著者
景山 佳代子
出版者
神戸女学院大学
雑誌
女性学評論 (ISSN:09136630)
巻号頁・発行日
no.28, pp.1-25, 2014-03

本研究では、2013年5月13日の橋本徹大阪市長の慰安婦発言を研究することで、その語りがいかに私たちが当たり前にしている性の実践と結びついているかを明らかにする。橋本氏のツイッターでのコメントおよび記者会見での発言のテキストを、KH Coder と呼ばれるコーディングプログラムを使って分析し、慰安婦問題という文脈での橋本氏の語りの特徴を明らかにした。彼は世界の軍隊も、性の対象として女性を利用したという点では、日本と同じ加害者であると指摘した。それは日本の韓国慰安婦に対する責任を曖昧にする(不可視化していく)語りとなっていた。重要なのは、彼のこうした語りが決して特殊なものではなく、私たち日常の語りと地続きのものであるということだ。性的な問題の社会的要因を不問にし、その問題の主体が誰かを見えなくする。橋本氏の「慰安婦」「風俗」という問題の論じ方からは、そんな自明とされる性の見えない構造が浮かび上がってくる。The purpose of this paper is to study the discourse of Osaka Mayor Toru Hashimoto's comments about WWWII `comfort women', to examine how his explanation of Japan's `comfort women' is related to invisible sexual practices in our day-to-day life. Using the textual data of Hashimoto's twitter comments and the records of his press conferences and through analysis using the computer coding program KH Coder, we found that he pointed to the responsibility of other nations' militaries as sexual assailants of women during wartime by using the concept of `women's human rights'. On the other hand, he didn't apply this universal standard to Japan's actions toward the Korean comfort women. As a result, the debate about `comfort women'shifts the responsibility from Japan's military to others, including Japan, and Japan's responsibility becomes vague. Here the important thing is that his rhetoric is not unique and is taken for granted by a certain type of people. His discourse on comfort women is based on our daily communication, which does not focus on the subjectivity and social factors of sexual problems in Japanese society. In this paper, we further our understanding of how we identify invisible structures that exist as part of our common sense from visible discourse.
著者
景山 佳代子
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
no.61, pp.107-120, 2002-07-31

In this paper, I investigate how the Japanese weekly Asahi Geino generated sei-fuzoku (popular attitudes toward sexual behavior). I conducted interviews with Asahi Geino editors, then analyzed the data I obtained with the KT2 software system. From the results, I conclude that sei-fuzoku exist in a fantastic binomial context (G. Rodari) made up of two heterogeneous elements: one a sexual element that loses its inherent meaning in people's memories, the other a non-sexual element that is stable in meaning. New combinations of these elements are produced by, and themselves produce, new sei-fuzoku.
著者
景山 佳代子 Kayoko KAGEYAMA
出版者
神戸女学院大学研究所
雑誌
神戸女学院大学論集 = Kobe College studies (ISSN:03891658)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.11-18, 2017-06

この研究ノートは、大阪府西南部地域にある忠岡町の外国人居住者に対する日本語教育の取り組みについての調査の経過報告である。在留外国人に対する日本語支援の取り組みは決して十分と言えるものではなく、多くはボランティアを中心に実施されている。このような現状にあって、日本在住の非日本語母語話者にとって日本語教室がどのような場所として機能しているのか、また彼らが暮らす地域住民、地方自治体との関係性とはどのようなものなのかを明らかにするために本調査は実施された。調査地とした忠岡町の人口は1万8千人ほどだが、在留外国人の割合は大阪府下でも3番目に高く、とくにインドネシア、ブラジルなどの出身者が多い地域となっている。調査は2013年8月から、主に月2回の日曜日に開催される忠岡町の日本語教室を対象に行っている。参加者の出身地はインドネシアやベトナム、タイ、中国、ブラジルなどで、その多くは技能実習生として来日した者である。ボランティアの日本語指導員は、たった一人でこの教室の運営をしているが、日本語学習だけでなく学習者同士の交流や地域行事への参加の機会を用意してもいる。日本語教室の参与観察として日本語指導員へのインタビューなどから、忠岡町の日本語教室が学習者にとってどのような場所として機能しているのか、その調査の経過を報告する。The purpose of these research notes is to report on ongoing research of Japanese -language education for foreign residents in Tadaoka town, located in the Senboku Region of Osaka Prefecture. The ratio of foreigners in Tadaoka is the third highest in Osaka. Many of them come from East Asian countries(such as Indonesia and Vietnam), and live in Tadaoka as foreign trainees and technical interns. Our data is based on fieldwork conducted in Tadaoka NIHONGO KYOUSHITSU(日本語教室)and an interview with a Japanese language volunteer instructor. We found that they can learn Japanese and participate in community events through this class. Further reserch is needed to consider relations between foreigners and local residents.
著者
景山 佳代子 Kayoko KAGEYAMA
雑誌
論集 = KOBE COLLEGE STUDIES
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.11-18, 2017-06-20

この研究ノートは、大阪府西南部地域にある忠岡町の外国人居住者に対する日本語教育の取り組みについての調査の経過報告である。在留外国人に対する日本語支援の取り組みは決して十分と言えるものではなく、多くはボランティアを中心に実施されている。このような現状にあって、日本在住の非日本語母語話者にとって日本語教室がどのような場所として機能しているのか、また彼らが暮らす地域住民、地方自治体との関係性とはどのようなものなのかを明らかにするために本調査は実施された。調査地とした忠岡町の人口は1万8千人ほどだが、在留外国人の割合は大阪府下でも3番目に高く、とくにインドネシア、ブラジルなどの出身者が多い地域となっている。調査は2013年8月から、主に月2回の日曜日に開催される忠岡町の日本語教室を対象に行っている。参加者の出身地はインドネシアやベトナム、タイ、中国、ブラジルなどで、その多くは技能実習生として来日した者である。ボランティアの日本語指導員は、たった一人でこの教室の運営をしているが、日本語学習だけでなく学習者同士の交流や地域行事への参加の機会を用意してもいる。日本語教室の参与観察として日本語指導員へのインタビューなどから、忠岡町の日本語教室が学習者にとってどのような場所として機能しているのか、その調査の経過を報告する。