著者
井垣 宏 中村 匡秀 玉田 春昭 松本 健一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.314-326, 2005-02-15
参考文献数
26
被引用文献数
11

ホームネットワークに接続された家電機器を連携制御しユーザの快適性・利便性を高める,家電機器連携サービスの一実現手法を提案する.既存の機器連携システムでは,ホームサーバが家電機器を中央集権的に制御する方式が一般的である.しかしながら,家電機器の多様化・高性能化により,ホームサーバへの負荷集中や信頼性・相互接続性の低下が問題となる.そこで我々は,サービス指向アーキテクチャ(SOA)に基づいた新たな連携サービス実現方式を提案する.提案手法では,各機器が自己の機能をサービスとしてネットワークに公開し,他の機器が公開するサービスを互いに実行することで連携を行う.これにより,各機器はサービスを介して疎結合され,ホームサーバも不要となる.したがって,より柔軟で障害や負荷に強い連携サービスの実現が可能となる.本稿では,SOAに基づいて連携サービスを設計・実装するための枠組みを示し,Webサービスを用いたプロトタイプ開発を行う.また,連携サービスの評価尺度として,信頼性,負荷,結合度を定義し,従来システムと提案システムの定量的な比較評価を行う.This paper presents a method to implement the integrated services of networked home electric appliances, which provide more convenient and comfortable living for home users. The conventional methods generally employ a home server to achieve the integrated services. The server controls all the networked appliances in a centralized manner. However, as the number of sophisticated appliances increases, the centralized server suffers from the concentration of load, as well as a decline in the reliability and interoperability. To cope with this problem, we adopt the service-oriented architecture (SOA) for the implementation of the integrated services. In the proposed framework, each appliance exports own features as a service. The appliances autonomously execute the exported services one another to achieve the integrated services. Thus, the appliances are loosely coupled via the exported services, without the centralized home server. This enables more flexible, balanced and reliable integrated services. In this paper, we present a framework to design and implement the integrated services based on the SOA, and illustrate a prototype system developed with Web services. We also define three kinds of metrics (i.e., reliability, workload, and coupling) and conduct a comparative evaluation between the proposed and the previous systems.
著者
角田 雅照 大杉 直樹 門田暁人 松本 健一 佐藤慎一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.1155-1164, 2005-05-15
被引用文献数
12

ソフトウェア開発における工数予測を目的として,過去のソフトウェア開発プロジェクトにおいて記録された多種類のソフトウェアメトリクス値を入力データとし,協調フィルタリングにより予測工数を求める方法を提案する.協調フィルタリングは,未計測の値(欠損値)が大量に含まれているデータを入力とした場合でも予測が行えるという特長があるが,ソフトウェア工数予測に適用する方法はこれまで提案されていない.提案方法では,まず,入力となるメトリクス値を正規化し,値域を揃える.次に,正規化したメトリクス値を用いて,予測対象(開発中)のプロジェクトと,過去に行われたプロジェクトとの類似度を計算する.最後に,類似度の高い(予測対象プロジェクトと類似した)プロジェクトの工数を類似度で加重平均した値を,予測対象プロジェクトの工数とする.ケーススタディとして,株式会社NTTデータにおいて1 081件のソフトウェアプロジェクトから計測された14種類のメトリクス(約60%の欠損値を含む)を用いて試験工数を予測した.その結果,提案方法は従来方法(欠損値処理法を用いたステップワイズ重回帰分析)よりも高い精度を示し,予測試験工数の相対誤差の平均値(1プロジェクトあたり)が22.11から0.79に改善された.To predict software development effort, this paper proposes an effort prediction method based on the Collaborative Filtering (CF) which uses as input various software metrics recorded in past software development projects. The CF has an advantage that it can conduct a prediction using "defective" input data containing a large amount of missing values. There are, however, no researches which propose a method for applying the CF to Software effort prediction. Our proposal consists of three steps. In the first step, we normalize values of metrics to equalize their value range. In the next step, we compute the similarity between target (current) project and past (completed) project using normalized values. In the last step, we estimate the effort of target project by computing the weighted sum of efforts of high-similarity projects (that are similar to the target project) using the similarity of each project as a weight. In a case study to evaluate our method, we predicted the test process effort using 1,081 software projects including 14 metrics whose missing value rate is 60%, which have been recorded at NTT DATA Corporation. As a result, the accuracy of our method showed better performance than conventional methods (stepwise multiple regression models); and, the average accuracy per project was improved from 22.11 to 0.79.
著者
藤田 房之 高田 義広 松本 健一 鳥居 宏次
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス
巻号頁・発行日
vol.93, no.244, pp.73-80, 1993-09-21

ソフトウェアの生産性や品質は,プログラマの能力に大きく依存することが指摘されている.しかし,プログラマの能力を客観的に測定するために収集すべきデータの種類や収集の方法は明らかになっていない.本報告では,プログラマのテスト・デバッグ能力を評価するための準備段階として,テスト・デバッグ過程の状態遷移のモデルを提案する.更に,提案するモデルのパラメータの推定に必要となる状態遷移時刻を,プログラマが入力したキーストロークのデータから自動的に推定する計測環境について述べる.評価実験の結果,開発した計測環境を用いることにより,プログラマの作業状況を撮影したビデオを観察することなしに,プログラマの状態遷移時刻の特定が可能であることが分かった.
著者
門田暁人 佐藤慎一 神谷 年洋 松本 健一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.2178-2188, 2003-08-15
被引用文献数
19

ソフトウェアに含まれるコードクローン(重複するコード列)は,ソフトウェアの構造を複雑にし,ソフトウェア品質に悪影響を与えるといわれている.しかし,コードクローンとソフトウェア品質の関係はこれまで定量的に明らかにされていない.本論文では,20年以上前に開発され,拡張COBOL言語で記述されたある大規模なレガシーソフトウェアを題材とし,代表的なソフトウェア品質である信頼性・保守性とコードクローンとの関係を定量的に分析した.信頼性の尺度として保守工程で発見された「フォールト数/LOC(Lines of Code)」を用い,保守性の尺度として「モジュールの改版数」を用いた.分析の結果,コードクローンを含むモジュール(clone-includedモジュール)は含まないモジュール(non-cloneモジュール)よりも信頼性(平均値)が約40%高いが,200行を超える大きさのコードクローンを含むモジュールは逆に信頼性が低いことが分かった.また,clone-includedモジュールはnon-cloneモジュールよりも改版数(平均値)が約40%大きく(すなわち,改版のためにより多くの保守コストが費やされてきた),さらに,モジュールに含まれるコードクローンのサイズが大きいほど改版数がより大きい傾向にあることが分かった.Existing researches suggest that the code clone (duplicated code section) is one of the factors that degrades the design and structure of software and lowers the various quality attributes. However, the influence of code clones on software quality has not been quantitatively clarified yet. In this paper, we quantitatively analyzed the relation between code clones and the software reliability and maintainability of twenty years old software, which is written in an extended COBOL language. We used the number of faults per LOC (Lines of Code) as a reliability metric, and the revision number of modules as a maintainability metric. As a result, we found that modules having code clones (clone-included modules) are 40{%} more reliable than modules having no code clone (non-clone modules) on average. Nevertheless, the modules having very large code clones (more than 200 SLOC) are less reliable than non-clone modules. We also found that clone-included modules are 40{%} less maintainable (having greater revision number on average) than non-clone modules; and, modules having larger code clone are less maintainable than modules having smaller code clone.
著者
玉田 春昭 神崎 雄一郎 中村 匡秀 門田 暁人 松本 健一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.195, pp.127-133, 2003-07-10
被引用文献数
2

本論文では盗用の疑いのあるJavaプログラムの発見を容易にすることを目的として,Javaクラスファイルからプログラム指紋を抽出する方法を提案する.提案方法はプログラム中の特徴的な箇所である初期値代入部分,メソッド呼び出し部分などを抽出し,指紋として用いる.このプログラム指紋を用いることにより,Javaクラスファイルを互いに区別することが可能となる.検証実験において,J2SDK SE 1.4.1_02のクラスライブラリに適用した結果,提案手法により99.94%のクラスを互いに区別できることを確認した.
著者
伊藤 充男 杉村 貴士 島 和之 松本 健一 鳥居 宏次
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告.IM, [情報メディア]
巻号頁・発行日
vol.98, no.9, pp.13-18, 1998-01-29

WWW ぺージの記述が HTML 規格に準拠していない場合, その解釈は WWW ブラウザに依存して異なる. このため, その WWW ぺージの作者が使用しているブラウザと異なるブラウザを使用した場合, 作者が意図している表示と異なることが多い. WWW ぺージを作成するときは, HTML 規格に準拠して, 特定のブラウザに依存しないように作成することが重要である. しかし, 現実にほとんどの WWW ぺージはブラウザに依存している. 本研究では, HTML 規格に準拠した WWW ぺージの記述を支援する HTML エディタを作成した.このエディタを用いることにより, WWWぺージの作者が HTML 規格を習得しなくても, ブラウザに依存しない WWW ぺージを記述することができる.
著者
神代 知範 大和 正武 門田 暁人 松本 健一 井上 克郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.722, pp.37-44, 2000-03-21
被引用文献数
6

本稿では, 計算機のGUIの操作効率の向上を目的として, ユーザの視線の動きとマウスを併用したGUI操作方法を提案する.対象とするGUI操作には, 日常的に行われる操作の一つである「ドラッグ&ドロップ操作」を選んだ.提案方式ではドラッグ&ドロップに含まれる操作を(1)選択対象であるアイコン付近への大まかなカーソルの移動, (2)アイコンへのカーソル位置の微調整, (3)アイコン選択の確定操作, の3つの基本操作に分け, (1)には視線を, (2)(3)にはマウスを用いる.さらに, (2)の微調整の方式としてAuto, Manual, SemiAutoの3方式を提案する.評価実験の結果, SemiAuto方式が従来のマウスだけの操作方式と同程度にミスが少ない上, より高速であることが分かった.
著者
大和 正武 門田暁人 松本 健一 井上 克郎 鳥居 宏次
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.1320-1329, 2001-06-15
被引用文献数
11

本稿では,一般的なGUI上でのターゲットのポインティング操作(ターゲットへマウスカーソルを移動し指し示す操作)に視線を利用することを目的として,ユーザの目の固視微動と視線の計測誤差の発生を考慮した3つのターゲット選択方式(Auto方式,Manual方式,SemiAuto方式)を比較検討する.(1) Auto方式では,ターゲットのサイズを仮想的に拡大する.(2) Manual方式では,ユーザが視線によるおおまかなポインティングを行った後で,ポインティング操作用デバイスをマウスに切り替える.(3) SemiAuto方式は,Auto方式とManual方式を組み合わせた方式である.一般的なGUIを想定した環境で評価実験を行った結果,SemiAuto方式による操作は従来のマウスのみを用いた操作に比べて,選択誤りを大幅に増やすことなく,操作時間は同程度かより短くなることが分かった.特に,非連続操作(カーソルの初期位置が不定の場合の選択操作)においては,操作時間を約2/3に短縮できた.The purpose of this paper is to increase the efficiency of pointingoperation --- an operation that moves and points a mouse cursor onto atarget item.We examined three pointing methods (Auto method, Manualmethod, and SemiAuto method) under the general GUI environment.By using the three examined methods, the computer user can select atarget even if jittery motions of user's eye and the measurementerror of an eye-tracking device occurred. (1) Auto method enlarges thetarget virtually. (2) Manual method switches the input device from theeye to the mouse after the user roughly pointed the target. (3)SemiAuto method is a method that combined Auto method and Manualmethod.The result of an experiment to evaluate three methods showedthat the efficiency of operation with SemiAuto method is same as orfaster than the mouse only operation without increasing errors largely.Especially, in the discontinuous selection situation (atarget selection whose cursor position is unpredictable), SemiAutomethod needed only about 2/3 of time of the mouse only operation.