著者
岡崎 章子 當具 摩弓 冨田 圭子 松井 元子 大谷 貴美子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成21年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.1030, 2009 (Released:2009-08-28)

【目的】食べ物のおいしさは、食物本来の化学的・物理的性質のほかに、食べる側の食体験や社会的・文化的背景の影響を強く受ける。そのおいしさを評価するのに、前者は機器分析によるさまざまな客観的評価法が研究されているが、おいしさを表現することばについてはほとんど研究されていない。本研究の目的は、食べ物のおいしさの表現用語と文化的背景との関係を明らかにすることである。ここでは、まず日本で幅広い世代に知られる料理漫画「美味しんぼ」の中で使用される食べ物のおいしさの表現用語に着目し、分類した結果を報告する。【方法】料理漫画「美味しんぼ」(小学館)1~102巻(1983~2008年)を調査対象とし、その中で使用されている食べ物のおいしさを表現する用語を抜き出し、感覚別、調理法別、食品群別、料理国籍別等にカテゴリーに分類、分析した。【結果】食べ物のおいしさを表現する用語を抽出したところ、11,888語あった。感覚別で最も多かったのは味覚関連用語(4,135)で、それに次いで嗅覚(2,166)、触覚(1,967)、視覚(895)に関連する用語であった。また感覚(五感)には分類されないが、製造法や原産地など食の安心・安全性に関連した用語も抽出され、知識・経験に基づく用語もおいしさを表現する上で重要な役割を果たしていることが示唆された。料理国籍の違いによって表現用語に大きな差は認められなかったが、調理法の違いによる差が認められた。また、「美味しんぼ」では魚介類に関連する用語が多く、そのおいしさを表現するのに、生臭みなどの嗅覚関連用語や、鮮度、主食との相性などに関する用語が用いられた。今後は、例えば異なる文化的背景における魚介類のおいしさを表現する用語について、比較検討を行う予定である。
著者
早川 史子 岡崎 章子 韓 順子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.260-265, 2006 (Released:2007-01-30)
参考文献数
16

2003年10月~12月, モンゴルのウランバートル出身の女子大学生306名と地方出身の女子大学生283名を対象に飲み物調査を実施し, 次のことが明らかになった。  1. ウランバートル出身者と地方出身者の間で湯の飲用頻度がもっとも高いことは共通していた。しかし湯以外の飲み物の飲用状況は両者間で異なり, 前者では紅茶やコーヒーの飲用頻度が高く, 地方出身者ではスーティツァイ, ハルツァイの飲用頻度が高かった。  2. コーヒーは食事と食事の間に飲まれる頻度が高かったが, 紅茶は食事に付随した飲み物として定着していることが明らかになった。  3. ウランバートル出身者に比べると地方出身者ではスーティツァイに対する嗜好性が高く, 紅茶に対する嗜好性が低かったことによって, 飲み物の嗜好性に差が認められた(p<0.001)。  4. 来客時および団欒時の飲み物としてスーティツァイに対するイメージが両群とももっとも高かったが, 地方出身者の方がより高かったことと紅茶に対するイメージがウランバートル出身者の方がより高かったことによって, 両者間における来客時および団欒時の飲み物に対するイメージに有意差が認められた(p<0.001)。  5. 紅茶やコーヒーに対して嗜好性を示した者でも来客時や団欒時には伝統的飲料であるスーティツァイをイメージする者が多かった。