著者
施 利平
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.2_20-2_33, 2008-10-31 (Released:2009-11-20)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

本稿の目的は,親子関係の出生コーホート間比較を行うことにより,戦後行われてきた二つの双系化仮説—仮説1「直系家族制の解体により,長男との同居パターンが消失すると同時に,親子間の援助における長男と他の子との差異,息子と娘との差異がなくなる」と仮説2「直系家族制の解体により,同居における長男優先のパターンが消失するとともに,抑制されていた娘や妻方親類との援助がより活発に行われるようになる」—を検証し,戦後の親子・親族関係の基本構造と変化のトレンドを明らかにすることである。「戦後日本の家族の歩み」調査(NFRJ-S01)のデータを用いて分析を行ったところ,夫方同居率の低下がみられるものの,長男同居のパターンの存続とともに,妻方援助の存在と顕在化の傾向があることが確認された。今日においても直系家族制と双系的な親類関係が共存していることは,仮説1の反証であるとともに仮説2の修正を要請するものである。
著者
石原 邦雄 松田 苑子 田渕 六郎 平尾 桂子 永井 暁子 西野 理子 施 利平 金 貞任 加藤 彰彦 西村 純子 青柳 涼子
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本、中国、韓国の研究者がそれぞれ自国での家族の総合調査のミクロデータを提供し合い、共同利用する体制を作って比較分析を積み重ねるという新たな試みとなる国際共同研究に取り組み、最終的にChanging Families in Northeast Asia : China, Korea, and Japan. Sophia University Pressという、共同研究者12名の論文を含む出版物の形で成果をまとめた。多彩な分析結果を大きくくくると、(1)人口の少子高齢化と経済社会のグロ-バル化および個人化という同一方向での変化のインパクトのもとで、3カ国の家族が、遅速の差はあれ、共通方向での変化を遂げつつあること、(2)しかし同時に、各国の社会文化的伝統の影響の強弱によって、3カ国の家族の世代間関係と夫婦関係のあり方や変化の仕方に違いが生じていることも併せて明らかにされた。
著者
施 利平
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.57-73,153, 2000-02-29 (Released:2016-11-02)

The aim of this paper is to investigate the communication structure between partners in intercultural marriages, and hence to clarify the effect of communication on the couples' satisfaction. Although communication is one of the most important elements in intercultural marriages, the research on this subject is far from comprehensive. Based on this consideration, a survey was conducted by the author in 1997 and some of the results are presented in this paper. At first, According to the factor analyses, 3 factors have been found: (1) emotional and semantic comprehension; (2) the quantity of conversation;(3)the openness of communication. Secondly,we found that the communication is affected by the ability to express in using the language which is often used between the couple, and the particular language and the culture which he/she belonged to have not the effect on their communication. Finally, we found the couples' marital satisfaction is determined by the quantity of conversation, emotional and semantic comprehension, not by the openness of communication.
著者
山田 昌弘 須長 史生 谷本 奈穂 施 利平 羽渕 一代 土屋 葉
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、現代日本社会での夫婦関係のあり方を分析するために、離婚研究者に対するインタビュー調査、及び、30才から59才までを対象とする質問紙調査を東京と大阪で実施した。質問紙調査では、離婚対象者のみの質問を質問票に組み込むことによって、離婚対象者に対するランダムサンプリングデータを得た。分析による知見は、主に三つにまとめられる。一つは、日本の夫婦関係の現状に関してのものである。日本の夫婦関係において、40年前の調査結果と比較しても、一緒に出かけるなど共同行動は相変わらず低調である。これは、セクシュアリティーに関してもいえる。しかし、共同行動が少なく、セックスレスだからといって、夫婦の関係性が希薄だと結論づけることはできない。日常会話や困ったときに助け合うなど、愛情を直接表現し合うこととは別の形での愛情関係が維持されうることが分かった。次に、恋愛感情と結婚生活における愛情が分離している様相が観察された。意識において、恋愛感情と結婚を別立と意識している傾向が強まることが分かった。行動においても、カップルを壊すことなくカップル外の親密関係を作るケースが相当数いることがわかる。以上のように、近年の離婚急増を、「夫婦の愛情関係が変化した」という点に求めるという仮説は成り立たないように見える。むしろ、離婚や結婚をめぐる環境の変化によってもたらされた可能性が高い。データ分析を行うと、離婚経験者には、配偶者への愛情表現や経済力(女性のみ)への高い期待が見られた。つまり、相手が提供できうる能力以上のものを相手に求めることが離婚につながる大きな原因となっている。愛情表現に関しては、その基準が高まったという仮説も成り立ち、今後の検証にまたねばならない。一方、経済力に関しては、近年の男性の雇用の不安定化によって、男性の経済力が落ちている。離婚相手の経済力に不満があったという女性の割合が高いことによっても裏付けられる。近年の離婚急増の一因は、経済状況の変化によってもたらされたものであり、少子化の原因とも重なるものであると結論できる。