著者
春日 敦子 青柳 康夫
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.309-318, 2005-08-05
被引用文献数
1

干し椎茸の水戻し汁の, 料理への利用の是非を検討する為, 3通りの水戻し方法を試みた。水戻し方法「P」は, 230分水戻しを行った。水戻し方法「Q」は始めに30分間水戻しを行い, その水戻し汁は捨て, 等量の新たな水を加え, 更に200分水戻しを行った。水戻し方法「R」は水戻し時間以外は「Q」と同様の方法であり, 一度目の水戻し時間は90分, 2度目の水戻し時間は140分であった。3通りの水戻し方法にて, 無機質, 遊離アミノ酸, 5'-ヌクレオチド, 有機酸含量の分析, 及び官能検査を行った。これらの結果を基に, 干し椎茸の水戻しは, 水戻し90分後水戻し汁を一旦捨て, 新しい水を加え, 干し椎茸中心部の堅い部分が柔らかくなるまで更に水戻しを継続する, という新しい方法を提案したい。
著者
春日 敦子 荻原 英子 青柳 康夫
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.329-336, 2007-10-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
22

低濃度の食塩水を用いた脱塩は“呼び塩”と言われ,多くの料理本では数の子の塩抜きに塩を用いることを薦めている。塩漬け数の子の脱塩中に,拡散による味成分の溶出のみが数の子の味に影響する要因であるのか,またどのような味成分が影響を及ぼされるかを明らかにするために,数の子を水と食塩水を用いて脱塩し,ナトリウム,カリウム,マグネシウム,遊離アミノ酸,5'-ヌクレオチドの分析を行った。ナトリウム,マグネシウムは,水よりも食塩水を用いた脱塩の方が溶出量は少なかったが,カリウムは食塩濃度とは関係がなかった。脱塩中に浸漬液中の遊離アミノ酸は時間と共に増加し,数の子中の遊離アミノ酸は減少した。水で15時間脱塩した時の,数の子と浸漬液中の総遊離アミノ酸含量の合計は,脱塩前の塩漬け数の子の総遊離アミノ酸含量より1.8 倍多かったが, 3% 食塩水を用いて脱塩した時は全く増加していなかった。さらに, 水で15 時間脱塩した時の数の子中の総遊離アミノ酸含量は, 3% 食塩水を用いて脱塩したときより2倍多かった。これらの遊離アミノ酸の中では, 味が苦いと言われる疎水性アミノ酸が70% 占めていた。これらの,結果は,遊離アミノ酸が水を用いた脱塩中にプロテアーゼによって生成されたことを示唆している。
著者
春日 敦子 荻原 英子 青柳 康夫
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.329-336, 2007-10-20

低濃度の食塩水を用いた脱塩は"呼び塩"と言われ,多くの料理本では数の子の塩抜きに塩を用いることを薦めている。塩漬け数の子の脱塩中に,拡散による味成分の溶出のみが数の子の味に影響する要因であるのか,またどのような味成分が影響を及ぼされるかを明らかにするために,数の子を水と食塩水を用いて脱塩し,ナトリウム,カリウム,マグネシウム,遊離アミノ酸,5'-ヌクレオチドの分析を行った。ナトリウム,マグネシウムは,水よりも食塩水を用いた脱塩の方が溶出量は少なかったが,カリウムは食塩濃度とは関係がなかった。脱塩中に浸漬液中の遊離アミノ酸は時間と共に増加し,数の子中の遊離アミノ酸は減少した。水で15時間脱塩した時の,数の子と浸漬液中の総遊離アミノ酸含量の合計は,脱塩前の塩漬け数の子の総遊離アミノ酸含量より1.8倍多かったが,3%食塩水を用いて脱塩した時は全く増加していなかった。さらに,水で15時間脱塩した時の数の子中の総遊離アミノ酸含量は,3%食塩水を用いて脱塩したときより2倍多かった。これらの遊離アミノ酸の中では,味が苦いと言われる疎水性アミノ酸が70%占めていた。これらの結果は,遊離アミノ酸が水を用いた脱塩中にプロテアーゼによって生成されたことを示唆している。
著者
春日 敦子 青柳 康夫
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.229-235, 2011-06-15

大豆の浸漬水温の違いによる吸水時間と吸水量の関係を明らかにし,浸漬水温,浸漬時間,加熱時の昇温速度がイソフラボン含量に及ぼす影響を検討した.<BR>(1)平衡吸水量に到達するまでの時間は水温が60℃ではおよそ2時間,40℃では6時間,20℃では17時間であり,5℃では24時間の浸漬でも吸水量が平衡に到達しなかった.<BR>(2)浸漬水温がイソフラボン組成に与える影響は,浸漬時間が12時間では,5, 20, 30℃では浸漬によるイソフラボン組成の変化は浸漬前と比較してほとんど認められなかったが,40℃ではマロニル化配糖体が13%減少しアグリコンが僅かに増加,60℃ではマロニル化配糖体が54%減少し,アグリコンのダイゼインは10倍,ゲニステインは12倍に増加した.さらに60℃ではアグリコンの生成以外に,グリコシド配糖体であるダイジンとゲニスチンが浸漬前と比較してそれぞれ2.5倍に増加した.浸漬時間が24時間と長くなると,さらに前述の増減が著しくなった.<BR>(3)60℃ 1時間加熱と昇温2℃/minのイソフラボン組成は,加熱前と比較してマロニル化配糖体が僅かに減少し,その分アグリコンが増加していた.一方昇温速度が9℃/minと30℃/minは,マロニル化配糖体が加熱前と比較して昇温9℃/minでは38%減少,昇温30℃/minでは40%減少し,グルコシド配糖体はいずれも加熱前の2倍に増加した.<BR>以上のことより,「低温で充分吸水後に,60℃程度の低温加熱を保持」することでアグリコンを多く生成させることが可能となる.さらに「昇温速度を速くする」加熱がマロニル化配糖体を少なくする方法と思われる.
著者
春日 敦子 青柳 康夫
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.309-318, 2005-08
被引用文献数
1

干し椎茸の水戻し汁の, 料理への利用の是非を検討する為, 3通りの水戻し方法を試みた。水戻し方法「P」は, 230分水戻しを行った。水戻し方法「Q」は始めに30分間水戻しを行い, その水戻し汁は捨て, 等量の新たな水を加え, 更に200分水戻しを行った。水戻し方法「R」は水戻し時間以外は「Q」と同様の方法であり, 一度目の水戻し時間は90分, 2度目の水戻し時間は140分であった。3通りの水戻し方法にて, 無機質, 遊離アミノ酸, 5'-ヌクレオチド, 有機酸含量の分析, 及び官能検査を行った。これらの結果を基に, 干し椎茸の水戻しは, 水戻し90分後水戻し汁を一旦捨て, 新しい水を加え, 干し椎茸中心部の堅い部分が柔らかくなるまで更に水戻しを継続する, という新しい方法を提案したい。
著者
春日 敦子 藤原 しのぶ 菅原 龍幸 青柳 康夫
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.201-206, 1996-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
30
被引用文献数
1

In Shiitake mushroom (Lentinus edodes),5′-nucleotides, especially 5′-GMP, are major umami components.5′-Nucleotides are degraded products by ribonuclease (RNase) from RNA and moreover they degrade into nucleosides by phosphomonoesterase (PMase). In this process, RNase is more stable on heating than PMase and consequently 5′-nucleotides accumulates.Taking this property into account, we studied on the effect of various heat processing and damaging of tissues on 5′-nucleotide contents of Shiitake mushroom. The following results were obtained.1. In various heat processing tests, the heating from water to boiling or by a 100W electronic oven accumulated the more amount of 5′-nucleotide than that by putting in boiling water or a 500W electronic oven.2. Heating from water to boiling after damaging the tissues of Shiitake mushroom, especially damaging by freezing led to the increase of 5′-nucleotides.3. According to the defrosting methods, the amounts of 5′-nucleotides in frozen Shiitake mushroom, when heated from water to boiling, increased in the order of defrosting in a refrigerator, without defrosting and defrosting in an electronic oven.4. Though the amounts of 5′-AMP,5′-UMP and 5′-CMP in frozen Shiitake mushroom seemed to decrease slightly when heated after defrosting in a refrigerator or an electronic oven after storage at -40°C, RNA and 5′-GMP were constant in any way.
著者
藤原 しのぶ 春日 敦子 菅原 龍幸 青柳 康夫
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.34-37, 1996-03-31 (Released:2011-01-31)
参考文献数
11
被引用文献数
1

野生および栽培キノコ13種20試料についてアミノ酸組成分析を行った. 全体的な傾向として, 含硫アミノ酸, トリプトファン, ヒスチジンは低含量, グルタミソ酸は高含量であった. また, ヒラタケ, コウタケ, サクラシメジはアミノ酸量が多く, ナラタケ, ハナイグチ, ムキタケは少なかった. コウタケを除く12種のキノコの第一制限アミノ酸は, 含硫アミノ酸であった. コウタケの第一制限アミノ酸はロイシソであった.第二制限アミノ酸は, ホンシメジを除くすべてのキノコでロイシソあるいはリジソであった.アミノ酸スコアはムキタケの33.7からコウタケの86.7の範囲であったが, 全体的に低い傾向にあった. また, 1985年 (学齢期前2-5歳) の評点パタソと比較した場合の第一制限アミノ酸は, エノキタケではロイシソ, シイタケ, ニオウシメジ, ハナイグチ, ムキタケでは含硫アミノ酸, その他のキノコではリジンであった. この場合のアミノ酸スコアはサクラシメジの39.9からコウタケの84.6となった.
著者
春日 敦子 藤原 しのぶ 菅原 龍幸 青柳 康夫
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.201-206, 1996-08-20
参考文献数
30
被引用文献数
1

椎茸の旨味成分の一つである5'-ヌクレオチドは一連の酸素反応により、RNAから生成され、無味のヌクレオシドに分解される。この過程に於いて、昇温速度の違いが5'-ヌクレオチドの生成に影響を及ぼすことは既に報告されている。そこで、実際に家庭で調理を行う場合を想定し、熱付加の様相や組織の損傷方法を変えた時の、5'-ヌクレオチドの蓄積量について検討した。熱付加方法の違いでは、昇温が短時間である沸騰した湯で加熱や500Wのような高出力電子レンジ加熱の場合。5'-ヌクレオチド増加量は少なく、出力の小さい100Wレンジ加熱や水から加熱した場合は多く蓄積された。また、組織に損傷を与えると、自己消化能は高まり5'-ヌクレオチドは増加するが、包丁の柄で叩くより組織の損傷の度合が大きいと考えられる。一晩冷凍し組織を損傷させてから加熱した方が5'-ヌクレオチドは多く蓄積された。また、冷凍後の解凍操作として、冷蔵庫内自然解凍、電子レンジ解凍、解凍なしの3通りについて水から加熱し、5'-ヌクレオチド含量を比較検討したところ、冷蔵庫内自然解凍は蓄積が少なく、解凍なし、電子レンジ解凍の順に増加した。また、試料を-40℃ブリーザーに保存し、経時的に冷蔵庫内自然解凍、電子レンジ解凍し、それぞれ水から加熱したときと加熱操作を行なわない場合のRNAと5'-ヌクレオチドを測定した。冷蔵庫内冷凍又は電子レンジ解凍し加熱した場合、5'-RNA、5'-UMP、5'-CMPは30日以降若干減少している傾向にあったが、5'-GMP、RNAはいずれの場合もほとんど変化が認められなかった。
著者
藤原 しのぶ 春日 敦子 菅原 龍幸 橋本 浩一 清水 豊 中沢 武 青柳 康夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.191-196, 2000-03-15
参考文献数
18
被引用文献数
2 4

栄養添加物の混合割合を変えることにより段階的に窒素量の異なる菌床培地を設定し,培地窒素量と子実体中の窒素量との関係について検討した.<br>菌床培地とそれぞれの培地から発生した子実体の全窒素量との間には強い相関が認められた(p<0.001).窒素量の多い菌床培地から発生する子実体ほど窒素含有量が高くなるという相関関係が,同一の栽培方法と種菌を用いて得られたシイタケについて確認された.<br>シイタケ子実体に含まれる主要な窒素含有成分(総アミノ酸,遊離アミノ酸,核酸,キチン)中の窒素量は,全て培地の窒素量と有意な相関が認められた.特に培地窒素量との相関性が高かったのは総アミノ酸と遊離アミノ酸であった.また,レンチニン酸含有量と培地窒素量との間には明確な関係は認められず,むしろ栄養添加物の種類によって含有量に差が認められた.<br>栄養添加物の種類や混合割合などの菌床培地の組成を変える試みは,現在のところ収穫量の増加を主な目的としているが,発生する子実体の質も制御できる可能性が示唆された.