著者
蒲生 俊敬
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

前年度製作の可搬型高精度ガス分析システムに改良を加えつつ,フィールド観測への応用を図り,沿岸及び外洋海水中に溶存する水素の分析データを蓄積した。水素の供給源や消費速度について他の気体とも比較しつつ考察を進めた。平成20年5月19日〜5月26日,および同年10月20〜22日にかけて,東京大学海洋研究所附属国際沿岸海洋センター(岩手県大槌町)に本システムを持参し,大槌湾内および大槌川河口域での観測を実施した。河口域において大気平衡時濃度の95倍という極めて高濃度の溶存H_2を観測した。大槌湾における溶存H_2,COおよびCH_4濃度は,塩分との関係からみて,濃度の高い河口域の水,濃度の低い大槌川の水,および外洋性の海水の混合によって決まると推定した。また,大槌湾表層水の溶存H_2はすべて過飽和(136〜9478%)であり,このことから大槌湾表層水から大気への明確なH_2の放出を明らかにした。溶存H_2とCOは類似した挙動を示すことから,同一の供給源すなわち有機物の無機的な光分解に由来する可能性のあることを示したなお,大槌川河口域では高濃度の溶存CH_4が検出されたことから,還元的な微小環境の存在が示唆され,そこでH_2も生成する可能性がある。さらに,外洋域でもデータを取得するため,6月24日から7月4日にかけて,学術研究船「淡青丸」KT-08-14航海に参加し,相模湾・伊豆黒潮周辺海域における溶存H_2およびCO濃度の観測を行った。黒潮海域ではクロロフィル濃度極大と溶存H_2濃度極大の深度が合致することを見いだした。H_2濃度極大(過飽和)をもたらすプロセスとして,(1)有機物の非生物的な光分解,(2)微小還元環境での嫌気性バクテリアによる有機物の発酵による生成,および(3)海洋シアノバクテリア等の窒素固定に伴う生成,の可能性を指摘した。9月17日〜9月19日に開催の日本地球化学会年会および日本海洋学会秋季大会において中間発表を行ってレヴューを受け,平成21年3月までに最終結果を取り纏めた。
著者
竹松 正樹 下 相慶 VOLKOV Y.N. 崔 ぴょん昊 羅 貞烈 金 くー 金 慶烈 蒲生 俊敬 磯田 豊 DANCHENKOV M GONCHAREKO I CREPON M. LI RongーFeng JI ZhougーZhe ZATSEPIN A.G MILLOT C. SU JiーLan 尹 宗煥 OSTROVSKII A 松野 健 柳 哲雄 山形 俊男 野崎 義行 大谷 清隆 小寺山 亘 今脇 資郎 増田 章 YUNG John-fung BYOG S-k. NA J.-y. KIM K.r. CHOI Byong-ho CREPON Michel 崔 秉昊 金 丘 オストロフスキー A.G YURASOV G.I. 金子 新 竹内 謙介 川建 和雄 JIーLAN Su FENG Li Rong FEI Ye Long YARICHIN V.G PONOMAREV V. RYABOV O.A.
出版者
九州大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

1.本研究の特色は、研究分担者間の研究連絡・交流を促進し、研究成果の統合を図るに止まらず、研究課題に対する理解を格段に深めるのに必要な新しいデータセットの取得を提案し、実行することにある。実際、前年度の本研究主催の国際研究集会(福岡市)に於いて策定された計画に従い、平成6年7月に、日・韓・露の3国の参加を得て、日本海全域に亘る国際共同観測を実施した。この夏季観測では、海底までの精密CTD、化学計測、ドリフタ-の放流、測流用係留系(3本)の設置・回収と並んで、分担者の開発した特殊な曳航体を用いてクロロフィル、O_2、CO_2及び表層流速の測定が試みられた。特筆すべきは、日本海北部のロシア経済水域内の3点において、11ヶ月に及び長期測流データを取得したことである。これは、日本海誕生以来、初めて、日本海盆の中・深層の流動特性を明らかにしたもので貴重である。なお、現在、3本の係留計(うち1本にはセディメントトラップ付)が海中にあって測流中である。更に、冬期の過冷却による深層水の生成過程を調べる目的で、平成7年3月1日から、ウラジオストック沖において、3国共同観測が実施された。これは、次年度以降に予定されている本格的な冬季観測の準備観測として位置づけられている。2.現地観測による新しいデータセット取得の努力と並んで、室内実験に関する共同研究も活発に実施された。即ち、昨年度の研究集会での打ち合わせに従って、日・韓・露でそれぞれ冷却沈降過程に関する実験を進めるとともに、平成6年10月にはロシア・シルショフ研究所からディカレフ氏(研究協力者)を日本に招き、また、研究代表者が韓国漢陽大学を訪問し研究途中成果の比較検討を行った。この共同研究においては、特に、自由表面を確保する冷却(駆動)方法が試みられ、従来の固体表面を持つ実験と著しい差異があることを見出した。しかし、こうした実験結果を現実の沈降現象と結びつけるには、冬季における集中的現地観測の成果を持たねばならない。3.昨年1月の研究集会での検討・打合わせに従って、日・韓・仏・中・(米)の研究者により、日本海及び東シナ海域に関する数値モデル研究が共同で進められた。その成果として、東韓暖流の挙動(特に離岸現象)を忠実に再現できる新しい日本海数値モデルを開発するとともに、黒潮を含む東シナ海域の季節変動のメカニズムを解明するための数値モデル研究がなされた。4.夏季観測の際に放流したドリフタ-(アルゴスブイ)の挙動は韓国・成均館大学及び海洋研究所で受信され、衛星の熱赤外画像と高度計データは九州大学で連続的に収集された。こうした表層に関する情報を有機的に結合し、検討するため、平成7年1月に成均館大学の崔教授が九州大学を訪問した。5.以上の共同研究活動の全成果を多面的に検討し統合するために、平成6年11月7〜8日の2日間に亘り、韓国ソウル大学に於いて開催された国際研究集会に参加した。この集会には、日本・韓国・ロシアから、一般参加も含めて、約70名の参加者があった。参加者の専門分野が、海洋物理、化学、海洋工学及び生態学と多岐にわたっていることは学際性を標ぼうする本研究の特色を象徴するものである。アメリカからも2名の特別参加があり、本研究が口火を切った日本海及び東シナ海に関する学際的・国際的研究に対するアメリカの並々ならぬ関心が表明された。なお、ここで公表・検討された成果は、逐次、学術誌において印刷公表される予定である。過去2年に亘る本研究成果の総括もなされたが、そこでは、本研究が取得した新しいデータセットは、問題に解答を与えるというよりも、むしろ、新たな問題を提起する性質のものであることが認識された。そのため、最終セッションでは、提起された問題を解明して行くための今後の方策(主に現地観測)が詳細に検討された。
著者
廣田 明成 蒲生 俊敬 角皆 潤 竹内 章 張 勁 山越 祐子 岡村 行信
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.35, 2002

日本海東縁部の冷湧水活動にともなうバクテリアマット域で「よこすか/しんかい6500」YK01-06航海において海底直上水および間隙水のサンプリングを行い化学成分の分析とデータ解析を行った。その結果として湧水から高濃度で炭素同位体比の軽い微生物起源のメタンが検出された。また間隙水中のメタンは堆積物中の微生物による酸化が進行していることが分かった。
著者
堀井 勇一 ゲート ペトリック 岡田 誠 片瀬 隆雄 蒲生 俊敬 山下 信義
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.257-257, 2004

残留性有機汚染物質(POPs)の全地球的な環境挙動把握と発生源推定を行うためには従来の組成分析法では信頼性に乏しい。本研究では新規に開発した二次元ガスクロマトグラフ同位体比質量分析計を用い、ポリ塩素化ビフェニル(PCB)・ポリ塩素化ナフタレン(PCN)製剤、及びハロゲン系の揮発性有機化合物の炭素同位体比分析を行った。PCBについては、すでに報告されている日欧米製剤に加え東欧諸国(ポーランド・チェコ・ロシア)の製剤も分析し、PCNについては世界各国で使用された米国製のHalowax製剤シリーズを分析、各種製剤の傾向を解析した。さらに、これら半揮発性化合物であるPCB・PCNの比較として、異なる製造元から収集した揮発性の有機溶剤についても分析し、各種ハロゲン系有機汚染物質の物性及び炭素数や塩素・臭素置換等の構造の違いにより同位体組成に差があるか注目した。
著者
伊藤 富造 本田 秀之 富永 健 巻出 義紘 八巻 竜太郎 中澤 高清 橋田 元 酒井 均 提 眞 蒲生 俊敬
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.49-61, 1989-12
被引用文献数
2

1988年5月21日に, 三陸大気球実験場でクライオジェニックサンプラーを用いて成層圏大気採取実験を行なった。高度19kmから30kmにわたる7高度で採取された大気の精密分析を行った結果, CFC-11,CFC-12,CFC-113,CCl_4,CH_3CCl_3,CO_2,CH_4,δ^<13>C, δ^<18>Oの高度分布が得られた。