著者
石原 孝二 信原 幸弘 河野 哲也 鈴木 晃仁 北中 淳子 熊谷 晋一郎 糸川 昌成 石垣 琢麿 笠井 清登 向谷地 生良
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は4 つの研究領域①生物学的精神医学および認知行動療法の展開による疾患観の変化、②精神疾患症状の現象論的・行為論的・認知哲学的把握、③診断の歴史と科学論、④当事者、家族、支援者の視点:地域社会論と障害学からの検討を設定し、各領域の研究を通じて精神疾患概念の再検討と「精神医学の科学哲学」の展開をはかった。研究の成果は15本の論文と59回の学会等の発表・講演、国際会議Tokyo Conference on Philosophy of Psychiatryの実施などを通じて発表されている。また、本研究の集大成として、全3巻のシリーズ書籍「精神医学の哲学」(仮題)を刊行する予定である。
著者
篠原 千春 西口 雄基 石垣 琢麿
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.65-68, 2022-07-06 (Released:2022-07-06)
参考文献数
10
被引用文献数
1

During the novel coronavirus pandemic, people who defied the call for isolation and the government’s requirement for self-quarantine have encountered frequent condemnation. There was a prevailing acceptance of such bashing behavior. Given this context, this study focused on justice sensitivity as a key factor in the acceptance of bashing. Participants (N=1,000) read a short scenario that involved a person who goes out despite the self-quarantine requirement. The results showed a moderated mediation in which individuals with higher justice sensitivity showed a greater degree of anger, which in turn led to higher bashing acceptance when the scenario was judged as an injustice.
著者
森本 幸子 丹野 義彦 坂本 真士 石垣 琢麿
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.2-11, 2002-09-30 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
3

本研究の目的は,大学生の被害妄想的観念を素因ストレスモデルを用いて検討することである。大学生117名を対象として,2週間おきに縦断調査をおこなった.第1回調査では,被害観念の17の素因候補変数を測定した.第2回調査では被害妄想的観念を測定した.第3回調査では,第2回と第3回調査の間に体験した被害妄想的観念とストレッサーを測定した.分析には,第2回調査時から第3回調査時までの間の被害妄想的観念の変化を予測することが可能となる,セットワイズ階層的重回帰分析を用いた。その結果,ストレッサーと2つの素因候補(恨み,ネガティブヒアリングボイス)の間に有意な交互作用が得られた.この結果より,これらの2つの素因候補得点が高い学生は,ストレッサーを体験したときに,被害妄想的観念を持ちやすくなることが示唆された.
著者
石垣 琢麿
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.939-947, 2012-09-15

はじめに 認知行動的アプローチの発展により,特に英国において1980年代以降,統合失調症の症状に関する認知心理学的メカニズムの実証的解明と介入・援助法の開発が盛んになった1)。たとえば,妄想を抱きやすい患者に特有の認知バイアスは,自己奉仕バイアス(原因帰属のありかた),「結論への飛躍」バイアス,「心の理論」の欠如,否定的な自己イメージ,などだと考えられている2)。 ハンブルク大学のMoritz教授らは,こうした現状をふまえて,妄想の認知バイアスに対する新たな心理教育・介入法を開発し,メタ認知トレーニング(Metacognitive Training:MCT)と名付けた2)。筆者は原著者の許可を得てMCT日本語版を作成した(http://www.uke.de/mktから無料ダウンロード可能だが,最新の日本語版と日本語版マニュアルについては筆者までご連絡いただきたい)。本稿ではマニュアルに沿ってMCTを紹介する。
著者
石垣 琢麿 丹野 義彦 井上 果子 岡田 守弘
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、わが国ではこれまでほとんど調査されていなかった中高大学生の妄想的観念を比較検討し、青年期のメンタルヘルス向上の一助とすることを目的にしている。まず、Petersらが開発したPeters, et. al. Delusion Inventory(PDI)の日本語版(山崎ら,2004)を、中学校教師の協力を得て日本の中学生に適用できるよう改変し、中学生用PDIを作成した。この尺度を用いた調査結果から、中学生にも妄想的観念と考えられる思考は存在し、とくに中学2年生からそれが増加する傾向がみられた。高校生と大学生には成人版PDIを用いた調査を実施したが、PDI得点分布には大きな違いはみられなかった。なお、中学生と高校生では、女子生徒のほうがPDI得点は高かった。原質問紙では、妄想的観念の有無だけでなく、その思考の苦痛度・心的占有度・確信度の各側面を調査することが可能である。妄想的観念に関する苦痛度・心的占有度は大学生のほうが高いが、体験頻度は中学生のほうが高いことが示唆された。加えて、中学生・大学生ともに、妄想的観念と対人不信感および敵意が強く関連することがわかった。これは、成人で確認された結果とほぼ同じであり、青年期前期から成人と同質の妄想的観念が出現しうることが示唆された。また、妄想的観念をもつ成人には、「性急な結論バイアス(Jump to Conclusion:JTC)」とよばれる認知的特徴があることが知られている。本研究では、ベイズ理論に基づいた心理学実験を、大学生を対象にして実施した。その結果、妄想的観念を多く体験する大学生が確率的判断を行う場合には、JTCに関連する「情報収集量が少ない」というバイアスが存在することが示唆された。
著者
石垣 琢麿 丹野 義彦 松島 公望 井村 修
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

妄想や幻覚を改善するためにハンブルク大学のMoritzらが開発したメタ認知トレーニング集団療法用(MCT)と個人療法用(MCT+)の日本語版を作成した。MCTに関する知識の普及と実践活動の相互扶助のためにMCT-Jネットワーク(Mネット)を設立した。Mネットの会員により臨床研究が行われ、統合失調症患者への有用性は確認された。