著者
山本 由弦 大田 恭史綜 小川 勇二郎
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, pp.XVII-XVIII, 1998 (Released:2010-12-14)
参考文献数
4
被引用文献数
2 3

デュープレックス構造は, サイスミックプロファイルなどに表れることもあるが, 露頭観察やマッピングによって, 陸上でも認められる構造である. その基本形態は, 衝上断層によるものの場合はroof thrustとfloor thrustに挟まれた領域で, ある特定の地層がそれに対して低角な衝上断層によって繰り返して覆瓦状構造を形成するものである. またデュープレックス構造は, 付加体の比較的深部での底づけ作用によって形成されると考えられ, 付加体の指標になりうる構造として考えられている. これまで日本では, 露頭サイズのデュープレックス構造の報告例は, Hanamura and Ogawa(1993), Ogawa and Taniguchi(1996), Ujiie (1997)などを除いてほとんどなかったが, 筆者らは三浦半島南端部の三浦市海外町から浜諸磯にかけての海岸沿いの三浦層群下部の三崎層(中新統上部~鮮新統下部)からいくつかの典型例を見いだした. それらのうちのいくつかは, Hanamura and Ogawa(1993)によって報告されている. これらのデュープレックス構造は, ゆるく北方へ傾斜する特定の層準(厚さ約数10cm)内部に限られて発達する. 今回, この地域におけるデュープレックス構造の形態的多様性, フェルゲンツなどが明らかになった. 3次元的な露頭観察により, この地域のデュープレックス構造は, 1か所を除いて, すべて南南東~南東フェルゲンツであることがわかった. Kanamatsu(1995)による古地磁気学的研究によると, この地域の三浦層群は時計回りに約20度回転しているので, もともとのフェルゲンツは南東ないし東南東であったと考えられる. これは, デュープレックス構造形成時の, フィリピン海プレートの沈み込みの向きに制約を与えるものとして, この地域のテクトニクス解明に非常に有用なものとなろう.
著者
小川 勇二郎 黒澤 正紀 平野 直人 森 良太
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2008年度日本地球化学会第55回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.303, 2008 (Released:2008-09-06)

陸上のオフィオライト・スイーツには島弧のシグネチャーを持つものが含まれ、また現在の島弧前弧域にもオフィオリティックな岩石が現出することから、オフィオライトの多くは島弧で形成されたものと信じられている。ある条件下で島弧の前弧域がスプレッディングを起こし、そこに拡大軸ができていわゆる拡大海嶺的なまた島弧的なセッティングが生じる、とのモデルは多いが、その実体に関しては推測の域を出ない。SSZ ophiolite, forearc ophioliteなどとされるものは次のどれかに属するか、その組み合わせである。1)沈み込みが開始した部分のかつての大洋プレートのリムナント(つまり島弧のできる前の大洋プレート)、2)島弧がその火山フロントから裂けて発達するときに、前弧へ押しやられた古い島弧部分、3)島弧そのもの、特にその発達初期に活動を停止したもの、4)別の場所にあったものが、島弧の発達とともに前弧域にもたらされたもの、5)島弧とは全く無関係の大洋側のプレートが、沈み込み帯へトラップされたもの(オブダクションを含む)、6)拡大海嶺の沈み込みやロールバックによって前島弧その場所に、in situで噴出・エンプレイスしたもの。7)背弧のもの。これらにエンプレイスメントのプロセスやメカニズム、発達順序などを組み合わせると、さまざまなセッティングがありうる。たとえば、島弧の火山フロントからはかけ離れた場所にある例(タイタオ;Espinosa et al., 2005 Island Arc)や、拡大海嶺近傍から次の沈み込みが始まって、結果的に拡大軸に島弧のものが重なった例(オマーンなど)もあり、改変(あるいは改編)という用語は適当だろう。われわれは房総半島嶺岡帯の例について以下のような知見を得たので、伊豆島弧の発達史からのアナロジーを展開したい(Hirano et al., 2003 GSLondonSpecPub; Ogawa & Takahashi, 2004 Tectonophysics; Mori et al., 2008 GSASpecPap, submitted)。房総沖には世界的にもまれなTTT-type triple junction(房総三重点)が存在し、それに関連した島弧-島弧の衝突が生じていると考えられる。このセッティングは”trinity clastics”(オフィオリティック、島弧、大陸由来の三者混合の砕屑岩)(Mori et al., 2008 GSASpecPap, submitted)の存在から、中期中新世からのものであろう。それはまた、四国海盆の拡大末期における日本海の観音開き、南部フォッサマグナの火山活動、伊豆弧の衝突開始などに符号することから、日本列島が現在の形となった時期に一致する。嶺岡帯は、基本的には四万十帯の延長であろうが、そのオフィオリティックな岩石と付随する地層・岩石群は、西南日本の一般の四万十帯に現れるものとは、産状などが根本的に異なっている。玄武岩はtholeiiteを主とし(MORBを主とするが、IATもある。すなわちフラットなスパイダーグラムで特徴的ないわゆるMORBタイプが多いが、一部にNb-Taがネガティブなアノマリーを示す島弧的なものが含まれる)、またwithin plate (A)のドメインに入るalkali basalt(petit spotかもしれない)もある。玄武岩は枕状溶岩からなり白亜紀(80Ma)から中新世(20Ma)までにわたる。斑レイ岩の大半は島弧的であるがMORB的なものもあり、ほかの玄武岩質岩類とともに熱水変質、マイロナイト化、ブレッチャ化など、拡大軸やトランスフォーム(コアコンプレックス)などに類似する変形・変質を受けている。時代的変化としては、明らかに島弧的な岩石は40Maころから普通になり(トーナライト、安山岩、ボニニティック(28.6+/-5.1Ma)など)、最後は15Maころののフォッサマグナ・グリーンタフと共通の安山岩のパミスフォールで終了し、相前後して形成される付加体である中新世前期(23Ma)以降の保田・江見層群には伊豆島弧由来の火山岩が顕著となる。以上のような状況からは、嶺岡帯のオフィオリティックな岩石は白亜紀から古第三紀のある時期までの大洋プレート(Ogawa & Taniguchi, 1988 Modern Geology; 佐藤暢ほか, 1999地学雑らの「嶺岡プレート」)と、40Ma以降の島弧的な玄武岩ほかの混合したものである蓋然性が高い。また、結晶片岩ブロック(4個)の存在も見逃せない。現在の伊豆・マリアナ弧には、1)30Ma以前のトランスフォーム断層(四国・パレセベラベイスンの最初の境界)に沿う大町海山には片状アンチゴライト蛇紋岩に伴って角閃岩相の結晶片岩が産する(Ueda et al., 2004 Geology)。2)島弧最前縁には、蛇紋岩ダイアピルが多産し、ブルーシスト、チャート(白亜紀)などが産する(Maekawa et al., 1995 AGUGeophMonog)、3)母島海山には、蛇紋岩、斑レイ岩、玄武岩などいわゆるforearc ophioliteが産する(Ishiwatari et al., 2006 Island Arc)。以上のような現在の産状をすべて組み合わせると、嶺岡帯の岩石を説明可能かもしれない。今後、すべての岩石の徹底的なケミストリー(同位体を含む)、年代測定、産状の考察が必要である。
著者
小川 勇二郎
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.77, no.10, pp.617-634, 1971-10-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1
著者
佐藤 暢 谷口 英嗣 高橋 直樹 MOHIUDDIN Mia Mohammad 平野 直人 小川 勇二郎
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.108, no.3, pp.203-215, 1999-06-25
参考文献数
63
被引用文献数
1 10

Geological, petrological, and biostratigraphical studies of Mineoka ophiolite and related rocks, Hayama and Mineoka Belts, central Japan, were reviewed, and the origin of ophiolite is summarized as follows. 1) Pelagic to hemipelagic sedimentary rocks occur from late Paleocene to middle Miocene. 2) Basaltic rocks in the Hayama Belt are mostly alkali basalts of hotspot origin, whereas those in the Mineoka Belt are mostly tholeiite of mid-ocean ridge origin. 3) Chemical compositions of gabbros and diorites indicate island arc origin. 4) Peridotites are residues after a medium degree of partial melting. These facts arenot consistent with previous ideas that the ophiolite is island arc or back arc originonly. “It is concluded that ophiolite is part of the Mineoka plate” in the Pacific Ocean side, not in the Philippine Sea as previously proposed. Reconstruction of plate motions of the Mineoka plate is proposed, as it was formed at mid-ocean ridge, was subducted by the Pacific plate, and obducted to the Honshu arc during Miocene age after the eastward motion of the triple junction.
著者
佐藤 暢 谷口 英嗣 高橋 直樹 Mia Mohammad MOHIUDDIN 平野 直人 小川 勇二郎
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.108, no.3, pp.203-215, 1999-06-25 (Released:2010-10-13)
参考文献数
65
被引用文献数
5 10

Geological, petrological, and biostratigraphical studies of Mineoka ophiolite and related rocks, Hayama and Mineoka Belts, central Japan, were reviewed, and the origin of ophiolite is summarized as follows. 1) Pelagic to hemipelagic sedimentary rocks occur from late Paleocene to middle Miocene. 2) Basaltic rocks in the Hayama Belt are mostly alkali basalts of hotspot origin, whereas those in the Mineoka Belt are mostly tholeiite of mid-ocean ridge origin. 3) Chemical compositions of gabbros and diorites indicate island arc origin. 4) Peridotites are residues after a medium degree of partial melting. These facts arenot consistent with previous ideas that the ophiolite is island arc or back arc originonly. “It is concluded that ophiolite is part of the Mineoka plate” in the Pacific Ocean side, not in the Philippine Sea as previously proposed. Reconstruction of plate motions of the Mineoka plate is proposed, as it was formed at mid-ocean ridge, was subducted by the Pacific plate, and obducted to the Honshu arc during Miocene age after the eastward motion of the triple junction.
著者
小川 勇二郎 黒澤 正紀 平野 直人 森 良太
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.303-303, 2008

陸上のオフィオライト・スイーツには島弧のシグネチャーを持つものが含まれ、また現在の島弧前弧域にもオフィオリティックな岩石が現出することから、オフィオライトの多くは島弧で形成されたものと信じられている。ある条件下で島弧の前弧域がスプレッディングを起こし、そこに拡大軸ができていわゆる拡大海嶺的なまた島弧的なセッティングが生じる、とのモデルは多いが、その実体に関しては推測の域を出ない。SSZ ophiolite, forearc ophioliteなどとされるものは次のどれかに属するか、その組み合わせである。1)沈み込みが開始した部分のかつての大洋プレートのリムナント(つまり島弧のできる前の大洋プレート)、2)島弧がその火山フロントから裂けて発達するときに、前弧へ押しやられた古い島弧部分、3)島弧そのもの、特にその発達初期に活動を停止したもの、4)別の場所にあったものが、島弧の発達とともに前弧域にもたらされたもの、5)島弧とは全く無関係の大洋側のプレートが、沈み込み帯へトラップされたもの(オブダクションを含む)、6)拡大海嶺の沈み込みやロールバックによって前島弧その場所に、in situで噴出・エンプレイスしたもの。7)背弧のもの。これらにエンプレイスメントのプロセスやメカニズム、発達順序などを組み合わせると、さまざまなセッティングがありうる。たとえば、島弧の火山フロントからはかけ離れた場所にある例(タイタオ;Espinosa et al., 2005 Island Arc)や、拡大海嶺近傍から次の沈み込みが始まって、結果的に拡大軸に島弧のものが重なった例(オマーンなど)もあり、改変(あるいは改編)という用語は適当だろう。われわれは房総半島嶺岡帯の例について以下のような知見を得たので、伊豆島弧の発達史からのアナロジーを展開したい(Hirano et al., 2003 GSLondonSpecPub; Ogawa & Takahashi, 2004 Tectonophysics; Mori et al., 2008 GSASpecPap, submitted)。房総沖には世界的にもまれなTTT-type triple junction(房総三重点)が存在し、それに関連した島弧-島弧の衝突が生じていると考えられる。このセッティングは"trinity clastics"(オフィオリティック、島弧、大陸由来の三者混合の砕屑岩)(Mori et al., 2008 GSASpecPap, submitted)の存在から、中期中新世からのものであろう。それはまた、四国海盆の拡大末期における日本海の観音開き、南部フォッサマグナの火山活動、伊豆弧の衝突開始などに符号することから、日本列島が現在の形となった時期に一致する。嶺岡帯は、基本的には四万十帯の延長であろうが、そのオフィオリティックな岩石と付随する地層・岩石群は、西南日本の一般の四万十帯に現れるものとは、産状などが根本的に異なっている。玄武岩はtholeiiteを主とし(MORBを主とするが、IATもある。すなわちフラットなスパイダーグラムで特徴的ないわゆるMORBタイプが多いが、一部にNb-Taがネガティブなアノマリーを示す島弧的なものが含まれる)、またwithin plate (A)のドメインに入るalkali basalt(petit spotかもしれない)もある。玄武岩は枕状溶岩からなり白亜紀(80Ma)から中新世(20Ma)までにわたる。斑レイ岩の大半は島弧的であるがMORB的なものもあり、ほかの玄武岩質岩類とともに熱水変質、マイロナイト化、ブレッチャ化など、拡大軸やトランスフォーム(コアコンプレックス)などに類似する変形・変質を受けている。時代的変化としては、明らかに島弧的な岩石は40Maころから普通になり(トーナライト、安山岩、ボニニティック(28.6+/-5.1Ma)など)、最後は15Maころののフォッサマグナ・グリーンタフと共通の安山岩のパミスフォールで終了し、相前後して形成される付加体である中新世前期(23Ma)以降の保田・江見層群には伊豆島弧由来の火山岩が顕著となる。以上のような状況からは、嶺岡帯のオフィオリティックな岩石は白亜紀から古第三紀のある時期までの大洋プレート(Ogawa & Taniguchi, 1988 Modern Geology; 佐藤暢ほか, 1999地学雑らの「嶺岡プレート」)と、40Ma以降の島弧的な玄武岩ほかの混合したものである蓋然性が高い。また、結晶片岩ブロック(4個)の存在も見逃せない。現在の伊豆・マリアナ弧には、1)30Ma以前のトランスフォーム断層(四国・パレセベラベイスンの最初の境界)に沿う大町海山には片状アンチゴライト蛇紋岩に伴って角閃岩相の結晶片岩が産する(Ueda et al., 2004 Geology)。2)島弧最前縁には、蛇紋岩ダイアピルが多産し、ブルーシスト、チャート(白亜紀)などが産する(Maekawa et al., 1995 AGUGeophMonog)、3)母島海山には、蛇紋岩、斑レイ岩、玄武岩などいわゆるforearc ophioliteが産する(Ishiwatari et al., 2006 Island Arc)。以上のような現在の産状をすべて組み合わせると、嶺岡帯の岩石を説明可能かもしれない。今後、すべての岩石の徹底的なケミストリー(同位体を含む)、年代測定、産状の考察が必要である。