著者
寺井 誠
出版者
大阪歴史博物館
雑誌
大阪歴史博物館研究紀要 (ISSN:13478443)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.17-36, 2021 (Released:2022-02-26)

本稿は、土器製作の際に用いられる木製有文当て具について、日本列島と朝鮮半島の当て具の出土事例や土器の内面に残る当て具痕跡の観察を通じて、共通点・相違点を明示し、将来的に当て具痕跡を基にした交流の研究につなげるための基礎的研究である。その結果、日本列島のものはほとんどの場合が同心円文で、木目の影響を受けなくとも同心円文を踏襲するが、朝鮮半島については木目とは関係なく、平行文や格子文が刻まれ、当て具文様についての基礎的な認識が異なる可能性があることを確認することができた。また、北部九州や北陸地方などで見られる同心円文以外の当て具(平行文など)については、朝鮮半島の影響を受けた可能性があると考えた。
著者
寺井 誠
出版者
公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、大阪市立東洋陶磁美術
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、5~6世紀の新羅・加耶に特徴的な考古資料(鉄鐸・角杯など)や習俗(鍛冶具副葬など)を基に、日本列島での新羅・加耶系渡来文化の受容のあり方について検討し、以下を明らかにした。1)新羅の文化要素の中には、新羅の中心地ではなく周辺地域のものが伝わっている。2)新羅・加耶系の渡来文化は、畿内ではなく、北部九州や岡山、北陸など地方で多く見られる。3)6世紀後葉から7世紀の北部九州では、大規模開発に慶尚南道西部の旧加耶地域の集団が関わっている可能性がある。以上の成果から、畿内の影響を受けずに地方が独自の対外交渉を行っていたことを確認することができた。
著者
脇田 修 田中 清美 趙 哲済 南 秀雄 平田 洋司 市川 創 小倉 徹也 高橋 工 杉本 厚典 京嶋 覚 積山 洋 松本 百合子 黒田 慶一 寺井 誠 松尾 信裕 大澤 研一 豆谷 浩之 村元 健一 古市 晃 佐藤 隆 松田 順一郎 辻本 裕也 嶋谷 和彦
出版者
公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

大阪上町台地とその周辺を対象に、古環境復元と関連させ、誕生・成長・再生をくりかえす大阪の、各時代の都市形成と都市計画の実態を探求した。古環境復元では、膨大な発掘資料・文献史料などを地理情報システムに取りこんで活用し、従来にない実証的な古地理図などを作成した。その結果、自然環境が、都市計画やインフラの整備と強い関連があること、難波京をはじめ、前代の都市計画が後代に利用され重畳していくようすなどが明らかになった。本共同研究により、より実証的な大阪の都市史を描く基盤ができたと考える。
著者
寺井 誠
出版者
(財)大阪市文化財協会
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度は2回(計10日)の韓国での資料調査と、8回(計16日)の国内資料調査を行った。韓国での資料調査では日本に搬入例の多い全羅道に重点を置いた。この結果、甑や鍋などでも全羅道と慶尚道の違いを把握することができ、今後日本の出土例にも適用できる見通しができた。また、京畿道の遺跡で出土している楽浪系土器についても実見する機会を得た。ロクロを用いている点は楽浪土城のものと共通するが、格子タタキが採用されているなど、異なる点も多い。今後、日本で出土している楽浪系土器についても楽浪郡以外の土器か否かは注意しなければならない。国内調査では壱岐・福岡市・香川県・愛媛県・島根県・神戸市の資料を調査した。特に、これまでも注意していた模倣・折衷土器の情報収集に力を入れ、在来土器に朝鮮半島的要素である格子タタキや耳が加わった土器などを重点的に調査した。その結果、島根県出雲市の中野清水遺跡で全羅・忠清道タイプの両耳付短頸壺を模倣した土器が明らかになり、この種の壺の模倣・折衷例が北部九州に限らないことが明らかになった。なお、日本出土の両耳付短頸壺については6世紀までのものも含めて朝鮮半島からの搬入例や日本での模倣・折衷例について集成し、検討を加えた。さらに、国内での資料調査や報告書による情報収集によって、古墳出現前後の朝鮮半島系土器についてのデータベースを作成した。この作業を通じて、全体的には全羅・忠清道系の土器が多いものの、対馬・壱岐には慶尚道の土器も比較的多いことがはっきりした。また、全羅・忠清道系の土器は日本で楽浪土器が減少し始める古墳時代初頭以降に増加することも明らかになった。今後これらのデータについて研究発表を通じて公表し、学界に寄与したいと考える。なお、本課題研究の成果の一部は、大阪府立弥生文化博物館の平成16年秋季特別展『大和王権と渡来人 三・四世紀の倭人社会』に展示協力することによって、還元することができた。
著者
武末 純一 桃崎 祐輔 松木 武彦 橋本 博文 坂 靖 亀田 修一 高久 健二 重藤 輝行 山本 孝文 田中 清美 七田 忠昭 禰宜田 佳男 角田 徳幸 梅木 謙一 庄田 慎矢 浜田 晋介 寺井 誠 李 健茂 安 在晧 池 賢柄 李 弘鍾 朴 升圭 権 五栄 李 盛周 金 武重 金 昌億 宋 満栄 李 暎徹 李 東煕 河 眞鎬 金 権中 金 奎正 李 宗哲 朴 栄九 李 亨源 鄭 一 朴 泰洪 兪 炳〓 孔 敏奎 河 承哲 尹 昊弼 李 基星 裴 徳煥 李 昌煕 千 羨幸
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

この研究では、日本と韓国の弥生・古墳時代集落研究を、集落構造論の立場から検討し、最終報告書(650頁)を発刊した。日韓の環溝集落の様相や海村の様相、日韓それぞれの地域の国際交流港での渡来人集落が明らかになった。日韓の首長層居宅の比較や、日本人による韓国の集落分析、韓国人による日本の集落分析もなされた。そのほか、日韓の金属器生産遺跡や馬飼集団の集落も解明できた。全体として日韓の集落研究者の絆を深め、両地域の弥生・古墳時代集落研究を活性化できた。