著者
岡田 守弘 大草 正信 高安 睦美
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育紀要 (ISSN:05135656)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.37-63, 1997-11-28
被引用文献数
1

近年の中学生・高校生の1対1の男女交際・性意識・性行動の実態とその背後にある要因との関連を明らかにすることを本研究の目的として,横浜市内公立中学校22校,横浜地域の高等学校11校に在籍する中学生・高校生を対象に質問紙調査を実施した。実施時期は1995年11月,回収数は8420部,特定の学校による分布の偏りを避けるために5038人を抽出して分析した。結果は,次の通りである。(1)1対1男女交際の経験率は学年を追って高くなり,高校3年女子では30%を超える。キス経験率は中学3年女子で2割を超え,性交経験率は高校2年女子で2割を超え,女子の性に関する経験率が男子を上回っている。(2)性的衝動には「心理愛情的」と「心理生理的」の次元があり,若者文化許容には「制止」と「風潮」の次元があり,性的衝動の高さと若者文化許容度の高さが男女交際・性行動を積極的にする。(3)中学生・高校生は同世代の愛し合っている者同士のキスや性交に対する容認率は高く,1対1の男女交際や性経験が中学生・高校生にとって「あたりまえ化」し,「日常化」しているが,一部の突出した部分に幻惑されずに彼らのけじめ感覚を理解することが大切である。
著者
岡田 守弘 井上 純
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育紀要 (ISSN:05135656)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.45-66, 1991-10-31

本研究では,キャンバス上に「何が描かれているのかわからない絵画」,すなわち抽象的表現による絵画を見るとき,鑑賞者は具象画を見る際と同様の基準でその絵画を鑑賞し評価するのか否かを,2つの実験を通して検討した。研究1では,絵画鑑賞に伴う感情の因子を抽出し,具象画と抽象画の与える印象の違いについて検討した。実験は,10枚の絵画(具象画5枚,抽象画5枚)を7件法のSD法尺度で評定するものであった。その結果,絵画鑑賞に関わる因子として,先行研究に準ずる4因子が抽出された。具象画と抽象画の印象の違いは,個性とバランスの因子において顕著であり,「具体的なフォルムの崩壊」が鑑賞者に直接的に影響を与えているものと考えられる。研究2では,主に,芸術性評価要素の構成が検討された。実験は,研究1にほぼ準ずる形で行われた。その結果,具象画では芸術性評価がやわらかさや,好みなど美的評価に基づいてなされ,抽象画ではおもしろさや個性に基づいてなされていることが見いだされた。本研究の結果から,ひとくちに絵画と言っても,具象画と抽象画とでは鑑賞者の側でもその鑑賞基準と評価基準が異なるものと思われ,その原因は「具体的なフォルムの崩壊」に求めることができると考えられた。
著者
岡田 守弘 井上 純
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育紀要 (ISSN:05135656)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.45-66, 1991-10-31
被引用文献数
1

本研究では,キャンバス上に「何が描かれているのかわからない絵画」,すなわち抽象的表現による絵画を見るとき,鑑賞者は具象画を見る際と同様の基準でその絵画を鑑賞し評価するのか否かを,2つの実験を通して検討した。研究1では,絵画鑑賞に伴う感情の因子を抽出し,具象画と抽象画の与える印象の違いについて検討した。実験は,10枚の絵画(具象画5枚,抽象画5枚)を7件法のSD法尺度で評定するものであった。その結果,絵画鑑賞に関わる因子として,先行研究に準ずる4因子が抽出された。具象画と抽象画の印象の違いは,個性とバランスの因子において顕著であり,「具体的なフォルムの崩壊」が鑑賞者に直接的に影響を与えているものと考えられる。研究2では,主に,芸術性評価要素の構成が検討された。実験は,研究1にほぼ準ずる形で行われた。その結果,具象画では芸術性評価がやわらかさや,好みなど美的評価に基づいてなされ,抽象画ではおもしろさや個性に基づいてなされていることが見いだされた。本研究の結果から,ひとくちに絵画と言っても,具象画と抽象画とでは鑑賞者の側でもその鑑賞基準と評価基準が異なるものと思われ,その原因は「具体的なフォルムの崩壊」に求めることができると考えられた。
著者
石垣 琢麿 丹野 義彦 井上 果子 岡田 守弘
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、わが国ではこれまでほとんど調査されていなかった中高大学生の妄想的観念を比較検討し、青年期のメンタルヘルス向上の一助とすることを目的にしている。まず、Petersらが開発したPeters, et. al. Delusion Inventory(PDI)の日本語版(山崎ら,2004)を、中学校教師の協力を得て日本の中学生に適用できるよう改変し、中学生用PDIを作成した。この尺度を用いた調査結果から、中学生にも妄想的観念と考えられる思考は存在し、とくに中学2年生からそれが増加する傾向がみられた。高校生と大学生には成人版PDIを用いた調査を実施したが、PDI得点分布には大きな違いはみられなかった。なお、中学生と高校生では、女子生徒のほうがPDI得点は高かった。原質問紙では、妄想的観念の有無だけでなく、その思考の苦痛度・心的占有度・確信度の各側面を調査することが可能である。妄想的観念に関する苦痛度・心的占有度は大学生のほうが高いが、体験頻度は中学生のほうが高いことが示唆された。加えて、中学生・大学生ともに、妄想的観念と対人不信感および敵意が強く関連することがわかった。これは、成人で確認された結果とほぼ同じであり、青年期前期から成人と同質の妄想的観念が出現しうることが示唆された。また、妄想的観念をもつ成人には、「性急な結論バイアス(Jump to Conclusion:JTC)」とよばれる認知的特徴があることが知られている。本研究では、ベイズ理論に基づいた心理学実験を、大学生を対象にして実施した。その結果、妄想的観念を多く体験する大学生が確率的判断を行う場合には、JTCに関連する「情報収集量が少ない」というバイアスが存在することが示唆された。
著者
岡田 守弘 大草 正信 高安 睦美
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育紀要 (ISSN:05135656)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.37-63, 1997-11-28 (Released:2016-09-15)

近年の中学生・高校生の1対1の男女交際・性意識・性行動の実態とその背後にある要因との関連を明らかにすることを本研究の目的として,横浜市内公立中学校22校,横浜地域の高等学校11校に在籍する中学生・高校生を対象に質問紙調査を実施した。実施時期は1995年11月,回収数は8420部,特定の学校による分布の偏りを避けるために5038人を抽出して分析した。結果は,次の通りである。(1)1対1男女交際の経験率は学年を追って高くなり,高校3年女子では30%を超える。キス経験率は中学3年女子で2割を超え,性交経験率は高校2年女子で2割を超え,女子の性に関する経験率が男子を上回っている。(2)性的衝動には「心理愛情的」と「心理生理的」の次元があり,若者文化許容には「制止」と「風潮」の次元があり,性的衝動の高さと若者文化許容度の高さが男女交際・性行動を積極的にする。(3)中学生・高校生は同世代の愛し合っている者同士のキスや性交に対する容認率は高く,1対1の男女交際や性経験が中学生・高校生にとって「あたりまえ化」し,「日常化」しているが,一部の突出した部分に幻惑されずに彼らのけじめ感覚を理解することが大切である。 This study was aimed at investigation about datings and sexual behaviors of recent junior high school and high school students, and exploration into the relation between their behaviors and the factors hidden behind. The survey was conducted through questionaires in 22 public junior high schools in Yokohama City, and 11 high schools around Yokohama City. 8420 students answered the questionaires in November 1995. 5038 questionares were sampled for analysis. Results are as follows; 1) Dating rate increases as the grade goes up. Dating rate of the third year female students is over 30%. The number of students who have experienced kissing is over 20% in the third year female students of junior high schools. The number of female students who have experienced sexual intercourse surpassed 20% in the second grade in high school. In every grade female students 'sex experiencing rate is higher than boys'. 2) Two dimentions were found in sexual urge. They are 'psycho-affectional' and 'psycho-psysiological' dementions. And permissiveness toward youth culture included dimentions of 'inhibition' and 'fashion'. The ones who showed high sexual urge and high permissiveness are comparatively active in datings and sexual behaviors. 3) Junior high school and high school students tend to think it's natural to kiss or have sex, if they love each other. Dating and having sex have become a part of every day life and nothing special for junior high and high school students. And it's important to understand that most of them have their own standards of behaviors. The number of students who show excessive behaviors are quite limited.