著者
帯谷 博明
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.6, pp.148-162, 2000-10-31
被引用文献数
2

近年,植林運動が全国的な高まりを見せているが,その中でも漁業者による運動は,1980年代後半に北海道と宮城県で相次いで始まり,90年代以降,全国規模で急速に拡大している。下流部の漁業者が上流部に植林を行い,流域環境を守ろうとするこの運動は,山から海までを一体のものとして捉える流域管理の思想に裏打ちされたものであり,その表出的な運動スタイルとも相俟って,大きな社会的インパクトを有している。本稿では,これらの運動が全国的に興隆するきっかけとなった「森は海の恋人」運動を考察の対象とする。ダム建設計画に対する危機感を背景として,宮城県唐桑町の養殖業者を中心に展開されているこの運動は,「大漁旗を掲げて木を植える」という行為を通して,流域環境保全の必要性を訴え,幅の広い支持層を獲得している。宮城県最北端の「周辺地域」に位置する,少数の漁業者の運動が発展し,ダム計画休止の一つの契機となるに至った背景にはどのような要因があるのか。本稿では,運動主体の資源および戦略,外部主体との関係,フレーミングに着目しながら,時系列的に運動過程を追い,運動がいかに展開し,外部環境との相互作用の中でその性格を変容させていくのかを明らかにする。さらに,本運動がもつ流域保全運動および環境・資源創造運動としての二重の意義を考察する。
著者
帯谷 博明
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.52-68, 2002-09-30 (Released:2010-04-23)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

本稿は, ダム建設計画を例に, 地域社会の対立の構図とその変容過程を明らかにし, 計画段階における〈開発問題〉を捉える新たな関係図式の提示を行う.高度経済成長期を中心に各地に計画された大規模開発の中には, 近年, 長期間の地域コンフリクトを経て計画の見直しや中止に至る事業が見られるようになっている.数十年間にわたって事業計画に直面してきた地域社会では, その過程でさまざまなアクター間の利害対立とその変容を経験している.本稿は, これを計画段階における〈開発問題〉として把握する.ではこの〈開発問題〉における利害関係のダイナミズムは, どのように捉えられるだろうか.具体的には, 機能主義を背後仮説とする受益圏・受苦圏論を再検討した上で, まず, 開発計画をめぐる受益と受苦が住民にどのように認識されていたのかを分析する.さらに, 主要なアクター間のネットワークに注目する.「よそ者的視点」をもつキーパーソンを結節点とするネットワークが, 運動の拡大のみならず, 住民の受益・受苦認識の変容を迫り, その結果, 利害対立の構図自体が変容していくことを見出す.結論部では, 本稿の分析から得られた関係図式として, 受益・受苦と運動・ネットワークとの「相互連関モデル」を示す.
著者
松本 博之 内田 忠賢 高田 将志 吉田 容子 帯谷 博明 西村 雄一郎 相馬 秀廣
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,グローバル化と地域景観・地域環境の変容について、特に紀伊半島における近現代を中心に検討した。その結果以下の諸点があきらかとなった。(1)1960年代後半からの外材供給の増大にともなう国内材供給量の低下は、十津川流域における植林地の変化に大きな影響を及ぼし、植林地伐採後の落葉広葉二次林景観の出現をもたらしている。(2)生活基盤が脆弱な紀伊半島和歌山県沿岸部では、近代を通じてグローバル化の2度の波があることが明らかとなった.このうち2度目は最近10年ほどの動きであり,明治期以降第2次大戦前までの1度目のグローバル化を基盤とした歴史的な地域性を引き継いでいる。(3)経済的な面でグローバル化の進行が顕著な日本社会ではあるが、高齢者個々の「生きられた世界」の構築には、地理的要素や地域の特殊性といった地域間の差異が大きく影響している。