著者
猪瀬 武則 山根 栄次 栗原 久 阿部 信太郎 山岡 道男 淺野 忠克 山田 秀和
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

価値多元社会における多面的多角的見方を育成する経済教育カリキュラムの開発研究である。研究を進める上で、「カリキュラム班」と「金融リテラシー班」の二つに分けた。カリキュラム班では、「価値多元社会における多面的多角的見方」の原理研究と海外のカリキュラム調査を試みた。金融リテラシー班は、中学生の金融リテラシー調査結果をもとに、経済的見方の有無にかかわらず一定の経済知識はあることが明確となった。カリキュラム班で明らかにした多面的多角的見方育成の原理と、リテラシー調査班で明らかにした中学生の現状の一端を説明する。前者に関しては、第一に、多面的多角的見方育成のための原理として、(1)一元的な経済学教授から多元的な経済学教授へ、(2)政策決定学習などでの経済論争を基礎とした既得観念との差異を対象化する学習、(3)経済学の合意・不合意を前提としたカリキュラム教材の構成を、(4)行動経済学などの成果を基にした感情などを踏まえた意思決定モデルの精緻化を提起した。また、カリキュラム教材としては、米国では、問題基盤経済学、経済学の倫理的基礎付け教授などのカリキュラム教材によって、英国からはビジネス教育のカリキュラム教材にそのモデルを見いだした。後者のリテラシー班では、稀少性などの経済基本概念がきわめて弱く、福利などの知識が弱かった。財の種類、収益が高い貯蓄商品、複利計算、株と債券の違い、投資家の収益(配当)、分散投資などは、米国に比しても高く、半数以上は把握していた。日米の差異は、文化的背景も考えられるが、カリキュラムや教材を含め、多面的内容構成に課題を投げかけている。
著者
山根 栄次 YAMANE Eiji
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.175-192, 2014-03-31

2013年8月10日の各紙朝刊は、国の借金が本年6月末時点で、初めて1,000兆円を超えたことを報じた。1,000兆円という金額は、日本の現在のGDP(約500兆円)の2倍であり、現在の国の税収(約40兆円)の25倍にもなる。この膨大な額の国の借金を日本の現役世代や生徒を含む将来世代は返還していかなければならない。このような現状を踏まえたとき、これからの学校における税教育(財政教育を含む)は、どのように行うべきであるのかを検討し、新たな税教育理論とそのカリキュラムを開発することが本研究の目的である。これまでの中学校社会科公民的分野における税教育は、基本的・理論的には均衡財政を前提としてなされてきた。しかし、1,000兆円もの国の累積債務が存在しているこれからの学校における税教育は、その返還が余儀なくされるため、歳入(税収)を増加させるとともに歳出を抑制する黒字財政を作り出すことを基本的・理論的に前提とせざるを得なくなる。これからの財政についての教育を受ける生徒は、自分たちの前の世代の日本人・日本政府が、なぜこれほどまでの累積債務を残すことになったのかという理由を是非とも知りたいであろう。また、この膨大な累積債務の返還を前にどのような財政と税制を作り上げたら良いか考えざるを得なくなるであろう。このような生徒の欲求を満たす財政の教育の理論とカリキュラムを開発する必要がある。本研究では、その試案を提案する。なお、本研究に対しては、日本学術振興会から科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究)が支給されている(課題番号23653291)。
著者
山根 栄次
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.274-283, 1983-09-30 (Released:2009-01-13)
参考文献数
27
被引用文献数
1
著者
山根 栄次 YAMANE Eiji
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.321-335, 2016-03-22

これまでの30年以上に亘る筆者の経済教育研究に基づき、小学校、中学校、高等学校における経済教育をどのように体系化したら良いかに関する筆者の論を展開する。この論稿では、学校における経済教育の内容の範囲、経済教育の目標としての経済的社会化の意義について論じるとともに、学校における経済教育によって子どもに身に付けさせるべき経済リテラシーのうち、消費者として持つべき経済リテラシーは何かを示す。