著者
山田 貴之 松本 隆行
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.663-673, 2020-03-30 (Released:2020-04-15)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究では,初等教員養成課程学生を対象とした質問紙調査の結果に基づいて,「理科に対する興味」が「媒介要因」を経由し,「主体的・対話的で深い学び」に影響を及ぼすという因果モデルを仮定し,その妥当性について検討することを目的とした。その結果,「理科に対する興味」(「因子4:思考活性型」,「因子5:驚き発見型」)が,「媒介要因」(「因子7:批判的思考」,「因子8:学習行動」)を経由し,「主体的・対話的で深い学び」(「因子13:深い学び」,「因子14:対話的な学び」,「因子15:主体的な学び」)に直接的,間接的な影響を及ぼしていることが明らかとなった。これは,理科授業において,教師が驚きと発見のある事象や,思考を活性化させる事象の提示を工夫することで,学習者の興味が喚起されるとともに,「批判的思考」と「学習行動」が向上し,結果的に「主体的・対話的で深い学び」の実現につながることを示唆するものである。本研究により得られた知見は,「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業の工夫や指導法などを充実させていく必要があるという学習指導要領の方向性と一致し,理科授業において,「主体的・対話的で深い学び」を成立させるためには,「理科に対する興味」を喚起するとともに,「批判的思考」と「学習行動」の向上を促す指導の可能性を裏付ける根拠と示唆を得ることができた。