著者
遠藤 忠 飯田 貴広 古谷 暢英 山田 由美子 伊藤 眞人
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Chemical Software (ISSN:09180761)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.81-92, 1999-06-15 (Released:2000-03-28)
参考文献数
43
被引用文献数
2 5

半経験的分子軌道法を用いて、ベンゼン2量体およびベンゼン(PhH)—モノ置換ベンゼン(PhX)対の生成熱を計算することにより、ベンゼン—モノ置換ベンゼン間相互作用のエンタルピーを求めた。ベンゼン2量体の場合について、計算法、初期の分子間距離(rI)などを検討した。PM3法で求めた相互作用エンタルピーと最適化後の配置は、これまでの実験値および計算値と矛盾しない。PhH—PhX系の初期配置としては、1ケの平行(P)と4ケの垂直配置(Vr 、Vp 、VmおよびVb)(図1)を選んだ。VpあるいはVm配置の場合には(この配置では、PhXの置換基Xに対してパラあるいはメタ位にあるH原子がPhH分子の重心の真上に存在する)、計算から求めたPhH—PhX間相互作用エンタルピー(ΔΔHf)は、GLPCから求めた実験値(ΔΔHt)と良い相関関係を示し(図5)、相関係数(ρ)は0.94(rI = 2.75 Å)になった。この相関式から求めたΔΔHtと実験値ΔΔHtとの差は、約0.1 kcal mol-1以下であった。他の配置の場合には(Vp配置を除くと)、ΔΔHfとΔΔHtとの間に相関関係は認められなかった。
著者
永井 英明 池田 和子 織田 幸子 城崎 真弓 菅原 美花 山田 由美子 今井 敦子 遠藤 卓 大野 稔子 河部 康子 小西 加保留 山田 三枝子
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.628-631, 2008

Human Immunodeficieny Virus (HIV)感染者の中で, HIV感染症は安定しているが中枢神経系の後遺症のために長期療養が必要な患者の増加が予想されている. 彼らを受け入れる可能性のある施設として, 介護老人保健施設, 特別養護老人ホーム, 療養型病床保有施設, 障害者施設等入院基本料の施設基準取得病院の4施設に対してHIV感染者の受け入れについてのアンケート調査を行った. 11, 541施設中3, 723施設(32.3%)から回答が得られた. HIV感染者を受け入れる基準を決めている施設は1.6%にすぎず, 75.5%は受け入れを考えていなかった. 受け入れられない主な理由としては, 院内感染のリスク・不安, 診療経験がない, 職員不足, 設備・環境が整っていない, 医療費の問題などが挙げられた. HIV感染者の受け入れを可能にするためには, 職員に対する積極的な研修活動が最も重要と思われた. さらに診療報酬の面からの支援および医療面での拠点病院の支援が必要であることが明らかになった.
著者
山田 由美子
出版者
信州大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

【目的】精神科領域の薬物を使用している授乳婦において、母乳の継続を判断する上で薬物の母乳移行性が問題となる場合がある。しかし、リスペリドン、セルトラリン、エピリプラゾールなど新薬においては特に母乳移行性に関するデータが少ない。本研究は、リスペリドン服用患者の母乳移行性について検討した。【患者背景及び分析方法】患者背景:患者は妊娠期間中、リスペリドン4mg/日を朝・夕食後2回に分けて服用、コントロールは良好であった。内服を継続していたが、出産後3日目より精神的に不安定となり6mg/日を毎食後3回に分けて服用することに変更となった。患者希望によりピーク濃度の1点のみの採血のため、出産後4日目、服薬1時間後の母乳と血液を患者から採取した。なお、本研究は信州大学医学部医倫理委員会の承認事項を遵守して行った。分析方法:分析カラム;SHISEIDO CAPCELL PAK ACR 3x150 5μm、温度;40℃、流速;0.5ml/min、検出器:クローケムII検出器(ECD検出器)、ガードセル;850mV、E1;400mV、E2;800mV、移動層:0.05Mリン酸緩衝液(pH3.0):メタノール:アセトニトリル(70:15:15)にて行った。前処理:血清0.5mlに20%炭酸ナトリウム溶液1mlを加え、内部標準(100ng/mlミアンセリン)20μl、ジエチルエーテル:イソアミルアルコール(99:1)6mlで抽出後、有機層を0.005M硫酸溶液0.2mlで逆抽出し、HPLCのサンプルとし、75μlをinjectionした。母乳は1mlに20%炭酸ナトリウム溶液2mlを加えた。以降は血清と同じ操作にて調製したが、母乳は100μlをinjectionした。母乳中のリスペリドン測定用の検量線は、母乳の代わりに粉ミルクを用いた。測定検出限界は0.5ng/ml。【結果】患者の血清及び母乳中のリスペリドンの濃度は各々18.6及び1.8ng/mlであり、母乳中への薬物移行の指標となる母乳中濃度/母親血中濃度比(M/P比)は0.096であった。【考察】リスペリドンのHenderson-Hasselbalchの式によるM/P比は0.5又は1.87、pH分配仮説による分配係数は約0.95-2.74である。また、蛋白結合率は90%、半減期3.9hであり、これらのデータから薬学的評価を行うと、リスペリドンの母乳移行はかなり少ないと予想できる。文献では、投与量の1~5%の移行、AUCO-24のM/P比は0.42との報告がある。これらと今回の実測値は、リスペリドンの母乳移行性は少ないことと一致しており、本薬物は計算上の薬学的評価から母乳への移行性を推測可能であることが裏付けられた。