- 著者
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山本 航
- 出版者
- 日本財政学会
- 雑誌
- 財政研究 (ISSN:24363421)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, pp.145-163, 2018 (Released:2021-08-28)
- 参考文献数
- 38
近年,自治体間の財政競争・相互依存関係に関する研究がわが国においても注目を集めてきた。自治体間の財政競争・相互依存関係には,大別して,①便益のスピルオーバー,②資本や住民の移動,③情報のスピルオーバーによる模倣という理論的背景が考えられるが,これら理論間では政策的含意が必ずしも一致しないため,実証結果を解釈する際は理論的背景への意識が不可欠となる。この点に関し,Hayashi and Yamamoto(2017)は推定において類似団体区分制度を活用することで,自治体の1人当たり総歳出についてヤードスティック競争が適合するとの結論を得ている。しかし,1人当たり総歳出に関する「平均的」な記述としてヤードスティック競争を用いるのが適当であるという結論を得ることができたとしても,その結果が個別の歳出項目についても当てはまる保証はない。そこで本稿では同論文を拡張し,個別の歳出項目を分析対象とした場合にも同論文の結論が成立するのかを実証的に検証する。