著者
石井 恵理子 安藤 康宏 山本 尚史 小藤田 敬介 浅野 泰 草野 英二
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.1417-1422, 2004-06-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
14
被引用文献数
6 3

血中ANPはDWの指標として用いられているが, DW設定のための体液量の定量的な基準値, 特にhypovolemiaに関しては明確ではない. 今回われわれは, HD患者のANPとDWの関係について検討し, DWの適否判断のためのANP基準値を設定した. 主に心胸比によってDWが設定されている維持HD患者58名のHD後でのANP値 (RIA固相法) を測定し (n=110), その時点のDWの適否を自他覚所見に基づいてDW過小群・適正群・過大群の3群に分類し, ANPとの関係を検討した. その結果, 3群間においてHD後ANP値は有意差を認めた (DW過小群: 35.5±6.0pg/mL, DW適正群: 57.4±4.4pg/mL, DW過大群: 137.8±22.8pg/mL). 適正DW群の透析後ANP値の10-90パーセンタイルは25-100pg/mLに分布しており, ANP値が25-100pg/mLの間にあれば, DWが適正である確率は69.4%であった. さらに適正群のANP中央値付近 (40-60pg/mL) であれば, DWが適正である確率は95.8%と極めて高くなった. また, ANP 25pg/mL以下, あるいは100pg/mL以上ではそのDWが適正である可能性は低く, 25pg/mL以下では57.1%の症例でDWは過小であり, 100pg/mL以上では70.8%の症例で過大であった. ANPをDWの指標とする場合, 40-60pg/mLを至適DW目標とし, 25pg/mL以下, 100pg/mLはそれぞれDW過小・過大の可能性を考えるべきと思われた.
著者
山本 尚史 美崎 定也 加藤 敦夫
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CbPI2279-CbPI2279, 2011

【目的】<BR> 当法人は2008年より高校アメリカンフットボール(アメフト)部のメディカルサポートを行っている。その中で、傷害受傷状況を把握すること、身体特性との関連を明らかにすることを目的に傷害調査アンケートとメディカルチェックを実施している。今回、過去2年の実施結果から得た身体特性と傷害の特異性について報告する。<BR>【方法】<BR> 2009年度秋季公式戦前のA高校2・3年生男子アメフト部員37名(2年生17名、3年生20名)と、2010年度の同2年生19名の計56名(平均年齢±標準偏差:16.7±0.7歳、身長171.9±6.1cm、体重78.6±15.6kg)を対象に調査した。A高校は週5~6回、学校近隣の河川敷グラウンドで練習を行っており、2008年に創部初の関東大会出場を果たしたチームである。アンケートは受傷部位、傷害名、受傷時期、受傷状況について自己記入させ、集計した。メディカルチェックは柔軟性「指床間距離(FFD)、踵殿間距離(HBD)、下肢伸展挙上(SLR)、股関節内旋(HIP IR)、全身関節弛緩性(GJL)」、瞬発力「プロアジリティテスト(PAT)、立ち幅跳び(SBJ)」を実施した。SLRとHIP IRは4段階「SLR:1)50°以下、2)50~70°、3)70~90°、4)90°以上、HIP IR:1)0°以下、2)0~20°、3)20~45°、4)45°以上」で簡易的に測定した。GJLは東大式評価法にて全7項目を点数化した。統計解析は傷害経験有無ならびに受傷部位(上肢、頸部・体幹、下肢)と柔軟性5項目で対応のないt検定またはMann-WhitneyのU検定を行った。また瞬発力2項目と柔軟性5項目における相関係数を算出した。なおHBD、SLR、HIP IRは左右肢を比較し、より可動域の小さい一肢を用いた。有意水準は危険率5%未満とした。<BR>【説明と同意】<BR> 事前に顧問・監督に本調査の趣旨を説明し同意を得た上で、実施当日、選手に同様に説明し同意を得た。怪我や体調不良などの訴えがあった選手は可能な測定項目のみ実施した。<BR>【結果】<BR> アンケートから得た回答より、傷害発生件数は70件であった。受傷部位別では上肢23件(手指12件:17.1%、肩関節8件:11.4%、肘関節3件:4.3%)、頸部・体幹15件(頸部10件:14.3%、腰部3件:4.3%、腹部2件:2.9%)、下肢29件(足関節21件:30.0%、膝関節6件:8.6%、大腿部2件:2.9%)、その他3件:4.3%となった。傷害名別では足関節靭帯損傷19件(27.1%)、バーナー症候群9件(12.9%)、手関節靭帯損傷7件(10.0%)に多かった。受傷時期は1年生時23件、2年生時32件、3年生時12件、不明3件であった。受傷状況は練習中38件、試合中29件、不明3件であった。学年別の傷害経験者は3年生19名(95.0%)、2年生23名(64.9%)であった。メディカルチェックより、傷害経験有無ならびに受傷部位と柔軟性に有意な差はみられなかった。しかし、柔軟性が全て低値(FFD-5cm以下、HBD10cm以上、SLR・HIP IR2)以下、GJL1点以下)の選手3名全員が2箇所以上の、うち2名が同部位で2回以上の傷害発生を認めた。相関分析の結果、PATとFFD(r=-0.35、p<0.01)、HBD(r=0.42、p<0.01)、SLR(r=-0.30、p<0.05)、HIP IR(r=-0.29、p<0.05)が相関を認めた。またSBJとHBD(r=-0.41、p<0.01)、SLR(r=0.30、p<0.05)、GJL(r=0.33、p<0.05)が相関を認めた。<BR>【考察】<BR> それぞれの項目の傷害発生率は先行研究と比較し大きな相違はなかったが、足関節、頸部における傷害発生率が高いこと、練習中の傷害発生が多いことが本研究の特徴として挙げられる。特に足関節靭帯損傷、バーナー症候群の発生率が高く、これらに対する傷害予防に取り組む必要性が考えられる。足関節靭帯損傷が多い原因として、練習・試合環境や選手の予防ならびに再発予防に対する認識不足が推察される。バーナー症候群が多い原因としては、コンタクト時の姿勢を含めた技術的な未熟さが考えられるが、頸部の筋力不足も考えられ、今後調査が必要である。受傷状況として練習中での傷害発生が多いことは、練習からのサポートの必要性が推察される。メディカルチェックでは傷害発生と柔軟性に関連はみられなかった。しかし少数ではあるが、柔軟性全項目が乏しい選手において傷害の箇所と回数が多い傾向があったことから、全身的な柔軟性と傷害発生との関連が推察される。また瞬発力2項目がともにHBDとSLRで相関が認められたことから、大腿四頭筋、ハムストリングスの柔軟性の向上から運動パフォーマンスとしての瞬発力の向上につながる可能性が考えられ、傷害発生との関連を含め、今後も調査を続けていく必要がある。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 関東の高校アメフトにおいて、練習を含めて通年的にメディカルサポートを行っているチームは多くないと思われる。我々が練習から参加し、定期的なメディカルチェックを実施すること、傷害受傷状況を把握し理学療法介入していくことが傷害予防に繋がると考える。
著者
山本 尚史 中村 学 中崎 秀徳 吉田 昂広 杉ノ原 春花 美崎 定也 加藤 敦夫
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.39, 2010

【目的】 当法人は2008年より高校アメリカンフットボール(アメフト)部のメディカルサポートを行っている。高校のアメフト選手は技術、知識、身体機能の未熟さから傷害発生の危険性は高い。今回、高校アメフト選手の身体特性と傷害発生との関連を明らかにすることを目的に、メディカルチェックとアンケートを実施した。【方法】 2009年度秋季公式戦前のA高校2・3年生アメフト部員(平均年齢±標準偏差:16.9±0.7歳、身長172.3±6.3cm、体重78.7±16.2kg)40名を対象に調査した。事前に顧問・監督・選手に本調査の趣旨を十分に説明し同意を得た。メディカルチェックは柔軟性「指床間距離(FFD)、踵殿間距離(HBD)、下肢伸展挙上(SLR)、股関節内旋(HIP IR)、全身関節弛緩性(GJL)」、瞬発力「プロアジリティテスト(PAT)、立ち幅跳び(SBJ)」を実施した。SLRとHIP IRは4段階で簡易的に測定した。アンケートは受傷部位(上肢、下肢、頸部・体幹)について自己記入させた。統計解析は柔軟性と瞬発力の計7項目を変数としてクラスター分析を行い、3群(A群、B群、C群)に分類した後、3群間において7項目で一元配置分散分析またはKruskal-Wallis検定(有意水準5%未満)を行った。さらに3群間の身体部位別受傷人数をまとめた。【結果】 分類された3群はA群11名、B群10名、C群18名となった。FFDはB群が有意に長く、HBDはC群が有意に長かった。SLRはB群がA群およびC群と比較して有意に大きく、HIP IRはC群がA群およびB群と比較して有意に小さかった。GJLは各群間に有意差を認めた。PATはB群がC群より有意に速く、SBJはC群が有意に短かった。身体部位別の受傷者数は上肢:A群5名、B群4名、C群6名、下肢:A群6名、B群3名、C群6名、頸部・体幹:A群1名、B群2名、C群5名であった。【考察】 FFD、SLRが乏しく瞬発力が良好な群(A群)、柔軟性、瞬発力ともに良好な群(B群)、柔軟性、瞬発力ともに乏しい群(C群)に分類された。A群はハムストリングス、背筋群の柔軟性の乏しさが傷害発生と関連していると考えられる。C群では頸部・体幹の傷害発生が多く、柔軟性と瞬発力との関連が強いことが予想される。B群では他群と比較し傷害発生は少ないが、コリジョンスポーツの特性を軽視できない結果となった。しかしA群、C群のような特徴的な身体特性が傷害発生と関連することが明らかとなり、今後の理学療法介入の手がかりになると考えられる。【まとめ】 身体特性をグループ化して理学療法介入を効率よく行うことは傷害予防に繋がると考える。今回の調査の限界は短期間であること、対象者数が少ないことが挙げられ、今後も引き続き調査が必要である。
著者
大西 広倫 美崎 定也 川崎 卓也 末永 達也 山本 尚史 木原 由希恵
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A1552, 2008 (Released:2008-05-13)

【目的】 人は加齢により著しく平衡機能の低下が見られる。また,外乱刺激に対する反応の低下により高齢者は転倒しやすい傾向にある。臨床で腹腔内圧(腹圧)を高める事で,しばしばバランスの向上が見られる事がある。腹圧の維持・向上は体幹・腰部の安定性のみならず,四肢の運動機能に重要である。今回,高齢者を対象に簡便な方法として,腹圧へのアプローチが身体制御,平衡機能においてどのように影響を及ぼすのか,検討する事を目的とした。【方法】 対象は本研究に同意した当院関連施設デイサービスを利用している高齢者26名(年齢69.7±6.8歳)とした。今回,介護度としては要支援1から要介護2の方々を対象に男性19名,女性7名で脳血管障害20名,下肢整形外科疾患2名,その他4名であった。除外基準としては立位が著しく不安定、また10m以上の歩行が困難な者とした。検討項目としてはFunctional reach test(FRT),Timed up and go test(TUG)を用い,同一対象者で腹部ベルト装着あり・なしの条件下で測定しその差を検討した。腹部ベルト装着あり・なしの条件下で,Functional reach test(FRT),Timed up and go test(TUG)を測定しその差を検討した。FRTは,Duncanらの方法をもとに施行した。またTUGは,Podsiadloらの方法をもとに施行した。ベルトの装着位置においては,関らの方法を一部改定し,Jacob線直上の水平面上で,立位にて測定し,腹囲より5cm短い長さでベルトを装着した。ベルトは市販の4cm幅の物で,1cm間隔で目盛りを付けた。なお,測定はそれぞれ一回づつ,ランダムにて行った。統計解析はWilcoxonの符号付き順位検定を用い,有意水準5%とした。【結果】 両検査の測定値をベルト装着あり・なしの二条件間で比較した結果,FRTにおいては,ベルト装着ありで中央値(四分位範囲)22.1(17.3~30),装着なしで21.5(14~24.8)でありベルト装着の方が有意に大きかった(P<0.05)。TUGにおいては,ベルト装着ありで14.6(12.2~21.4),装着なしで16.3(12.1~25.7)であり,ベルト装着ありの方が,装着なしに比べ,有意に短かった(P<0.05)。【考察とまとめ】 今回,高齢者の腹部にベルトを装着する事で静的・動的バランス機能の向上が認められた。ベルトを使用する事で腹圧を高める,腹圧の上昇が腰椎を安定化させる事,また下部体幹の固定性が増す事が言われている。今回,静的・動的バランス機能の向上においては,腹腔内圧の上昇により,四肢の運動機能が高まった事が考えられる。腹圧を高め,バランス機能の向上を図る事は,ベルトを使う事で簡便にできる有用な手段の一つである。