著者
森 真誠 深井 貴明 山本 啓二 広渕 崇宏 朝香 卓也
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2022-OS-157, no.7, pp.1-8, 2022-09-06

近年,爆発的に増加するデータを処理するために,多くのソフトウェアが利用されている.これらを共用 HPC システム上で利用する需要はあるものの,現在の共用 HPC システムはユーザが管理者権限を使用 (以後,root 化) できず,これらソフトウェアの導入に多くの労力を要する.また,システムレベルの最適化も root 化ができないため共用 HPC 環境では困難である.一方で共用 HPC 環境で単に root 化を許可すると,ハードウェアへの恒久的な変更などセキュリティや運用上で問題ある操作を防げない.また,ユーザのジョブがシステムの設定を変更できるため,ジョブの実行毎に設定変更の影響を取り除くためのマシン再起動が必要となるものの,再起動処理には多くの時間を要する.仮想計算機を用いるとこれらを解決できるものの,仮想化処理による性能劣化があり HPC システムには適さない.本研究では,上記課題を解決しユーザの root 化を可能とするシステムを提案する.提案システムは軽量なハイパバイザによって (1) ハードウェアの恒久的な変更を防ぐ機能と (2) ジョブ実行後マシンの再起動なしにシステムを既定の状態へ戻す機能を提供する.本手法を富岳と同系統システムで評価するため,Arm プロセッサで動作する軽量ハイパバイザ MilvusVisor と上記 2 つの機能を設計および実装した.本実装による実験の結果,メモリ性能における性能劣化について 2% 以下で上記機能を実現できることを確認した.
著者
森 真誠 深井 貴明 山本 啓二 広渕 崇宏 朝香 卓也
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2022-IOT-59, no.7, pp.1-8, 2022-09-06

近年,爆発的に増加するデータを処理するために,多くのソフトウェアが利用されている.これらを共用 HPC システム上で利用する需要はあるものの,現在の共用 HPC システムはユーザが管理者権限を使用 (以後,root 化) できず,これらソフトウェアの導入に多くの労力を要する.また,システムレベルの最適化も root 化ができないため共用 HPC 環境では困難である.一方で共用 HPC 環境で単に root 化を許可すると,ハードウェアへの恒久的な変更などセキュリティや運用上で問題ある操作を防げない.また,ユーザのジョブがシステムの設定を変更できるため,ジョブの実行毎に設定変更の影響を取り除くためのマシン再起動が必要となるものの,再起動処理には多くの時間を要する.仮想計算機を用いるとこれらを解決できるものの,仮想化処理による性能劣化があり HPC システムには適さない.本研究では,上記課題を解決しユーザの root 化を可能とするシステムを提案する.提案システムは軽量なハイパバイザによって (1) ハードウェアの恒久的な変更を防ぐ機能と (2) ジョブ実行後マシンの再起動なしにシステムを既定の状態へ戻す機能を提供する.本手法を富岳と同系統システムで評価するため,Arm プロセッサで動作する軽量ハイパバイザ MilvusVisor と上記 2 つの機能を設計および実装した.本実装による実験の結果,メモリ性能における性能劣化について 2% 以下で上記機能を実現できることを確認した.
著者
広渕 崇宏 高野 了成
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2015-OS-135, no.5, pp.1-9, 2015-11-17

次世代不揮発性メモリはリフレッシュ電力が不要である反面,書き込み時の消費電力が DRAM よりも大きいとされる.そこで,STT-MRAM と DRAM を搭載した計算機を想定して,仮想マシンに対して動的にメモリ割り当てを最適化するハイパーバイザを試作した.仮想マシンに対して透過的に,書き込みが頻出するページを DRAM に配置し,消費電力を抑制することを目指す.提案ハイパーバイザは,DRAM および MRAM から仮想マシンのメモリを割り当てる機構,軽量なメモリアクセスのトレース機構,ページマイグレーションを判断するアルゴリズム,DRAM と MRAM 間でページをスワップする機構からなる.Qemu/KVM に対して提案ハイパーバイザを開発している.本稿では Work-in-Progress として,現状のプロトタイプ実装を紹介する.簡易な実験を行った結果,提案機構が書き込みの多いページを DRAM へ動的に再配置できることを確認した.
著者
宮本 剛 広渕崇宏 市川 本浩 中村 豊 藤川 和利 砂原 秀樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.31, pp.49-54, 2005-03-18

インターネットの普及や高機能な計算機の低価格化を背景として,利用者の手による利用サービスの共同運用が増加しつつある.これらの運用形態では,各利用者が限られた時間の中で自発的に管理作業に携わる反面,その参加は流動的なものになりがちである.参加者の離脱により運用によって培われた運用技術や経験が損失すると,管理作業に支障をきたす恐れが生じる.よって,運用ノウハウを管理者間で持続的に共有できる環境が望まれている.本研究では,運用ノウハウの損失を防ぐために,利用者参加型運用のメーリングリストから運用技術に関する情報を容易に取りまとめられる環境の構築をを目的とする.そこで,MLの中のメールのやりとりをモデル化することで,一連の話題である''出来事''を抽出する手法を提案する.Through the spread of broadband network and high performance computers, an increasing number of advanced users cooperate network management by themselves. Though users participate to operation voluntarily, they often leave off irregularly. Therefore, the management knowledge should be shared continuously between operators to avoid the lost of it. In this paper, we aim to help operators to summarize the management techniques from archive of mailing lists easily, in order to keep the shared knowledge in the community. We propose an extraction method of series of emails in the same event from the archives. This scheme is based on the modeling of the email exchanges and the role of operators.
著者
穐山 空道 広渕 崇宏
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2017-OS-141, no.12, pp.1-9, 2017-07-19

データセンタ省電力化のため計算精度を落とす代わりに消費電力を削減する近似実行 (Approximate Computing) が着目され,特に DRAM モジュールに適用し大容量化 ・ 消費電力増が進むメモリサブシステムを省電力化する研究が盛んである.近似実行では大幅な電力削減が可能な一方,データ化けによる計算誤差やクラッシュ等アプリケーションへの影響も大きく,実際のアプリケーションに対し近似実行の適用可能性の調査が必須である.適用可能性の調査には,どのデータを近似するか,DRAM の電力をどの程度削減するか等様々なパラメータが存在し,従って近似実行を活用するためにアプリケーションへの影響を様々なパラメータで軽量に調査できることが重要である.しかし既存研究ではメモリトレースツールやハードウェアエミュレータが利用され,これらは実機の数百倍から千倍程度低速である.そこで本研究では,コモデティな CPU のハードウェア機能を利用することでメモリへの近似実行がアプリケーションに与える影響を高速に見積もる手法を提案する.近似を許すデータと許さないデータを別々の NUMA ノードに配置しメモリコントローラーの性能カウンタから各データへの IO 量を取得することで,近似データへのエラー混入が計算結果に与える影響をハードウェアシミュレータなしに再現する.評価の結果,提案機構ではアプリケーションへの影響を実機の数倍程度の時間で見積もれることを確認した.
著者
広渕 崇宏 高野 了成 工藤 知宏
雑誌
研究報告システム・アーキテクチャ(ARC) (ISSN:21888574)
巻号頁・発行日
vol.2015-ARC-215, no.12, pp.1-6, 2015-05-19

システムソフトウェア分野において不揮発性メモリ技術に関する研究を進めるため,オペレーティングシステムのメモリアクセス傾向を把握する手法を開発した.オペレーティングシステムを改変することなく,そのメモリ読み書き速度や読み書きメモリページ番号を記録できる.ハードウェアが備えるメモリアクセス監視機能を用いて既存ハイパーバイザーを拡張することで実現した.CPU インストラクションを逐次分析する方式と比べて遙かに高速に動作する.試作を通じて提案機構の基本的な動作を確認できた.
著者
広渕 崇宏 中田 秀基 伊藤 智 関口 智嗣
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.248-262, 2010-09-17
被引用文献数
3

ポストコピー型の仮想マシン再配置機構は仮想マシンの実行ホストを素早く切り替えられるため,データセンタの運用効率を向上させるうえで有用な技術であると考えられる.しかしながら,今日一般的に利用できるまでには至っていない.先行研究におけるポストコピー型再配置機構は,既存の仮想マシンモニタ(VMM)への変更が大きく,ゲストOSの改変も必要になる点に問題がある.そこで我々は,既存VMMのへ拡張が単純でゲストOSの改変も不要な,新たなポストコピー型ライブマイグレーション機構を提案する.メモリアクセスのトラップ処理とメモリページのコピー処理をVMMの外部で実装することで,VMMへの変更量を抑えながらポストコピー型再配置を実現する.再配置性能を検証するため,SPECweb2005を用いて評価実験を行った.負荷の高いウェブサーバを実行するVMであっても,1秒以内に実行ホストを切り替えることができた.実行ホスト切替え後の性能低下は限定的であった.プレコピー型再配置に比べて,VMのすべての状態を移動する時間も短縮できた.Post-copy-based VM migration is considered a promising technology for next-generation datacenters; memory pages are transferred after a VM restarts at a destination host, thereby minimizing the time of switching the execution host. Post-copy-based migration mechanisms, however, have not yet been available in industry. Prototype implementations in prior work need major modifications to existing virtual machine monitors (VMMs), and also require special software support in guest operating systems. In this paper, we propose a simple and plain implementation of post-copy-based migration, which is implemented as a lightweight extension to KVM. It supports any guest operating systems without their modifications. The RAM of a migrated VM is mapped to a special character device, which transparently transfers memory pages on demand. Experiments were conducted by using the SPECweb2005 benchmark. A running VM with heavily-loaded web servers was successfully relocated to a destination within one second. Temporal performance degradation after relocation was alleviated by pre-caching memory pages. In addition, for memory intensive workloads, our migration mechanism moved all the states of a VM faster than a pre-copy-based migration mechanism.
著者
中田 秀基 竹房 あつ子 広渕 崇宏 伊藤 智 関口 智嗣
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPSY, コンピュータシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.167, pp.55-60, 2010-07-28
参考文献数
8
被引用文献数
2

データセンターにおける消費電力低減手法の一つとして、低負荷時には仮想計算機群を少数の物理計算機に集中することで、他の物理計算機を低消費電力状態でスタンバイさせておく方法が考えられる。仮想計算機の負荷が上昇した際には、物理計算機をレジュームし、そこに仮想計算機を高速にマイグレーションすることで、仮想計算機のユーザのユーザ体験を損なわずに、消費電力を低減することができる。この方法を実現するには、負荷に応じて仮想計算機の配置を決定(仮想計算機パッキング)する手法が必要である。本稿では、仮想計算機パッキング問題に対して、いくつかの方法でアプローチし、そのパッキングの質と速度に対する評価を行った。具体的には、遺伝的アルゴリズム、0-1整数計画法を用い、グリーディなアルゴリズムであるFFD法と比較した。0-1整数計画法のソルバとしてはオープンソースのGLPKを用いた。評価の結果、以下を確認した。1)遺伝的アルゴリズムおよび0-1整数計画法は最適化に時間がかかり、リアルタイム性が要求される仮想計算機パッキング問題には必ずしもそぐわない。2)FFD法は、使用ノード数の最小化には効果があるが、マイグレーション数が制御できない。3)遺伝的アルゴリズムを、FFD法で導出した解の改良に用いることができる。