著者
内田 忠賢
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

全国各地に伝播した「よさこい祭り」について、調査・研究した。本研究の特色は次の4点。1)現代の社会現象を代表する対象だが、先行研究が少なく、先駆的、独創的と自負する。2)巨視的な調査と微視的な調査を組み合わせ、個人に踏み込んだ新しい地理学を目論む。3)助成期間(3年間)、参与観察に徹し、内部者しか体験できない過程を調べられた。4)学術論文、学会発表だけでなく、マスコミ報道でも、研究成果の一部を公表できた。高知起源(1954年開始)の「よさこい祭り」は、90年代以降、札幌「YOSAKOIソーラン祭り」の影響で、各地に伝播した。独自性と地域性を上手く出せ、比較的安上がりなイベントだからである。鳴子踊りと民謡の組合せが基本だが、振付、音楽、衣装等が自由であるため、全国600カ所以上に伝播した。本研究では、全国で関連資料を収集し、現地調査を行った。特に千葉県内での伝播に着目した。県内のチームに参加、遠征や祭りの企画・運営に関わった。千葉県では、全国大会も始められた。ともかく、伝播のメカニズムとして、次の3点を指摘できる。1)応用が利く「よさこい祭り」は各地で受容されたが、常に、イノベータが存在する。2)インターネットを含む現代的なネットワークと都市的な人間関係が核心にある。3)商工会とNPO、匿名性を帯びる個人が、絶妙のバランスで組合わされる。
著者
小松 和彦 板橋 作美 常光 徹 小馬 徹 徳田 和夫 關 一敏 内田 忠賢 高田 衛
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

三年計画の研究は以下の四つのテーマに従って展開され、成果がまとめられた。(1)怪談・妖怪関係資料の収集及び民俗調査:全国各地(青森・東京・福島・千葉・石川・富山・新潟・愛知・京都・香川・愛媛・高知・福岡・長崎・沖縄等)でおこない、報告書(冊子体)に各分担者が三年間の調査・研究をまとめた。(2)怪異伝承データベース構築のための事例収業とカード化:民俗学関係雑誌さらには近世の随筆から妖怪・怪異関連の記事を抜き出し、情報カードの作成を行なった。作成した情報カードの件数は13,364件にのぼり、それらの書誌情報のコンピュータ入力を終了した。一般公開をみこした怪異伝承データベースの利用方法についての議論は今後の課題であるが、民俗学における妖怪・怪異研究の動向把握など現時点でも幅広い活用が期待できる。(3)怪異・妖怪研究の研究動向調査:網羅的な文献リストを作成した。また追加で妖怪・怪異研究に従事している外国人研究者のリストを調査可能な限りにおいて作成した。今回の調査で、日本の妖怪・怪異は近年関心を集め続けてきたことがわかった。.今後予定しているインターネットを通じた怪異伝承データベースの公開は国際的に価値の高い情報発信となることが予想される。(4)一般公開:本研究の成果の一部は、国立歴史民俗博物館の企画展「異界万華鏡」に生かされた。またSCS討論会「異界ルネッサンス」を催した。これは国際日本文化研究センターと国立歴史民俗博物館の間で衛星中継による公開テレビ討諭会である。いずれも一般入場者からの高い関心を得た。
著者
内田 忠賢
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.365-373, 1985-08-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1
著者
内田 忠賢
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

全国各地、世界各地に増殖する「よさこい(YOSAKOI)」の文化伝播のプロセスやメカニズムについて調査した。よさこいとは、鳴子踊りの集団によるダンスとその競演イベントを指す。本研究では、文化伝播の比較軸として、国内×海外、よさこい×エイサー(沖縄の太鼓踊り)を設定した。私はこれまで国内のよさこいが作る文化や社会を研究してきた。今回、海外でのよさこいを調査できた。特に、ブラジルでのよさこいを調査でき、日系コミュニティや文化を考えた。また、エイサーは国内外ともに、沖縄文化のローカリティが強く、よさこいに比べ、増殖力が弱い。よさこいは現代の日本文化として汎用性が高く、様々なコミュニティに受容される。
著者
内田 忠賢
出版者
公益財団法人 後藤・安田記念東京都市研究所
雑誌
都市問題 (ISSN:03873382)
巻号頁・発行日
vol.104, no.9, pp.22-25, 2013-09

高知市の地域活性のために始まったよさこい祭りは、札幌に飛び火して、YOSAKOIソーラン祭りに進化した。今では日本各地で大盛況であるばかりでなく、海外にも伝播している。新しい形の祭りとコミュニティの関係を考える。
著者
松本 博之 内田 忠賢 高田 将志 吉田 容子 帯谷 博明 西村 雄一郎 相馬 秀廣
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,グローバル化と地域景観・地域環境の変容について、特に紀伊半島における近現代を中心に検討した。その結果以下の諸点があきらかとなった。(1)1960年代後半からの外材供給の増大にともなう国内材供給量の低下は、十津川流域における植林地の変化に大きな影響を及ぼし、植林地伐採後の落葉広葉二次林景観の出現をもたらしている。(2)生活基盤が脆弱な紀伊半島和歌山県沿岸部では、近代を通じてグローバル化の2度の波があることが明らかとなった.このうち2度目は最近10年ほどの動きであり,明治期以降第2次大戦前までの1度目のグローバル化を基盤とした歴史的な地域性を引き継いでいる。(3)経済的な面でグローバル化の進行が顕著な日本社会ではあるが、高齢者個々の「生きられた世界」の構築には、地理的要素や地域の特殊性といった地域間の差異が大きく影響している。
著者
高木 彰彦 遠城 明雄 荒山 正彦 島津 俊之 中島 弘二 山野 正彦 源 昌久 山本 健児 熊谷 圭知 水内 俊雄 久武 哲也 山野 正彦 源 昌久 山本 健兒 熊谷 圭知 水内 俊雄 内田 忠賢 堤 研二 山崎 孝史 大城 直樹 福田 珠己 今里 悟之 加藤 政洋 神田 孝治 野澤 秀樹 森 正人 柴田 陽一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

公共空間と場所アイデンティティの再編について、地理思想史、理論的研究、経験的研究の観点から検討を行った。研究成果として、『空間・社会・地理思想』10(2006)、『空間・社会・地理思想』11(2007)、『空間・社会・地理思想』12(2008)を毎年刊行したほか、英文報告書として『Reorganization of public spaces and identity of place in the time of globalization : Japanese contribution to the history of geographical thought(10)』(2009)を刊行した。
著者
内田 忠賢
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究は主として近世史料を用いて、都市における怪異空間を復原・記述することを目標とした。そして本年度はさしあたり、江戸で流通していた説話的史料を分析することにより、新しい知見を得た。つまり科研費をいただいたお陰で、次の成果があがった。(1)フィクション(怪異小説)で描かれる怪異空間には、読書(聞き手)にリアリティを感じさせる周到な状況描写がなされ、近世の怪異空間の論理が読み取れた。(2)フィクションの怪異空間は、悪/良、魔/神という両面性を常に帯びており、日本文化に共通する空間的特徴をもつ。(3)ノンフィクション(世間話)の怪異空間とフィクションのそれを比べ、その共通点と相違点を見出だせた。これは当時の空間認識を知る手掛かりとなる。以上の知見は管見の限り、地理学はもちろん、このような研究対象を扱ってきた民俗学・歴史学などでも指摘されておらず、オリジナルな成果であろう。一方、このように研究を進めるプロセスで、いくつかの課題が残された。(1)地方都市(高知)の怪異空間と比較することを目指したが、在地の日記類を分析する途中である。(2)ノンフクションの空間のハード面での検証が残る。(3)空間に対する感覚のより詳細な検討が必要。(4)異なる時代・地域への目配りが欠ける。以上の仮題は次年度以降、解明していきたい。なお研究成果は学術論文以外にも、公開講座・放送ほか一般にも還元するよう心掛けた。