著者
西田 順一 大友 智
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.285-297, 2010 (Released:2012-03-07)
参考文献数
30
被引用文献数
10 2

運動・身体活動の実施により, 生理的・社会的恩恵と同様に心理的恩恵が得られることが示されている。本研究では, 学校教員の運動・身体活動実施程度および学校ストレス経験がメンタルヘルスにどの程度影響を及ぼすかどうかについて, 個人的特性を考慮した上で検討した。管理職を除いた常勤の小・中学校教員を対象にメンタルヘルス, 運動・身体活動, そしてストレス経験の質問紙調査を実施し, 255名の有効回答を分析対象とした。個人的特性の違いから分析した結果, 女性に比べ男性のメンタルヘルスが良好であることが示された。従って性差を考慮し, メンタルヘルスヘの影響を構造方程式モデリングにより分析した結果, 男女共に「運動・身体活動」は「生きがい度」に有意な正の影響を及ぼし、「ストレス]度に有意な負の影響を及ぼすことが示された。「運動・身体活動」は, 男性では「運動・スポーツ」が影響を及ぼしていたが, 女性ではこれに加え「時間の管理」が影響を及ぼしていた。また, 男女共に「ストレス経験」が「運動・身体活動」を介しメンタルヘルスに影響するという過程は示されず, 運動・身体活動の実施によるメンタルヘルスヘの直接的影響のみが示された。
著者
梅垣 明美 大友 智 上田 憲嗣 深田 直宏 吉井 健人 宮尾 夏姫
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.367-381, 2018-06-10 (Released:2018-06-20)
参考文献数
43

In school education, it is important to encourage students to improve their social skills. Umegaki et al. (2016b) have developed an instructional model known as the Acquisition of Social Knowledge in Sport (ASKS) Model for facilitating improvement in social skills in the context of physical education. They consider that the ASKS Model with heterogeneous team organization would improve social skills that would be applicable to daily life outside of physical education classes and help students to maintain these social skills. However, no previous study has examined whether the ASKS Model would be effective for homogeneously organized teams. Therefore, the present study was designed to examine the type of team organization that would be most effective for the ASKS Model by comparing physical education classes with the ASKS Model based on homogeneous teams and heterogeneous teams. The study focused on physical education classes for male students in the second year of junior high school. The classes included those without the ASKS Model, those with the ASKS Model based on homogeneous teams, and those with the ASKS Model based on heterogeneous teams. A formative evaluation of friendship-building and the KiSS-18 questionnaire on paper were administered before and after each class. The study confirmed 2 points: First, the ASKS Model appeared to be effective when heterogeneous teams were organized. Second, the effectiveness was suggested to be improved when heterogeneity of motor skills was maintained, rather than heterogeneity of social skills.
著者
大友 智 岡出 美則 中井 隆司
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は,大学・大学院における実践的指導力量形成のための体育科教員養成プログラムの開発であった.この目的を達成するために,以下の課題を設定し,検討した.第一に,体育科教員養成の課題について検討した.具体的には,近年,諸外国から体育科教育学研究者が招聘され体育教師教育に関する情報交換が行われているが,そこで論議されていることは何か,体育科の専門性と教師教育の課題は何か,教師の力量を高めるためにどのような授業研究が求められるのか,そして,教員養成段階にある学生は,体育をどのように捉えているのかを検討した.第二に,新任教師の能力基準を打ち出し,教師教育改革がすでに実行されているアメリカを対象に,体育教師教育カリキュラムとそのアセスメントを分析した.特に,JTPEにおいて,体育教師教育の取り組みが特集で紹介されているジョージア州立大学に焦点を絞り,その考え方やシステムを分析した.第三に,体育教師教育で利用することのできる期間記録に関するデジタルコンテンツ及び相互作用行動に関するデジタルコンテンツを作成し,それらの有効性を検討した.これらのデジタルコンテンツは,近年の体育授業研究成果を参照し,どの教師にとっても必要とされ,獲得できる可能性の高いものを設定するように試みた.また,それらのデジタルコンテンツを実際の大学の授業に適用し,学生の指導力量がどのように変化したかを分析した.第四に,体育授業の研究方法論を検討した.体育授業研究の研究成果は,体育教師教育の内容を豊かにしていくが,新たな知見は,新たな研究方法によって産出される.そのような意味から,質的研究と認知に関する体育授業研究方法論に検討を加えた.