著者
渡辺 信一郎 伯田 宏 松尾 敬志 原 寛 原志 兎太郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.42-50, 1981-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
6

原は以前に灸の効果を従来の経絡説ではなく「非特異性加熱自家蛋白体療法説」を提唱した。これは今日の非特異的免疫療法に相当するものと考えられる。ラットを用い通常のモグサ施灸と同一条件なる電子灸を用い, 連日一定期間施灸し, その後, ヒトγグロブリンを抗原とし, 感作後の足蹠の浮腫増強作用, 血中抗体価の変動を測定し, 抗原にじゃっきされる炎症性浮腫は抗原抗体複合物III型の即時型反応によること, 免疫賦活剤であるレバミゾールと比較すると施灸群の方がより高い抗体価が得られ, 両者併用群で更に強い効果のあることが明らかとなった。灸の臨床面での有効性の1つに免疫増強作用のあることが示唆された。今後細胞レベルで免疫賦活作用の機序について検討を加えたい。
著者
菅 俊行 石川 邦夫 松尾 敬志 恵比須 繁之
出版者
特定非営利活動法人日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.313-320, 2007-06-30
被引用文献数
5

フッ化ジアンミン銀(サホライド^[○!R])は,齲蝕進行抑制剤および象牙質知覚過敏症治療剤として臨床で使用されている.しかしながら,フッ化ジアンミン銀は塗布後に銀の沈着による歯の黒変が起こる.したがって,フッ化ジアンミン銀は主に乳歯に使用されている.この欠点を改良するために,フッ化ジアミンシリケートを調製した.銀の代わりにシリカを導入した理由は,シリカは歯質の変色を起こさないこと,そして擬似体液からアパタイトの生成を誘導するからである.本研究の目的はヒト口腔内を模倣した環境下において,フッ化ジアミンシリケート処理後の象牙細管封鎖効果と持続性を評価することである.フッ化ジアミンシリケートの象牙細管封鎖効果は,ヒト抜去歯を用いて評価を行った.フッ化ジアミンシリケート処理直後および人工唾液浸漬7日後の象牙質プレートの表面を,走査電子顕微鏡(SEM)にて観察を行った.SEM観察の結果,開口象牙細管はフッ化ジアミンシリケート処理直後にはシリカ-リン酸カルシウム結晶により完全に封鎖されていた.さらに,人工唾液浸漬7日後には象牙質表面は新たに生成した結晶により覆われていた.EDXA分析によると,フッ化ジアミンシリケート処理直後に象牙細管内に析出した結晶はシリカ,カルシウム,リンを含有しており,シリカ-リン酸カルシウム結晶であることが明らかとなった.その結晶のカルシウムとリンのモル比はフッ化ジアミンシリケート処理直後には2.02であったが,人工唾液浸漬後には徐々に減少した.一方,象牙質表面に新たに生成した結晶は実験期間を通して,ほぼ一定の値(Ca/P=1.16〜1.28)であった.周囲の管間象牙質と比べて有意に低い値であることから,おそらくカルシウム欠損アパタイトが析出していると推察された.フッ化ジアミンシリケート処理は人工唾液中からリン酸カルシウムの析出を誘導し,したがって,ヒト口腔内を模倣した環境下において,持続的な象牙細管封鎖能を有することが明らかとなった.
著者
細川 義隆 細川 育子 尾崎 和美 松尾 敬志
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.10-16, 2018 (Released:2018-02-28)
参考文献数
15

目的 : テアフラビンは紅茶に含まれる渋味成分の一つであり, ポリフェノールに分類される色素成分である. テアフラビンは, 抗酸化作用・抗炎症作用などさまざまな生理活性作用が報告されているが, 口腔上皮細胞に対する作用に関しては不明な点が多く, 十分に明らかにされていない. 本研究では口腔上皮細胞に対するテアフラビンの抗炎症作用について調べることを目的とし, 炎症性サイトカインの一つであるインターロイキン (IL)-27が誘導するケモカイン産生に与えるテアフラビンの影響を明らかとするため検討を行った. 本研究では, Th1細胞浸潤に関与するケモカインであるCXC chemokine ligand (CXCL) 9, CXCL10およびCXCL11産生に着目した. 材料と方法 : 口腔上皮細胞としてTR146細胞を用いた. TR146細胞のケモカイン産生は市販のELISAキットを用いて, テアフラビンにて1時間前処理後にIL-27で24時間刺激を行い, 上清中のCXCL9, CXCL10およびCXCL11産生を測定して検討した. また, IL-27が活性化するシグナル伝達経路に与えるテアフラビンの影響についてWestern blot法を用いて検討した. シグナル伝達経路としては, IL-27が活性化することが知られているprotein kinase B (Akt), extracellular signal-regulated kinase (ERK), signal transduction and activator of transcription (STAT) 1およびSTAT3に着目した. 結果 : テアフラビンの前処理によりIL-27で誘導されたTR146細胞のCXCL9, CXCL10およびCXCL11産生は, 濃度依存的に抑制された. また, IL-27が誘導したAkt, ERK, STAT1およびSTAT3のリン酸化は, テアフラビン処理により抑制された. 結論 : テアフラビンは口腔上皮細胞においてIL-27誘導ケモカイン産生を抑制することにより, 歯周炎組織の炎症を軽減できる可能性が示唆された.
著者
渡辺 信一郎 松尾 敬志 原 寛 広瀬 勝美 原 志免太郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.20-26, 1982-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
6

前報に続き施灸後の免疫賦活作用の機序の解明のため抗原としてT細胞依存性の DNP-KLH, T細胞非依存性の DNP-Ficoll を用い, 電子灸の施灸を一定期間受けた Wistar ラットについて, 二次免疫後4日目の脾細胞DNP抗体産生細胞数につき検討した。結果, 施灸を実験前日まで9週余り行うと, 非施灸群あるいは抗原感作前に4週間施灸した群に比べ, DNP-KLH に対し著明な抗体産生細胞数の増加を認めた。しかし DNP-Ficoll では施灸による増強はなかった。施灸の免疫賦活作用を得るために要する期間について感作時まで4週行ったが対照群と有意差なく, 免疫増強効果を期待するには4週以上の長期にわたり施灸する必要のあること, その作用はT細胞機能の活性化を介し, 直接抗体産生細胞やB細胞に作用しない。
著者
湯本 浩通 松尾 敬志 尾崎 和美 中西 正 中江 英明
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

高周波・電磁波照射(500-1, 000 kHz, 5-10回, 1秒/回)は、口腔病原菌に対して照射回数依存的な殺菌効果を示した。また高周波・電磁波照射(500 kHz, 5回, 1秒/回)は、骨芽細胞の増殖を促進させ、さらに様々な成長因子の遺伝子発現や蛋白産生も増強させた。以上より、高周波・電磁波照射は、難治性根尖性歯周炎に対する非外科的歯内療法あるいは歯槽骨再生療法に応用できる可能性が示唆された。