著者
成田 心 岩橋 和彦 永堀 健太 沼尻 真貴 吉原 英児 大谷 伸代 石郷岡 純
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.229-235, 2014-03-15

抄録 抗うつ薬の一種であるセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)は,そのターゲット部位の1つであるノルアドレナリントランスポーター(NET)に作用し精神症状を安定させる効果がある。このことから,NETがパーソナリティに影響する可能性が考えられる。インフォームド・コンセントの得られた健常者201人のDNAを対象にNET遺伝子の2多型を判定し,対象者にNEO-FFIを実施して,NET遺伝子多型がパーソナリティに関与しているか検討した。-182T/C多型において,全体で開放性(O),男性で外向性(E)に有意差が認められた。さらに,1287G/A多型において,男性で神経症傾向(N)に有意差が認められた。よって,NET遺伝子多型がパーソナリティに関与している可能性が示唆された。
著者
岩橋 和彦 洲脇 寛 大西 純一 細川 清
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.271-274, 1993-10-30 (Released:2011-01-25)
参考文献数
7

骨萎縮性病変発生機序解明の一助としてカルシウム代謝に重要な役割を果たすビタミンD3活性化酵素シトクロムP-450D25の酵素活性における抗てんかん薬の影響について調べた。in vitroの実験においてフェニトインはラット肝臓のミクロソーム系およびミトコンドリア系のP-450D25の酵素活性を阻害することが判明し, しかもミクロソーム系のP-450D25については競合阻害であった。一方バルプロ酸はどちらの系においても阻害作用はほとんど見られなかった。また両薬物をWistarラットに2ヵ月間大量に皮下注射したところ, フェニトインによるミクロソーム系P-450D25の著明な誘導がみられた。以上よりフェニトインはシトクロムP-450D25を介してビタミンD3, さらにはカルシウム代謝に影響を与える可能性があることが判明した。
著者
岩橋 和彦 吉原 英児 青木 淳
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.115-119, 2009-03-31

我々はセロトニントランスポーター (5-HTT) 3'非翻訳領域 (3'UTR) 遺伝子多型の影響, 疼痛感受性個人差の原因, 性格の遺伝要因を解明する一助として5-HTT 3'UTR遺伝子多型と痛覚閾値およびパーソナリティとの3つの要因の関連性について調査検討を行った。 181人の健常者を対象に, 5-HTT 3'UTR遺伝子多型の判定には制限酵素切断長多型解析法を用い, 痛覚閾値に関しては冷水刺激試験および圧刺激試験を, パーソナリティの測定にはTCI (Temperament and Character Inventory) を行った。 遺伝子多型と痛覚閾値には関連がなかった。遺伝子多型とTCIの相関について, 男性ではST3{超個人的同一化 (vs. 自己弁別)}が遺伝子型G/G群で有意に高く, 女性ではST (自己超越性総合点) およびST2{自己忘却 (vs. 自己意識経験)}が遺伝子型G/T + T/T群で有意に高かった。痛覚閾値とTCIとの関係について, 男性群で冷水刺激閾値とNS4{無秩序 (vs. 組織化)}およびNS (新奇性追求) で負の相関, 女性群で冷水刺激閾値とSD4 (自己受容), C5{純粋な良心 (vs. 利己主義)}および圧刺激閾値とSD4 (自己受容) で正の相関が認められた。本研究から5-HTT 3'UTR遺伝子多型はCloningerの理論における性格次元に影響を与える可能性がある一方で, 痛覚は5-HTT 3'UTR遺伝子多型と関与せず, 一方でパーソナリティの一部と相関関係にある可能性が示唆された。To estimate the genetic factors influencing individual differences in sensitivity to pain, we have examined the associations among serotonin reuptake transporter (5-HTT) 3' UTR gene polymorphism, sensitivity to pain and personality. After the procedures were fully explained and written informed consent was obtained, 5-HTT 3' UTR gene polymorphism was investigated by PCR-RFLP, and personality assessment was performed by means of Temperament and Character Inventory (TCI), and pain threshold by means of cold water and pressure stimulation tests in 181 healthy Japanese volunteers. Males with the T allele (T/T and T/G) showed a significantly lower Self-Transcendence (ST) 3 subdimension score than those without the T allele (G/G). Females with the T allele (T/T and T/G) showed significantly higher ST2 subdimension and ST dimension scores than those without the T allele (G/G). There was no significant relationship between 5-HTT 3' UTR gene polymorphism and pain sensitivity. As for pain sensitivity and TCI, there was low negative correlation between cold water stimulation in males and Novelty Seeking (NS) 4 subdimension and NS, and low positive correlation between cold water stimulation in females and Self-Directedness (SD) 4 subdimension and Cooperativeness (C) 5 subdimension, and between pressure stimulation in females and SD4. It is possible that 5-HTT 3' UTR gene polymorphism may affect the character dimension in the theory of Cloninger, however, 5-HTT 3' UTR gene polymorphism may not be related to the sense of pain, and that there is low correlation between pain and a part of the personality.
著者
竹内 義喜 中村 和彦 岩橋 和彦 三木 崇範 伊藤 正裕
出版者
香川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

発達障害誘導因子として放射線とアルコールを取り上げ、脳組織のうちとくに海馬領域のニューロンネットワーク形成を対象として研究を行った。妊娠動物(ラット)に放射線を照射し、生後6週で脳組織を検索したところ、海馬に対する影響は0.6Gy以上から現われ、錐体細胞の脱落および層構造の乱れがCA1領域よりCA3領域でより顕著であった。また、CA3領域では異所性mossy fiberの終末がstratum orienceに存在するのが特徴的であった。一方、生後ラットへのアルコール投与実験では、まず小脳のプルキンエ細胞を研究対象とした。プルキンエ細胞は生後4-9日でアルコール高感受性であり、樹状突起の発育不全を示した。しかしながら、生後10日以降の脳組織においてはプルキンエ細胞をはじめとする他の神経細胞には何ら変化が認められないという実験結果を得た。次に、このような生後早期における神経細胞のアルコール感受性に関し海馬で行なわれた研究では、歯状回門領域の顆粒細胞や錐体細胞にも小脳組織と同様神経細胞の発育不全が認められ、海馬領域においても高感受性であることが明らかになった。さらに、マウスに対する短期アルコール投与実験をおこなったところ、海馬領域においてcalbindin D28k免疫反応陽性細胞の数が減少した。しかしながら逆にGFAP反応陽性細胞の数の増加が認められ、神経細胞とグリア細胞の変化が形態学的に非常に対照的なものとなった。このようなニューロンとアストログリア細胞の脳組織における変化は、海馬に起因する神経症状発現メカニズムにこれら細胞相互の働きが深く関与することを示唆するものであると考察される。
著者
生田 和良 小野 悦郎 岩橋 和彦 LUFTIG Ronal RICHIT Juerg 鐘 照華 ARUNAGIRI Ch
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1)HIV-1はウイルス遺伝子変異が容易である。実際、HIV-1は幾つかのサブタイプに分かれる。しかし、これまでの大部分のHIV-1に関する知見は欧米や日本に蔓延しているB型ウイルスを用いて行われた結果である。HIV-1感染により引き起こされるAIDS病態を理解するためには、サブタイプ間に共通する現象とそれぞれのサブタイプにのみ認められる現象を正確に把握する必要がある。タイにおけるHIV-1E型感染者から得られた末梢血単核球(PBMC)と健常者由来PBMCとの共培養により2株のウイルス(95TNIH022および95TNIH047)を分離した。これらのウイルスを感染させたPBMCから抽出したプロウイルスDNAを用いて、HIV-1全長にわたりPCR増幅を大きく3領域に分けて行った。これらのPCR産物を用いて全長のHIV-1E型の遺伝子配列を決定した。さらにこれらのPCR産物を用いて、HIV-1E型ウイルスの感染性DNAクローンを作製した。また、このウイルスのnef遺伝子を大腸菌で発現し、Nef蛋白に対する免疫応答能を検討した結果、B型感染者の約40%で検出されたが、その大部分がB型HIV-1に特異的な抗体であった。一方、E型感染者での大部分では抗Nef抗体が極めて低かった。2)コスタリカにおいて、ウマおよびうつ病患者においてボルナ病ウイルス(BDV)感染例が認められた。また、中国の精神分裂病患者末梢単核球内のBDV遺伝子検出を試み、約40%に認めた。これらの多くに抗BDV抗体も検出した。3)米国の神経疾患患者の剖検脳サンプルを入手し、現在BDVおよびHIV-1遺伝子の検出を行っている。