著者
杉本 厚典
出版者
大阪歴史博物館
雑誌
大阪歴史博物館研究紀要 (ISSN:13478443)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.19-42, 2023 (Released:2023-06-03)

江戸時代から明治時代の『買物案内記』をもとに、菓子店の分布とその変化について検討した。その結果、安永期(18世紀後葉)の菓子店の分布が北船場に偏るが、文政期~明治期(19世紀)にかけて市中一円に分布するように変化することを示した。その背景として安永期までの菓子店が得意先を富裕層の多い北船場に求めたのに対し、文政期以降、砂糖の供給量が増加するにつれて、金米糖、砂糖漬け等、菓子が普及し、富裕層以外へも菓子の消費者層が拡大したことによって、大坂の町中に菓子店が拡がったと推測した。
著者
南 秀雄 趙 哲済 杉本 厚典
出版者
一般財団法人大阪市文化財協会
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

淀川・大和川河口の低地に位置する大阪では、洪水対策なくして都市の形成・拡大はありえなかった。本研究では、大阪市内で増えてきた堤防跡などの関連遺構の発掘成果を活かし、急速に進んできた古地形復元とあわせ、考古学・地質学・堆積学・河川工学の協働により、都市大阪における5世紀から17世紀の治水・水防遺構の実態と機能を明らかにする。また、それらが基盤となってどのように街づくりや街の形態が規定され、次代に受け継がれていったのかを通時代的に究明することを目指す。
著者
杉本 厚典
出版者
大阪歴史博物館
雑誌
大阪歴史博物館研究紀要 (ISSN:13478443)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.33-64, 2018 (Released:2021-04-01)

大阪の金属及び器具・車両・船舶工業の分布を明治後期の「大阪市商工業者資産録」及び大正期の『工場通覧』・『大阪市商工名鑑』で探り、三つのモデルを描き出した。一つ目が鋳造・金属吹き分け業、鍛冶、古金商に見られる東西ベルト型。臨海部から船場、上町台地へ東西方向に分布する。二つ目は造船・造船関連産業の臨海型。木津川と安治川の合流地点、大阪鉄工所、藤永田造船所で形成される三角地帯に、造船を核として、汽罐、船具などの産業が密集し、複合的な工業・商業地帯を形成していた。三つ目は都市周辺型。錫・アルミニウム・琺瑯産業、自転車製造、人力車製造、洋傘製造、魔法瓶製造がこの類型に該当する。これらの産業は人口密集度の高い市街地の外側に工場地域が形成され、都市外縁部から都心へ移行するにつれて、工場のみの状況から、工場と卸・小売といった流通も兼ね備えた業態へと推移していた。そして東西ベルト型が近世以降金属工業の盛んな地域に成立したのに対して、臨海型と都市周辺型が近代に現れる産業分布の類型と考えた。
著者
脇田 修 田中 清美 趙 哲済 南 秀雄 平田 洋司 市川 創 小倉 徹也 高橋 工 杉本 厚典 京嶋 覚 積山 洋 松本 百合子 黒田 慶一 寺井 誠 松尾 信裕 大澤 研一 豆谷 浩之 村元 健一 古市 晃 佐藤 隆 松田 順一郎 辻本 裕也 嶋谷 和彦
出版者
公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

大阪上町台地とその周辺を対象に、古環境復元と関連させ、誕生・成長・再生をくりかえす大阪の、各時代の都市形成と都市計画の実態を探求した。古環境復元では、膨大な発掘資料・文献史料などを地理情報システムに取りこんで活用し、従来にない実証的な古地理図などを作成した。その結果、自然環境が、都市計画やインフラの整備と強い関連があること、難波京をはじめ、前代の都市計画が後代に利用され重畳していくようすなどが明らかになった。本共同研究により、より実証的な大阪の都市史を描く基盤ができたと考える。