著者
石井 良平 池田 俊一郎 青木 保典 畑 真弘 補永 栄子 岩瀬 真生 武田 雅俊
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.241-245, 2013 (Released:2017-02-16)
参考文献数
22

自閉症スペクトラム障害(autistic spectrum disorder ; ASD)患者の運動実行時・運動観察時のβ帯域(15-30Hz)の運動後β帯域リバウンド(Post-movement beta rebound : PMBR)を求め,健常被験者のそれと比較検討することで,ASD患者におけるミラーニューロンに関連した生理学的変化を解明し,ASD患者のMNSに関連する障害について検討した。ASD患者7名と健常被験者10 名を対象とし,右手指の運動観察時と安静時,運動実行時と安静時の脳磁図を測定し,それぞれの課題と安静時の間でのβ帯域(15-30Hz)活動の電流源密度分布をBESAで解析後,BrainVoyager QX にて各群におけるPMBRの平均分布と群間比較(両側T検定,p < 0.05)を行った結果,両群において運動実行時,運動観察時ともに,後頭部(視覚野)やローランド領域にてPMBRの最大値が見られた。運動実行時には両群間で差は認めなかったが,運動観察時には両群間で対側感覚運動野,同側運動前野,中側頭葉,前帯状回(ACC)で PMBRに有意差を認めた。ASD患者群における運動観察時での PMBRの有意な減少は,ASDでは運動観察時に健常被験者とミラーニューロンを中心とした脳活動が異なることが示唆された。
著者
鵜飼 聡 石井 良平 岩瀬 真生 武田 雅俊 篠崎 和弘
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

統合失調症の治療には通常薬物療法が選択されるが、今後期待されるその他の治療法のひとつに反復的経頭蓋磁気刺激療法がある。この治療法は幻聴や陰性症状の改善に有効である可能性が指摘されているが、その作用機作は不明であり、個々の症例での有効性の予測の指標も確立されていない。本研究では脳磁図を用いた時間分解能の高い脳機能画像を得る手法を確立するとともに、それを用いて本治療法の作用機作や有効性予測の指標を確立することを最終目標として基礎的な研究をおこない、いくつかの重要な成果を得た。
著者
岩瀬 真生 高橋 秀俊 中鉢 貴行 梶本 修身 志水 彰 武田 雅俊
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.1291-1296, 2003-12-15

はじめに Trail Making Test(TMT)とは,1枚の紙に書かれた1から25までの数字などの指標を順に鉛筆でなぞるという簡易な認知機能検査である4)。TMTは1950年代に開発され神経内科領域で主に前頭葉機能を評価するために使用されてきた。 TMTは従来脳障害の判定に有用であるといわれており,左半球障害者や前頭葉障害者などではカテゴリーチェンジのないTMT-Aに比してカテゴリーチェンジのあるTMT-Bの成績が極端に悪くなると考えられている。TMT-A,B課題双方ともに成績が低下する場合には,情報処理あるいは注意力の全般的機能障害が示唆される。統合失調症患者においてもA,B課題双方ともに成績が低下し,A課題の障害に比してB課題の障害が高度であるという報告が多い。 梶本らはタッチパネルディスプレイを用いてTMTをコンピュータ化したAdvanced Trail Making Test(ATMT)を開発した2)。ATMTは原版のTMTを改変して,visuospatial working memory(VWM)の定量評価を可能にした。ATMTは原版のTMTと比べいくつかの利点がある。(1)タッチパネル上に表示された数字ボタンに直接指で触れて課題を遂行するようにし,1回のボタン押しごとの反応時間測定を可能にした。(2)数字ボタンを25までに限定せず長時間の連続測定を可能にした。(3)数字ボタンの位置が固定され,VWMにより成績向上が可能な課題(ATMT-B課題)と数字ボタンの位置が1回のボタン押しごとに変化し,課題の遂行が視覚的探索のみによる課題(ATMT-C課題)とを作成し,両者の比較によりVWMの定量評価を可能にした。ATMTは短時間で大量かつ定量性の高いデータを得られる上に,課題の教示がほとんど不要なため容易に検査を施行でき,小児から高齢者までさまざまな精神疾患へ応用可能と考えられる。 本論文では,ATMTによるVWMの評価方法を概説する。さらに,健常者と統合失調症患者の少数例でVWMの評価を予備的に開始しており,その結果について述べる。
著者
岩瀬 真生 石井 良平 高橋 秀俊 武田 雅俊 橋本 亮太 橋本 亮太
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

統合失調症を初めとする精神疾患に対して経頭蓋磁気刺激治療を行い、近赤外分光法を用いて治療中の血流同時測定を行ったところ、治療中に血流変化がみられることが観察されたが、何人かの被験者では磁気刺激による刺激のアーチファクトが測定に混入することが判明した。近赤外分光法により課題施行中の血流変化により、健常者と疾患群の判別解析が可能なことが明らかになり、磁気刺激治療への反応性予測に応用できる可能性がある。