著者
樽本 憲人 金城 雄樹 北野 尚樹 渋谷 和俊 前﨑 繁文 宮﨑 義継
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.J115-J122, 2014 (Released:2014-09-18)
参考文献数
68

カンジダ属は,院内の血流感染症の原因菌の中でも頻度が高く,全身性カンジダ症が致死的な転帰をたどることもまれではない.カンジダ感染症に対する宿主の生体防御反応においては,感染早期の自然免疫においては好中球などの食細胞が,獲得免疫においてはCD4T細胞が重要な役割を示す.近年,自然免疫応答にも関与するリンパ球であるNKT細胞が,さまざまな微生物の感染症における免疫応答に関与することが示唆されているが,カンジダ感染におけるNKT細胞の関与については明らかではない.私たちは,全身性カンジダ症のマウスモデルにおけるNKT細胞の役割について確認した.まず,NKT細胞欠損マウスであるJα 18KOマウスを用いて解析を行ったが,その役割は限定的であった.一方で,糖脂質を投与してNKT細胞を活性化させたところ,生存期間が著明に短縮し,腎臓内菌数が有意に増加していた.加えて,末梢血および骨髄中の好中球数が減少していた.さらに,IFNγ KOマウスでは,NKT細胞活性化によるカンジダ感染の増悪がほぼ消失した.また,腸管内常在性の細菌とカンジダ属を共感染させたところ,カンジダ単独感染群と比較して,真菌排除が低下し,この感染増悪には細菌感染により誘導されたIFNγ が重要であることが明らかになった.以上の結果より,細菌との共感染などによって過剰にIFNγ が産生される状況では,全身性カンジダ症が増悪する可能性が示唆された.
著者
掛屋 弘 宮崎 義継 渋谷 和俊 河野 茂
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

主に血液疾患に発症するムーコル症の早期診断法開発を目的に原因真菌(Rhizopus oryzae)からシグナルシークエンストラップ法にて得られた未知の候補抗原A(23kDa)を検出するELISAキットの測定条件の最適化後、動物実験モデル感染血清中の抗原Aを測定した。その結果、非感染マウスに比較して感染マウス血清中には抗原Aの抗原価が高い傾向が認められた。
著者
杉野 圭史 仲村 泰彦 鏑木 教平 佐野 剛 磯部 和順 坂本 晋 高井 雄二郎 奈良 和彦 渋谷 和俊 本間 栄
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1_2, pp.51-55, 2017-10-25 (Released:2018-03-09)
参考文献数
12
被引用文献数
1

症例は36歳女性.主訴は乾性咳嗽,労作時息切れ.X-8年頃より左下腿腓骨部に皮下腫瘤を自覚したが放置.X-4年8月に顔面神経麻痺,右眼瞳孔散大が出現し,PSL 40 mg内服により約1 ヶ月で治癒.その後,原因不明の頭痛,難聴,嗅覚異常が出現.X-2年11月頃より乾性咳嗽および軽度の労作時息切れが出現.X-1年4月の健康診断にて胸部異常陰影を指摘され全身精査の結果,全身性サルコイドーシス(肺,副鼻腔,神経,皮膚,肝臓)と診断された.挙児希望およびステロイド恐怖症のため,吸入ステロイドを約1年間使用したが,自覚症状の改善は得られず中止.当科紹介後にご本人の希望で漢方薬(人参養栄湯7.5 g/日,桂枝茯苓丸加薏苡仁9 g/日)を開始したところ,開始4 ヶ月後より咳嗽および労作時の息切れはほぼ消失,開始6 ヶ月後には,胸部画像所見,呼吸機能検査所見の改善を認めた.その後も本治療を継続し,現在まで3年間にわたり病状は安定しており,再燃は認めていない.
著者
佐藤 史朋 秦 美暢 笹本 修一 加藤 信秀 高木 啓吾 高井 雄二郎 長谷川 千花子 渋谷 和俊
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.809-813, 2007-09-15

58歳男性.睡眠時無呼吸症候群でnCPAP療法中に,右肺S^2/S^6間に増大傾向を示す15mm大の不整結節影を認めたため,超音波メスを用いて右肺部分切除術を施行した.病理組織所見は線維性瘢痕であり,術後は空気漏れがなく術後7日目に軽快退院した.帰宅後翌日にnCPAPを再開したところ右前胸部痛が出現し,胸部X線所見で右上下葉間に薄壁空洞を認め,nCPAP再開を契機とした肺瘻の出現が疑われた.空洞は次第に縮小し術後6ヵ月で消失した.nCPAP使用中の肺切除術では,肺実質切離の方法やnCPAPの再開時期ならびに再開方法について留意すべきと思われた.