著者
水野谷 武志 粕谷 美砂子 齊藤 ゆか 伊藤 純 天野 晴子 斎藤 悦子 松葉口 玲子 天野 寛子 伊藤 セツ
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.877-885, 2002

以上, 本報ではまず, 2000年世田谷生活時間調査の重要な調査設定として, 調査単位, 典型的標本, 公募方式による調査協力者, を検討した.次に, 年齢, 学歴, 職業および収入の分布についての政府統計調査データとの比較対照によって, 本調査協力者の代表性を検討した.その結果, 調査協力者は, 高学歴, ホワイトカラー的職業, 高収入, である可能性が高いことが示唆された.<BR>調査結果から注目される点は, 平日の生活時間配分では, (1) 妻常勤の夫妻の睡眠時間が特に短いこと, (2) 夫の収入労働時間は1日の約半分に達していること, (3) 家事的生活時間には明確に夫妻差 (妻>夫) があり, さらに, 妻の収入労働時間が長いほど妻の家事的時間が減少し夫の時間が増加する傾向 (常勤妻<パート妻<無職妻, 常勤妻の夫>パート妻の夫>無職妻の夫) を確認した.休日では, 収入労働時間以外の時間が平日に比べて全体的に増えるが, 無職妻の家事的生活時間は減り, また, 夫に比べて妻の社会的・文化的生活時間は短くなる傾向にあった.<BR>次に家事的生活時間および社会的・文化的生活時間の行為者比率では, (1) 平日の「食事の準備と後片付け」は, 妻が7割以上であるのに対して夫は4割以下であった, (2) 「テレビ・ラジオ」の時間が夫妻の社会的・文化的生活時間の中で平日, 休日とわず最も長くなっていた, (3) 常勤夫妻の平日の「だんらん」が他の夫妻に比べて低かった, (4) 夫に比べて妻の「読書」の比率が全体的に高かった, (5) 常勤妻の平日の行為者比率は, 全般に, 他の妻に比べて低い, (6) 無職妻の休日の行為者比率は, 全般に, 平白に比べて減少する傾向にあった.<BR>最後に過去3回の調査結果 (1990, 1995, 2000年) を比較してみると, 全体的な傾向として, 平日では収入労働時間が増加し家事時間および睡眠時間が減少し, 休日では社会的・文化的生活時間が増加した.
著者
斎藤 悦子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.62, pp.171, 2010

<B>目的</B> グローバル経済が進展する中,生活を規定する企業活動は持続的成長を図るために様々な方策を実施している.その一つが,企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility: 以下CSRと呼ぶ)である.CSRが及ぶ範囲は,社会的公正性,倫理性,環境,人権と幅広いが,日本のCSRは環境問題に特化され,ステイクホルダーである労働者・消費者・家庭人・地域住民への社会的公正性や倫理性,人権に関する取組みが遅れている.本報告は,現在の生活経営学的課題をCSR視点で捉え直し,日本企業のCSRと生活経営学の今後のあり方を提起する.<BR><B>方法</B> 生活経営学的課題を収入(賃金)と働き方に絞り現状を把握する.CSRガイドラインとして多用されているGRI(Global Reporting Initiative)に含まれる「労働とディーセント・ワーク」指標に照らし,法令遵守としての最低賃金制度とその実態を検討する.<BR><B>結果</B> 雇用形態別労働者数においては非正規労働者の増加,特に男性の非正規労働者の増加が明らかとなり,賃金については男女格差と同時に雇用形態別格差が示された.日本では,多くの企業がCSR=法令遵守として捉えているので,賃金の基本的な法令である最低賃金法から現状を把握し,最低賃金未満の労働者率と法令違反率を示す.さらにGRIの「労働慣行とディーセント・ワーク」指標に照らしながら,日本企業の不足点を明らかにした.それらの改善のためには,多様なステイクホルダーが生活主体として企業と向き合い、CSRに関わる姿勢が重要であり,能動的な生活者視点すなわち生活経営学が果たす役割は大きい.
著者
斎藤 悦子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日本のCSRは、環境問題解決に特化され、ステイクホルダーである生活主体としての労働者・消費者・家庭人・地域住民への社会的公正性や倫理性、人権に関する取組みが遅れている。本研究は、生活主体の立場から、CSRを考察し、社会的公正性、倫理性、人権といった領域に、いかに関わることが可能かを検証した。Grosser & Moon(2006)の研究をもとに、市場、政府、市民社会という3つのアクターと日本のCSRの関係、とりわけ日本では論じられることのなかったCSRと市民社会の在り方を事例研究により明らかにした。
著者
松葉口 玲子 天野 晴子 斎藤 悦子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.207-212, 2004-03-15

2002年に開催されたヨハネスブルグ・サミットで再確認されたように,先進国における「持続可能な消費」の必要性が高まっている.そのなかで本報の目的は,すでにその重要性が指摘されつつある生活時間やジェンダー視点との関連を,「世帯」に着目して分析することである.使用したデータは,2000年に実施した生活時同調査であり,協力者の特徴等についてはすでに報告済みである.主たる結果は次の通りであった.(1)全体的には,1995年調査と同様,妻の方が夫よりも「持続可能な消費」を実践しており,しかもそこには妻の就業形態別の違いすなわち世帯内でのジェンダーのあり方が反映されていた.(2)ライフスタイルの変更の必要性に対する認識と実際の行動との乖離傾向は,特に「妻無職の夫」にみられ,「持続可能な消費活動」自体が性別役割分業化される危険性が明らかになった.(3)同時に,「妻の影響」の大きさが明らかとなり,世帯内における「持続可能な消費」のジェンダー差とともに,その解消の可能性も垣間見られた.(4)「社会的活動/消費者活動」は増加傾向にあった.(5)自家用車の使用法については,先行研究と同様,今後の環境政策に生かされるべきジェンダー差が明らかとなった.
著者
天野 寛子 堀内 かおる 伊藤 セツ 森 ます美 天野 晴子 斎藤 悦子 松葉口 玲子 伊藤 純 水野谷 武志
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.739-745, 1996-08-15
被引用文献数
10

著者らは、1975年, 1980年, 1985年, 1990年の東京における雇用労働者夫妻の生活時間調査にひきつづき, 5回目の調査を1995年10月, 東京都世田谷区在住の子どもと同居している夫妻を対象に実施した. 本稿では目的, 方法, 調査概要を述べる. 本調査の主な目的は, 家事労働のみならず収入労働をも含めてその不払い労働の実態を明らかにすることである. 調査協力者は, 区発行の広報を通じて公募した. 合計162カップルが応募し, 有効回答はそのうち136カップル(272名)であった. (1) 過去の調査と比較して, 夫妻ともに収入労働により多くの時間を費やしていた. (2) 夫の火事労働時間は平均して微増していた. (3) 夫妻ともに生理的生活時間, 社会的・文化的生活時間は短かった.