著者
苅田 香苗 坂本 峰至 吉田 稔 龍田 希 仲井 邦彦 岩井 美幸 岩田 豊人 前田 恵理 柳沼 梢 佐藤 洋 村田 勝敬
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.236-251, 2016 (Released:2016-09-30)
参考文献数
136
被引用文献数
14

More than sixty years has passed since the outbreak of Minamata disease, and high-level methylmercury contaminations now seem nonexistent in Japan. However, mercury has been continuously discharged from natural sources and industrial activities, and the health effects on children susceptible to methylmercury exposure at low levels, in addition to mercury contamination from mercury or gold mining areas in developing countries, become a worldwide concern. In this article, we provide a recent overview of epidemiological studies regarding methylmercury and mercury. The following findings were obtained. (1) Many papers on exposure assessment of methylmercury/mercury have been published since the Minamata Convention on Mercury was adopted in 2013. (2) The most crucial problem is child developmental neurotoxicity resulting from prenatal exposure to methylmercury, but its precise assessment seems to be difficult because most of such effects are neither severe nor specific. (3) Several problems raised in birth cohort studies (e.g., whether IQ deficits due to prenatal methylmercury exposure remain when the children become adults, or whether the postnatal exposure at low levels also causes such adverse effects in children) remain unsolved. (4) Concurrent exposure models of methylmercury, lead, polychlorinated biphenyls, aresenic, and organochlorine pesticides, as well as possible antagonists such as polyunsaturated fatty acids and selenium, should be considered in the study design because the exposure levels of methylmercury are extremely low in developed countries. (5) Further animal experiments and molecular biological studies, in addition to human studies, are required to clarify the mechanism of methylmercury toxicity.
著者
上山 純 野村 洸司 斎藤 勲 近藤 高明 杉浦 友香 村田 勝敬 岩田 豊人 涌澤 伸哉 上島 通浩
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第40回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.1002019, 2013 (Released:2013-08-14)

現在,殺虫剤の化学物質曝露が及ぼす健康への影響について国内外で関心を集めており,尿中バイオマーカーを用いた曝露レベル等を評価する試みがアメリカやドイツ等で多く実施されている。合成ピレスロイド系殺虫剤(PYR)は農業用あるいは家庭用殺虫剤として日本人にも馴染のある化学物質であるが,PYR曝露マーカーである尿中クリサンテマムジカルボン酸(CDCA)および3フェノキシ安息香酸(3PBA)排泄量に関する日本人のデータは少ない。本研究では日本人成人の尿中に排泄されるCDCAおよび3PBA量をモニタリングし,それらの季節変動,職域間差および曝露源について検討した。調査対象は食品配送小売業者(FD, n=92),リンゴ農家(AF, n=144)および殺虫剤撒布職域従事者(PCO, n=24)とし,それぞれ夏季および冬季に採尿とアンケート調査を行った。ガスクロマトグラフ質量分析計で定量された尿中3PBAとCDCAは非正規分布を示していたため,対数変換値(正規化)を用いて季節変動はpaired t-検定,職域間差は一元配置分散分析,その後の検定にはScheffeの方法を用いて有意差を検出した。全対象者における尿中3PBAとCDCAの検出率は92%以上であり,ほとんどの日本人が日常的にPYRに曝露していることが明らかとなった。夏と冬における3PBA濃度の幾何平均値(GM)はそれぞれ0.7および 0.5 (FD),0.9および0.4 (AF),2.6および1.8 (PCO) (μg/g creatinine)であった。また,CDCAのGMは0.33および0.13 (FD), 0.30および0.21 (AF), and 0.56および0.26 (PCO)であり,PCOの3PBAを除き,代謝物量は冬に比べて夏で有意に高い値を示した(p<0.05)。すなわち,冬に比べて夏におけるPYRの曝露レベルが高いことが示唆された。PCOの3PBA量は他群のそれに比べて高い値を示した。一方,CDCAにはその傾向が見られなかったことから,CDCAに代謝されるPYRの職業的曝露は多くないことが推察される。FDのみを対象とした予備的解析において,夏における蚊やハエ防除のための家庭用殺虫剤使用者(n=12)の尿中CDCA量は,殺虫剤非使用者(n=80)に比べて有意に高いことが明らかとなった(GM 0.70 v.s. 0.29 mg/g creatinine, p<0.05)。すなわち,室内で使用したPYR殺虫剤がPYR曝露源の一部であることが示唆された。
著者
村田 勝敬 嶽石 美和子 岩田 豊人
出版者
SOCIETY OF ENVIRONMENTAL SCIENCE, JAPAN
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.169-180, 2004

フェロー出生コホート研究(Faroese Birth Cohort Study)は,メチル水銀の小児神経発達影響に関する研究として世界的に有名である。この理由は,米国科学アカデミーが米国環境保護庁(EPA)のメチル水銀に関する基準摂取量(RfD)を再検討する際に参照すべき重要な研究であると結論したことにある。本稿は,北大西洋に浮かぶ18の島々からなるフェロー諸島が環境科学領域の研究対象集団として何故選択されたのか,そこで検査された7歳児および14歳児からどのような研究成果が得られたのか,そしてリスク評価の経過でフェロー諸島にどのような変化がもたらされたのかについて概説した。また,この出生コホート研究の解析過程で吟味された"リスクの過小評価"についても触れた。
著者
岩田 豊子
出版者
佐伯史談会
雑誌
佐伯史談
巻号頁・発行日
no.144, pp.60-62, 1987-03
著者
高田 和夫 杉田 誓子 藤浪 隆夫 長嶋 正實 岩田 弘敏 高田 晴子 岩田 豊
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
日本総合健診医学会誌 (ISSN:09111840)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.382-388, 1997-12-30 (Released:2010-09-09)
参考文献数
16

高校1年生における「肥満」の判定基準を策定する目的で, 高校1年生男子50, 644名, 女子47, 457名を対象とし, 男女別に身長2cmごとの体重分布をHoffmann法で正規化して平均値を求めて基準値とした。この基準値は男女ともBMI=20の値にほぼ一致した。この基準で算定した肥満度別の「高血圧」発現頻度は肥満度が高いほど高く, また標準値を10%以上越える低体重あるいは過体重の生徒はいずれも問診によって身体活動性が悪いと評価し得た。高校1年生の体重の評価を行う時, 基準値の10%を越える低体重あるいは過体重の生徒は生活習慣改善の指導対象と判定すべきである。