著者
川村 博忠
出版者
日本地図学会
雑誌
地図 (ISSN:00094897)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.3_1-3_9, 2010 (Released:2012-02-24)
参考文献数
14

従来、いわゆる「慶長日本図」と称されてきた国立国会図書館所蔵日本総図の慶長期成立は誤認であって、正しくは島原の乱直後の寛永15年(1638)に作成された日本総図の写であるという筆者の見解は現在では大方の認知を得たようである。幕府大目付の井上筑後守(政重)は寛永15年に日本総図の作成を理由に中国筋諸国に国絵図の提出を要請したことが明らかになっていた。しかし著者は日本総図を編集するのにどうして中国地方の国絵図のみでこと足りたのかが理解できなかった。ところがこの度新しく発見された南葵文庫所蔵の『日本全国図』によってその疑問が解消された。この『日本全国図』は寛永15年日本図の下図とみなされるが、この図では中国筋諸国に限って渡河方法の注記が著しく欠如している。幕府が島原の乱後に軍事的理由で作成した寛永15年日本図(国会図書館蔵日本総図)は街道筋の渡渉地点で舟渡りか歩渡りかといった渡河方法を注記するのが内容上の目立った特徴である。幕府は寛永15年日本図の編集に際して中国地方での渡河方法の情報を補う必要から中国筋諸国に限って国絵図の調進を要請したのである。
著者
小野寺 淳 出田 和久 平井 松午 藤田 裕嗣 小田 匡保 礒永 和貴 大島 規江 川村 博忠 倉地 克直 杉本 史子 三好 唯義 小野田 一幸 種田 祐司 野積 正吉 青木 充子 尾崎 久美子 中尾 千明 橋本 暁子 横山 貴史
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

オランダ、ライデン大学図書館にはシーボルトが収集した21鋪の手書き彩色の国絵図が所蔵されている。21鋪の国絵図を高精細画像で撮影し、国内の類似の国絵図と詳細に比較分析した結果、21鋪の基図は慶長図1鋪、寛永図6鋪、正保図と寛文図14鋪であることが明らかになった。対となる国絵図がある一方で、基図の作成年代も個々に異なる例が多く、シーボルトの手書き彩色国絵図の入手先は複数あったと想定される。