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.112-120, 2011 (Released:2011-06-27)
参考文献数
50

骨髄異形成症候群 myelodysplastic syndorme (MDS)は,造血幹細胞の異常クローン増殖により汎血球減少と無効造血をきたし,進行性・治療抵抗性のため予後不良な疾患である.MDSは妊娠中に増悪することもあり,子宮内胎児発育遅延や胎児機能不全等の合併症の発生リスクが高くなるとされている.今回われわれはMDS合併妊娠で,分娩周辺期の血小板輸血により母児を安全に管理し得た.本邦での過去の症例51例と合わせて報告する.症例は29歳,初産婦.2年前よりMDSに対し血液内科にて経過観察中であった.白血球や赤血球の著明な減少は認めなかったが,血小板減少を認めていた.近医にて妊娠判明し,妊娠12週で当科紹介受診となった.徐々に血小板が減少したため,妊娠29週より入院管理とした.妊娠中出血傾向を認めなかったため,血小板輸血は行わなかった.妊娠37週1日に選択的帝王切開術施行したが,術直前および術直後に血小板輸血を行い,術中および術後に出血傾向はなかった.母児ともに経過観察中であるが,MDSの増悪や新生児への影響は現在のところ認められていない.これまでのMDS合併妊娠の報告では,治療抵抗性の貧血を認め,妊娠中に初めてMDSと診断された症例が53%(28/52)であった.合併症として妊娠高血圧症候群や胎児機能不全が多い傾向にあった.妊娠時や分娩時に出血傾向はそれほど認められなかったが,ほとんどの症例で血小板輸血を行った.十分な血液製剤が確保できるのであれば,産科的禁忌がない限り経腟分娩は可能と考えるが,高次医療施設での妊娠・分娩管理が必要と考える.妊娠中に治療抵抗性の貧血や血球減少を認めた場合は,血液内科医と連携し速やかに骨髄穿刺にて診断を行い,MDSと診断されれば慎重な妊娠・管理が必要である.〔産婦の進歩63(2):112-120,2011(平成23年5月)〕