- 著者
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志澤 美保
義村 さや香
趙 朔
十一 元三
星野 明子
桂 敏樹
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.65, no.8, pp.411-420, 2018-08-15 (Released:2018-09-14)
- 参考文献数
- 27
目的 本研究は,地域在住の幼児の養育者を対象に,子供の食行動の問題への子供側の要因および環境要因の食行動への影響を検討することを目的とした。方法 対象は,A県2市において研究協力の同意が得られた保育所,幼稚園,療育機関に通う4~6歳の子供1,678人の養育者であった。協力機関を通じて養育者に無記名自記式質問紙を配布し,回答は協力機関に設置した回収箱および郵送で回収した。調査項目は,①子供の基本属性,②養育者による食行動評価,③対人応答性尺度(Social Responsiveness Scale; SRS)日本語出版準備版,④日本感覚インベントリー(Japanese sensory inventory revised; JSI-R)および⑤育児環境指標(Index of Child Care Environment; ICCE)であった。統計学的解析は,χ2検定,Fisherの正確確率検定,相関分析,および重回帰分析を行った。結果 調査は843人から回答を得て(回収率50.4%),有効回答数は583人(有効回答率34.7%)であった。養育者の捉える食行動の問題数は,一人平均2.43±2.26個,男女ともに約4割に偏食が認められ,次に「じっと座っていられない」は約3割に認められた。食行動の問題数と関連要因についての重回帰分析では子供の食行動の問題数と有意な正の関連を示した変数は,個人要因のSRST得点total(β=0.188, P<0.001),JSI-Rの味覚(β=0.319, P<0.001),聴覚(β=0.168, P<0.001),環境要因のICCEの人的かかわり(β=0.096, P=0.010)と社会的サポート(β=0.085, P=0.022)であった。一方,負の関連を示したのは,個人要因のJSI-Rの嗅覚(β=−0.108, P=0.013)ときょうだい(β=−0.100, P=0.005),年齢(β=−0.077, P=0.029),および性別(β=−0.091, P=0.010)であった。結論 本研究において,「偏食がある」,「じっと座っていられない」はこの時期の典型的な食行動の問題と考えられた。食行動の問題の多さには,自閉症的傾向,感覚特性などの個人要因だけでなく,人的かかわり,社会的サポートなどの育児環境要因についても関連が認められた。食事指導には,これらの関連要因を合わせて検討することの重要性が示唆された。