著者
立山 暢人 鳥居 祥二 白井 達也 平良 俊雄
出版者
神奈川大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

宇宙線中の一次反陽子の存在量の測定は、宇宙線の銀河中伝播及び、原始反物貭の存在を知る上で極めて重要である。特に100〜300MeVのエネルギ-領域の反陽子は運動学的理由により二次粒子としては殆んど生成されない為に、その観測結果が宇宙論のモデル等に与える意義は大きい。この低エネルギ-領域では、4つのグル-プにより結果が報告されているが、さらに今後の研究が待されている。本研究は原子核乾板を用い、原子核乳剤の中で静止した反陽子を観測する。この方法は(1)荷電粒子の飛跡を0.1μm精度で精密に測定できる(2)粒子の放出角・運動量等の精密の精密測定ができる(3)長期保存が可能で再現性がある。等の特長がある。本研究では(A)顕微鏡画像を画像解析システムにとり込み、反陽子相互作用を自動的に検出するシステムを開発すること。(B)一次反陽子の観測をすること、を目的とした。結果(A)250倍視野の顕微鏡画像を焦点探度を変え、一視野にフレ-ムをとり込む。この画像について背影雑音をとり除き、2値化画像にする。この画像を、ミニコンで荷電粒子飛跡のみの画像に再現する。荷電粒子飛跡を解析し相互作用を検出するシステムを開発した。 この方法は、背影雑音の除去の段でさらに検討してゆく必要がある。(B)一次反陽子の観測は1.18cm^3について完了し、二次粒子分布及び反陽子静止パタンに似たインベントの分布を得た。シミュレ-ションとの比較から、原子核乾板のスキャンが完了した時点での反陽子/陽子比の予想値を得た。この値は現存信用でき得る他の結果と同程度のフラックス値であり、精度はまさるものと考えられる。