- 著者
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上山 純
野村 洸司
斎藤 勲
近藤 高明
杉浦 友香
村田 勝敬
岩田 豊人
涌澤 伸哉
上島 通浩
- 出版者
- 日本毒性学会
- 雑誌
- 日本毒性学会学術年会 第40回日本毒性学会学術年会
- 巻号頁・発行日
- pp.1002019, 2013 (Released:2013-08-14)
現在,殺虫剤の化学物質曝露が及ぼす健康への影響について国内外で関心を集めており,尿中バイオマーカーを用いた曝露レベル等を評価する試みがアメリカやドイツ等で多く実施されている。合成ピレスロイド系殺虫剤(PYR)は農業用あるいは家庭用殺虫剤として日本人にも馴染のある化学物質であるが,PYR曝露マーカーである尿中クリサンテマムジカルボン酸(CDCA)および3フェノキシ安息香酸(3PBA)排泄量に関する日本人のデータは少ない。本研究では日本人成人の尿中に排泄されるCDCAおよび3PBA量をモニタリングし,それらの季節変動,職域間差および曝露源について検討した。調査対象は食品配送小売業者(FD, n=92),リンゴ農家(AF, n=144)および殺虫剤撒布職域従事者(PCO, n=24)とし,それぞれ夏季および冬季に採尿とアンケート調査を行った。ガスクロマトグラフ質量分析計で定量された尿中3PBAとCDCAは非正規分布を示していたため,対数変換値(正規化)を用いて季節変動はpaired t-検定,職域間差は一元配置分散分析,その後の検定にはScheffeの方法を用いて有意差を検出した。全対象者における尿中3PBAとCDCAの検出率は92%以上であり,ほとんどの日本人が日常的にPYRに曝露していることが明らかとなった。夏と冬における3PBA濃度の幾何平均値(GM)はそれぞれ0.7および 0.5 (FD),0.9および0.4 (AF),2.6および1.8 (PCO) (μg/g creatinine)であった。また,CDCAのGMは0.33および0.13 (FD), 0.30および0.21 (AF), and 0.56および0.26 (PCO)であり,PCOの3PBAを除き,代謝物量は冬に比べて夏で有意に高い値を示した(p<0.05)。すなわち,冬に比べて夏におけるPYRの曝露レベルが高いことが示唆された。PCOの3PBA量は他群のそれに比べて高い値を示した。一方,CDCAにはその傾向が見られなかったことから,CDCAに代謝されるPYRの職業的曝露は多くないことが推察される。FDのみを対象とした予備的解析において,夏における蚊やハエ防除のための家庭用殺虫剤使用者(n=12)の尿中CDCA量は,殺虫剤非使用者(n=80)に比べて有意に高いことが明らかとなった(GM 0.70 v.s. 0.29 mg/g creatinine, p<0.05)。すなわち,室内で使用したPYR殺虫剤がPYR曝露源の一部であることが示唆された。