著者
木村 和子 奥村 順子 本間 隆之 大澤 隆志 荒木 理沙 谷本 剛
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.459-472, 2008 (Released:2010-05-26)
参考文献数
19
被引用文献数
2 5

目的:インターネット上の輸入代行業者を介して個人輸入した医薬品の保健衛生上の問題を明らかにする。方法:輸入代行業者のウェブサイトで頻出する未承認医薬品を個人輸入し,製品外観,真正性,合法性,有効成分含量,サイト,取引実態を調査・分析した。結果:PROZAC®とその後発品,POSTINOR®並びにNootropil®/Nootropyl®とその後発品計166サンプルを入手した。同じ商品名でも製造販売国,包装単位,製剤,流通経路は多様であった。「PROZAC」4サンプルが無許可製造品,Piracetam1サンプルが製造販売国で不許可品だった。含有量は表示量の85-118%。製造販売国で処方せん医薬品であっても,処方せん要求はなかった。添付文書は主に先発品119サンプル(72%)に同封され,英語,フランス語,スペイン語,中国語,タイ語だった。先発品の33%に記載者不明の日本語説明書があった。サイトには未承認薬の商品名や効能効果が記載され,国内発送もあり触法性が疑われた。代行業者によって価格に10倍開きがあり,配送に10日以上かかるものや不着もあった。考察:未承認薬は日本人の使用について未評価の上,処方せん薬を素人判断で使用するのは危険を伴う。流通は不透明で無許可製造品,不許可品も混在した。医薬品の発送者の国際的監視が必要である。消費者は安全性の観点から個人輸入を差控えるべきである。
著者
杉本 和隆 高西 優子 今井 光信 木村 和子
出版者
日本エイズ学会
雑誌
日本エイズ学会誌 (ISSN:13449478)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.23-30, 2005

目的: 日本は他の先進諸国に比べ推定国民HIV感染率が低いにも関わらず, 献血のHIV陽性検体出現率は高い. そこで, 諸外国の献血者選定方法, 特にHIV感染リスクを有する者の献血を防止する手法を調査し, 我が国の血液安全対策に資する.<BR>対象及び方法: ベルギー, スイス, 英国, スウェーデン及びカナダの血液サービスを対象に, 文献, 調査書送付及び訪問面接により調査した.<BR>結果: 各国とも無償かっ自発的な献血によって血液を収集している.<BR>対象国に共通して見られた血液の安全性確保の方策は, 次のとおりである: 献血時のHIV/AIDS教育, 教育内容の理解の確認, 証明書による本人確認と献血者情報の管理, 問診表と署名の活用, 面接研修を受けたスタッフによる面接と責任, 並びに献血後の血液使用辞退の申し出の勧奨. 初回献血前に血液センターへのコンタクトを求め, 事前教育や事前検査を行っている国もあった. また, HIV検査を一般の医療機関で受けられ, 医療保険が適用される. 特に, 初回面接を念入りに行っており, 感染リスク行為が献血希望者に具体的に提示されることが, 高い教育効果を上げると思われた.<BR>結論: 対象国では献血希望者に対するHIV/AIDS教育と理解の確認が徹底されている. また, 登録時の本人確認, 面接官の訓練と責任による慎重な面接及び一般のHIV検査の利用しやすさが, 感染リスク保持者の献血の減少に寄与しているものと思われた.
著者
木村 和子 谷本 剛 坪井 宏仁 吉田 直子
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、カウンターフィットドラッグ(偽造薬)について、グローバル化の現状を発展途上国(カンボジア)側から検証した。その結果、先進国と発展途上国における偽造ターゲットは同じだが、実際の偽造薬の発生は、具体的製品、地域とも当該国の流通状況を反映していた。また、発展途上国では、品質不良医薬品の蔓延が非常に深刻であり、製造・流通環境の改善が喫緊であることが明示された。
著者
成橋 和正 野村 政明 亀井 浩行 小野 俊介 松下 良 清水 栄 横川 弘一 山田 清文 鈴木 永雄 宮本 謙一 木村 和子
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.123, no.11, pp.973-980, 2003-11-01
被引用文献数
13 16

従来の薬学教育における臨床教育の不足から,多くの薬学系大学院博士前期課程(修士課程)に薬剤師免許取得後の大学院生を対象とした臨床系の専攻やコースが設立されてきている.金沢大学でも,薬学研究科(現:自然科学研究科)に臨床薬学教育を主眼に置いた医療薬学専攻が平成8年に設立され,国立大学としては早期であった.本学医療薬学専攻では,薬剤師免許取得者を対象とし,臨床現場で指導的役割を果たす高度な薬剤師の養成および次世代の医療薬学教育研究に携わる人材の育成を教育理念としている.このため,医療薬学専攻の学生に対して医療現場の実習を通じて医療を担うものとしての自覚を深めさせるとともに,自然科学の素養を身に付けることを求めている.具体的な教育目標は,医療人としての倫理観の醸成,医療の専門家として健康と疾病に関する知識獲得,薬物治療に起因する問題の同定・評価・解決,ならびに,コミュニケーションに関する知識・技術の習得,さらには,関連分野における高い研究・開発能力を発展させることである.このため,発足当初は,入学初期の集中講義,1か月の市内保険薬局での薬局実習,6か月の本学医学部附属病院薬剤部での実務実習を行い,1年間を課題研究期間としていた.講義は学部教育に引き続き,基礎自然科学系科目が大半であり,臨床現場での実習との非関連性が学生からも指摘されていた.また,半年間の実習後に修士の学位論文の一部として病院実務実習篇の作成や口頭発表が要求されていたために,実質的な実務実習は,時間的に極めて限られていた.実務実習を終えたあとの課題研究は,医療薬学専攻ならびに生命薬学専攻に属する各研究室で行っていたことから,必ずしも臨床に近いものではなかった.さらに,学生が就職するのは実習終了後1年を経過した後であり,就職直前の学生から実務に対する不安がでたり,就職直後に修了生や雇用者から実習経験が薬剤師として十分に活かせていないとの声が聞かれた.このような問題点を踏まえて,平成13年度に医療薬学専攻のカリキュラムの改善を図った.医療薬学に対する幅広い知識を深めさせるため,臨床系講義科目を充実させた.この変更では,薬物治療の科学的基礎とともに,看護,倫理,心理,国際など,医療に関連する人文・社会系分野も開講し,受講する学生の講義科目数が増加した.また,実習に関しては,継続性や充実性を考慮し,実務実習期間を1年に延長した.最初の2か月間は薬剤師業務全般の集中的な導入実習として,6人ずつ4グループに分かれ,調剤部門(一般調剤・注射薬調剤,2週間),製剤部門(一般製剤・無菌調剤,1週間),薬剤管理指導部門(医薬品情報・医薬品管理・TDM,1週間:病棟業務,4週間)を行う.その後は学生1人に対し指導薬剤師1人というマンツーマン形式の個別指導とし,薬剤師職能の病棟の薬剤管理指導を中心の実習としている.これに対し,医療薬学専攻の各教官も3名程度の学生を担当し,面接などにより実習の進捗状況を把握するとともに,専門分野に応じた指導も担当している.しかしながら,実習(実務)の大部分は指導薬剤師により行われており,個別指導であるため学生全体としての質の評価や,問題点の抽出は行いにくい.そこで,この新カリキュラムによる講義の理解度や実習の達成度について,visual analog scale(VAS)を用いて,学生と指導薬剤師による評価を試みた.また,この評価結果から,新カリキュラムの問題点などについて考察することとした.