- 著者
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杉本 厚典
- 出版者
- 大阪歴史博物館
- 雑誌
- 大阪歴史博物館研究紀要 (ISSN:13478443)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, pp.33-64, 2018 (Released:2021-04-01)
大阪の金属及び器具・車両・船舶工業の分布を明治後期の「大阪市商工業者資産録」及び大正期の『工場通覧』・『大阪市商工名鑑』で探り、三つのモデルを描き出した。一つ目が鋳造・金属吹き分け業、鍛冶、古金商に見られる東西ベルト型。臨海部から船場、上町台地へ東西方向に分布する。二つ目は造船・造船関連産業の臨海型。木津川と安治川の合流地点、大阪鉄工所、藤永田造船所で形成される三角地帯に、造船を核として、汽罐、船具などの産業が密集し、複合的な工業・商業地帯を形成していた。三つ目は都市周辺型。錫・アルミニウム・琺瑯産業、自転車製造、人力車製造、洋傘製造、魔法瓶製造がこの類型に該当する。これらの産業は人口密集度の高い市街地の外側に工場地域が形成され、都市外縁部から都心へ移行するにつれて、工場のみの状況から、工場と卸・小売といった流通も兼ね備えた業態へと推移していた。そして東西ベルト型が近世以降金属工業の盛んな地域に成立したのに対して、臨海型と都市周辺型が近代に現れる産業分布の類型と考えた。