著者
林 芳弘 神田 猛
出版者
宮崎大学農学部
雑誌
宮崎大学農学部研究報告 (ISSN:05446066)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.21-28, 2014-03-22

The density of planktonic copepods in the Shimanto estuary was determined. Copepods belonging to blackish calanoid species such as Sinocalanus tenellus, Pseudodiaptomus inopinus, and Acarita tsuensis were collected at near the bottom in water depth of 0.5 m area during low tide in November 2008 and in May, June, and July 2009. The densities of copepods in the creek (range, 0.52 ± 0.90 individuals/L in November to 75.75 ± 68.97 individuals/L in May) were always higher than those of stations along the main stream near the estuary (less than 0.03 ± 0.03 individuals/L during all collection months, except May). The high densities of copepods in the creek may be attributable to the slow water flow in the creek. Copepod densities during the season with high water temperature were higher than those during the other seasons because of the suitable reproductive environment and optimal water temperatures of the estuary.2008年11月, 2009年1月, 5月, 7月に, 四万十川河口域の本流と測流で, 水深0.5 mの水域に出現する浮遊性カイアシ類を調べたところ, 主に汽水性のカラヌス目である Sinocalanus tenellus, Pseudodiaptomus inopinus, Acartia tsuensis の3種を確認した. 側流におけるカイアシ類の平均密度は0.52±0.90個体/L(平均値±標準偏差, 11月)~75.75±68.97個体/L(5月) だった. 本流では, 5月を除くと11月の0.03±0.03個体/Lが最高だった. 従って, カイアシ類の密度は本流よりも側流の方が高いと言えた. 側流は, 本流より水流が弱いために, カイアシ類が高い密度で出現すると考えられる. また, 夏季には, カイアシ類の繁殖に好適な水温となることから, 特に密度が高くなると考えられる.
著者
林 芳弘 神田 猛
出版者
宮崎大学農学部
雑誌
宮崎大学農学部研究報告 = Bulletin of the Faculty of Agriculture, University of Miyazaki (ISSN:05446066)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.21-28, 2014-03

2008年11月,2009年1月,5月,7月に,四万十川河口域の本流と測流で,水深0.5mの水域に出現する浮遊性カイアシ類を調べたところ,主に汽水性のカラヌス目であるSinocalanus tenellus,Pseudodiaptomus inopinus,Acartia tsuensisの3種を確認した。側流におけるカイアシ類の平均密度は0.52±0.90個体/L(平均値±標準偏差,11月)~75.75±68.97個体/L(5月)だった。本流では,5月を除くと11月の0.03±0.03個体/Lが最高だった。従って,カイアシ類の密度は本流よりも側流の方が高いと言えた。側流は,本流より水流が弱いために,カイアシ類が高い密度で出現すると考えられる。また,夏季には,カイアシ類の繁殖に好適な水温となることから,特に密度が高くなると考えられる。
著者
幸田 正典 堀 道雄 神田 猛 中嶋 康裕 ROSSITER Andrew 及川 信 狩野 賢司 ロシター アントリュー
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

3年の調査期間に1)魚類群集の種構成と構成種の形態の隔絶地域での比較研究、2)沿岸性カワスズメ類の人工岩礁への定着とその後の継続観察、3)永久調査区での構成種の個体数と種構成の継続調査、4)カワスズメの口器形態に見られる左右性の種毎の頻度の調査、5)いくつかの魚種での繁殖戦術の解明、6)複数種での特異的な共生関係の把握、等が行うことができた。1)では、砂浜により隔絶された岩礁性カワスズメでの、形態的差異が明らかになりつつあり、あわせてその変異の角魚類群集における意味についても検討が始まっている。2)では、定着の早い種遅い種について、その違いをもたらす要因について比較検討がなされつつある。3)では今回の調査から、岩礁性魚類群集が極めて安定していることが明らかとなった。この問題にからんだ大規模な魚種除去実験の結果からこの安定性をもたらす要因の検討をはじめている。4)ではカワスズメ類各種の左右性の頻度が、ほぼ5年周期に起こることが今回の継続調査によりほぼ実証された。この周期性は捕食・被食関係に大きく起因することが示唆される証拠も得られた。5)では、魚類ではこれまで報告のない協同的一妻多夫制の例が2種で見つかった。なぜこの2種でこの婚姻形態が見られるのか、その成立要因も含め現在詳細な分析が進んでいる。また、雄のスニーキング戦術の見られた種では、父性判定により、その戦術が同湖魚類では初めて実証された。6)では、ナマズ類での托卵現象や淡水魚ではこれまで報告のない魚類間でのクリーニング共生関係の存在も明らかにされた。成果の一部はすでに公表しているが、今後魚類群集の安定性とそれをもたらす要因解明の野外実験結果、左右性の周期性、さらに多様な種間関係の発見等の解析から、同湖魚類群集の多様性と可塑性についての研究成果は、順次公表の予定である。
著者
丸山 俊朗 鈴木 祥広 佐藤 大輔 神田 猛 道下 保
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.818-825, 1999-09-15
参考文献数
24
被引用文献数
14 15

閉鎖循環式の泡沫分離・硝化システムと従来の流水式システムでヒラメを飼育し, 閉鎖循環式養殖の可能性を検討した。本閉鎖循環式システムは, 飼育水槽, 空気自吸式エアーレーターを設置した気液接触・泡沫分離槽, 硝化・固液分離槽, およびpH・水温調整槽からなる。ヒラメ幼魚200尾を収容(初期収容率2.8%)し, 90日間の飼育実験(実験終了時収容率5.0%)を行った。本閉鎖循環式システムと流水式システムを比較すると, 生残率はそれぞれ93.5%と98%であり, また, 飼料効率は, それぞれ117%と110%であった。本閉鎖循環式システムによって, 飼育水をほぼ完全に排水することなしに, 高密度飼育することができた。
著者
杉尾 哲 神田 猛 西脇 亜也 森田 哲夫 村上 啓介 伊藤 哲
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

温暖多雨の亜熱帯性気候下にある宮崎県の南半分に位置する宮崎県内の5河川と沖縄県内の5河川を調査対象河川として、工改変による河川環境への影響を定量的に評価し、さらに河川環境の復元を予測する手法について検討した。このうち、宮崎県県最南端に位置する千野川においては治水と環境保全を調和させる川づくりが実施された。そこで本研究では、生態系の生息環境が整った区間における生態系の相互作用の検討と、河川改修が進んだ区間での河川改修による河川環境へのインパクトに対する生態系のレスポンスについての継続的なモニタリングを実施して物理環境と生態環境の両面から定量的に計測し、これらの結果から河川環境システムを総合的に評価することとした。その結果、千野川の旧河道の土壌環境は、高位・低位法面と河床堆積面の中間的な性質を保持していたこと、新河道においては、植生は旧河道の種組成を復元していたが次第に外来種が繁茂する傾向にあること、鳥類は9目23科52種が観察されて千野川が水鳥・水辺の鳥にとって良好な採餌場になりつつあること、小型哺乳類はイタチが捕食の場として利用しうる段階まで復元したこと、ホタルの飛翔はこれまでとほぼ同じ数を保持できていて、ホタルは新河道で生活サイクルを完結させていること、などが確認された。しかし、他の河川を加えて千野川の河川環境を総合的に評価した結果、千野川の新河道は、化学的環境に特徴を持ち、日常的な人間活動によって十分に影響を受けた箇所に分類された。また物理的環境は、深掘れが発生したことによって比較的に良くない状態であることなどが判明した。このことから、河川改修による河川環境へのインパクトを受けた河川での環境の形成には、モニタリングを継続して物理的環境を改善するなどのフォローアップが必要であることが分かった。