著者
川野邊 渉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.56-59, 2007-02-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
2

我が国2例目の壁画古墳として知られるキトラ古墳では,壁画取り外し作業が行われている。我が国において初めての試みには装こう技術を初めとする伝統的な技術・材料と共に多くの新しい技術や材料が用いられている。本稿では,これらの技術材料がなぜ文化財保存に用いられたのか,基本的な考え方といくつかの例をあげて解説する。
著者
小峰 幸夫 林 美木子 木川 りか 原田 正彦 三浦 定俊 川野邊 渉 石崎 武志
雑誌
保存科学 = Science for conservation
巻号頁・発行日
no.50, pp.133-140, 2011-03-31

Extensive survey of beetles with sticky insect traps (about 27,000 traps) in about seventy historic buildings in Nikko World Heritage site was performed from the end of April to August 2010. Several species of Anobiid were found on the sticky traps: Priobium cylindricum, Trichodesma japonicum, Sculptotheca hilleri, Hadrobregmus pertinax, and Oligomerus japonicus. Some of them had caused severe infestation at certain buildings. There is little information about the anobiid species, but from the sporadic patterns of numbers of anobiids on sticky traps in many buildings over fairly vast areas, it is supposed that these anobiids may inhabit the natural places (forests) around the historic buildings. Nicobium hirtum is a well known anobiid which infests wooden objects and buildings in Japan. But surprisingly, we did not observe the species in the surveys in the Nikko area. Adult insects were most significantly caught on sticky traps from May to July. Since there is little information about these kinds of anobiids, this trapping survey provided important information about the characteristics of the insects and ideas for appropriate countermeasures to protect the buildings from the insects.
著者
増田 勝彦 佐野 千絵 川野邊 渉
出版者
東京国立文化財研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

紙の風邪引き現象は、水に対する挙動が斑点状に不均一になることである。その斑点部では、親水性が特異的に高くなっており、膠と明礬の混合液であるド-サ塗布を繰り返してもなかなか、水滲性を克服できない。風邪引き箇所は、通常光下では不可視であり、ド-サ塗布後乾燥して水を塗布した時に初めて、斑点状に水滲箇所が観察出来る状態となる。生物的な要因:風邪引き箇所と健全部の化学分析により比較したところ、アミノ酸の一部に有為な差が認められた試料と認められなかった試料が混在している。繊維表面の物理的変化:X線マイクロアナライザーにより塗布した硫酸銅の挙動は、風邪引き箇所に集中している。試料の示す分析結果が、同一でないので、単一な理由で風邪引き現象が生起されるのではないことが、予想される。風邪引き現象の発現率調査は、文化財修復工房、日本画家の協力を得て行っているが、必ずしも湿度環境だけが原因とは考えられない状況である。
著者
加藤 雅人 川野邊 渉 高橋 裕次 稲葉 政満 半田 正博
出版者
独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

紙文化財の修理技術は、工程、手法、道具、材料が様々であり、同じ作業や材料、道具でさえ用語が異なっていることがある。本研究では、これらの用語を調査して分類することにより、紙文化財およびその修復技術という無形文化財に対する共通理解を深めることを目的として行った。最初に調査票の作製を行い、その後情報収集を行った。データベースの検討を行い、htmlの試作を行った。また蓄積した情報を修復用紙の選択に応用した。
著者
三浦 定俊 石崎 武志 肥塚 隆保 川野邊 渉 佐野 千絵
出版者
独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

はじめに高松塚古墳、キトラ古墳におけるこれまでの環境測定データを整理してまとめた。特に高松塚古墳については、発掘後、約30年間の温度データを下に、石室内の温度が80年代以降の外気温上昇の影響を受けて上がってきたことを明らかにした。また高松塚古墳の墳丘部の土質や水分分布を調査し、墳丘部の土の間隙の約半分は空気で占められる不飽和状態になっていることがわかった。あわせて墳丘土の水分特性を調べたところ、これと平衡となる相対湿度は100%となることがわかり、これまでの石室内での相対湿度の測定結果が裏付けられた。古墳石室内の生物的環境については、高松塚古墳・キトラ古墳の壁面を覆っているゲル状の汚れはカビ、バクテリア、酵母からなるいわゆるバイオフィルムであることを明らかにした。また石室内外から試料を採取し、菌類や酵母、バクテリアについて遺伝子配列解析による分子レベルの系統解析を行った。その結果、両古墳で類似のものもあるが、特にバクテリアについては優占種が異なっていることがわかった。古墳保存施設をどのように管理すべきか検討するために、キトラ古墳の施設を例に施設管理の手法とその効果についての検証を進めた。その結果、施設内大気中浮遊菌の量の推移と種類の相同性から、室内大気の動きを把握する手法を確立した。