- 著者
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杉原 潤之輔
松井 敦典
大森 義彦
- 出版者
- 鳴門教育大学
- 巻号頁・発行日
- 1987
1.62年度は,現代における四国偏路の実態を把握することを第1課題とし,1番札所における観察調査といくつかの先行研究の検討から以下の知見を得た.(1) 偏路の年齢は50〜60歳代が全体の2/3を占め,若年層は少い.(2) 交通手段としては自家用車利用の偏路が最も多いが,人数としては団体バス利用者が最多である.(3) 徒歩巡拝者は全体の5%未満で,全行程徒歩による巡拝者はさらに小少とみられる.(4) 日程的には,日帰り偏路が多く,宿泊を伴う場合も,何回かに分けて回る人が多い.(5) 1回きりではなく,何回も回る人が多い(3回以上35%).2.上記の一般的傾向に加えて,特に徒歩巡拝者に焦点をしぼって一歩踏み込んだ調査を行い,以下の知見を得た.(1) 調査対象として選んだ徒歩巡拝全国友の会のメンバー61名(平均年齢 65.1歳,男子25名,女子36名)は,1番から23番に至る阿波ー国162キロの行程を6泊7日・1日平均10時間歩行のペースで全員完歩した.(2) 道中最も苦しかったコースとして11番〜12番・20番〜21番の山道をあげた人が67%と多かったが,最も気に入ったコースとして同じ道をあげた人が同じように67%いたことは興味深い.(3) 徒歩巡拝者のために旧へんろ道を昔のまま状態で保存して欲しいという要望が強く,道中印象に残ったものとして古い丁石や道標をあげた人が多い(51%).(4) この企画は88ヶ所を4期に分けて全行程徒歩巡拝するものであり,全員が第2期に当る次回も参加予定である.