著者
北原 悠吾 野村 洸司 西原 奈波 上田 琢也 渡邉 悟 斎藤 勲 上山 純
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.136-140, 2022-08-25 (Released:2022-08-30)
参考文献数
16
被引用文献数
3

近年,持続的に調達可能な代替食料源の探索が進められており,栄養学的に問題がなく,大量生産が可能な食用昆虫に注目が集まっている.現在,日本では食用昆虫に対して,品質管理やリスク評価に関する法的な規制はなく,食用昆虫による健康影響への理解は十分とは言いがたい.本研究では国内で入手可能な食用昆虫14種を対象に,ヒ素・重金属および残留農薬の測定を行った.結果,各元素の最大値は,Asが6.15,Cdが0.82,Hgが0.50,Pbが0.67,Cuが297.7 ppmであり,残留農薬はGC-MS/MS分析にてフェノブカルブ(またはBPMC)を3.17 ppmの濃度で検出した.本研究は,日本国内で流通する食用昆虫中のヒ素・重金属および農薬の残留調査を初めて実施した例である.今後,日本国内においても昆虫食の摂取頻度の増加が予想されることを踏まえ,その安全性を確保するためリスク評価の取り組みを進めるべきと考える.
著者
上山 純 野村 洸司 斎藤 勲 近藤 高明 杉浦 友香 村田 勝敬 岩田 豊人 涌澤 伸哉 上島 通浩
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第40回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.1002019, 2013 (Released:2013-08-14)

現在,殺虫剤の化学物質曝露が及ぼす健康への影響について国内外で関心を集めており,尿中バイオマーカーを用いた曝露レベル等を評価する試みがアメリカやドイツ等で多く実施されている。合成ピレスロイド系殺虫剤(PYR)は農業用あるいは家庭用殺虫剤として日本人にも馴染のある化学物質であるが,PYR曝露マーカーである尿中クリサンテマムジカルボン酸(CDCA)および3フェノキシ安息香酸(3PBA)排泄量に関する日本人のデータは少ない。本研究では日本人成人の尿中に排泄されるCDCAおよび3PBA量をモニタリングし,それらの季節変動,職域間差および曝露源について検討した。調査対象は食品配送小売業者(FD, n=92),リンゴ農家(AF, n=144)および殺虫剤撒布職域従事者(PCO, n=24)とし,それぞれ夏季および冬季に採尿とアンケート調査を行った。ガスクロマトグラフ質量分析計で定量された尿中3PBAとCDCAは非正規分布を示していたため,対数変換値(正規化)を用いて季節変動はpaired t-検定,職域間差は一元配置分散分析,その後の検定にはScheffeの方法を用いて有意差を検出した。全対象者における尿中3PBAとCDCAの検出率は92%以上であり,ほとんどの日本人が日常的にPYRに曝露していることが明らかとなった。夏と冬における3PBA濃度の幾何平均値(GM)はそれぞれ0.7および 0.5 (FD),0.9および0.4 (AF),2.6および1.8 (PCO) (μg/g creatinine)であった。また,CDCAのGMは0.33および0.13 (FD), 0.30および0.21 (AF), and 0.56および0.26 (PCO)であり,PCOの3PBAを除き,代謝物量は冬に比べて夏で有意に高い値を示した(p<0.05)。すなわち,冬に比べて夏におけるPYRの曝露レベルが高いことが示唆された。PCOの3PBA量は他群のそれに比べて高い値を示した。一方,CDCAにはその傾向が見られなかったことから,CDCAに代謝されるPYRの職業的曝露は多くないことが推察される。FDのみを対象とした予備的解析において,夏における蚊やハエ防除のための家庭用殺虫剤使用者(n=12)の尿中CDCA量は,殺虫剤非使用者(n=80)に比べて有意に高いことが明らかとなった(GM 0.70 v.s. 0.29 mg/g creatinine, p<0.05)。すなわち,室内で使用したPYR殺虫剤がPYR曝露源の一部であることが示唆された。
著者
上山 純 斎藤 勲 上島 通浩
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.87-98, 2010

現在、ヒトにおける低用量のピレスロイド系殺虫剤曝露に関するリスク評価は、一般には食事からの残留農薬摂取量評価により行われている。ヒトを対象とした研究から得た個人曝露レベルに関する情報は少ないが、それはピレスロイド曝露の生物学的モニタリングが容易でないことに理由の一端がある。この障壁は近年、分析化学の進歩により克服されるようになった。高速液体クロマトグラフ質量分析計やガスクロマトグラフ質量分析計を用いることにより、ピレスロイド系殺虫剤の尿中代謝物の分離及び高感度の定性・定量を、今日では確実に行うことができる。本総説では、尿中ピレスロイド代謝物の生物学的モニタリングについて全体像を提示するとともに、一般生活者集団における尿中代謝物量に関する報告を整理する。そして、環境衛生学領域におけるこのモニタリング研究の将来展望について述べる。
著者
斎藤 勲 上野 英二 大島 晴美 松本 浩 佐々木 久美子 米谷 民雄
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 = Journal of the Food Hygienics Society of Japan (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.173-177, 2006-08-25
被引用文献数
2

GC-FIDを用いるメトプレン試験法を見直すための検討を行った.試料からアセトニトリル抽出し,塩析により水層分離後,アセトニトリル層を少量のヘキサンで洗浄,次いでフロリジルカラムで精製してHPLC-UVで測定した.小麦など7種類の試料からの平均回収率は 74.6~82.8% と良好であった.さらに本法を6機関で評価したところ,5種類の試料からの平均回収率は79.4~84.6%,併行再現性および室間再現性の相対標準偏差はそれぞれ 2.3~8.8%,8.8~23.6% であった.1機関でらっかせいからの回収率が高かったために室間再現性が高くなったのを除いて良好な結果が得られた.検出限界は0.001~0.02 μg/gであった.