著者
板谷 一宏 黒田 高明 山口 文博 安原 努 福地 邦彦
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.235-241, 2007-12-25 (Released:2010-07-21)
参考文献数
12
被引用文献数
2

医療従事者に対する2005/2006シーズン用インフルエンザワクチンA/H1N1/New Caledonia/20/99, A/H3N2/New York/55/2004, B/Shanghai/361/2002の有効性を, それぞれのワクチン株のHI抗体価の変動を測定することで評価した. ワクチン接種前に40倍以上の有効防御免疫能を有した比率は, A/H1N1/New Caledoniaに対して65.0%, A/H3N2/New Yorkに対して32.5%, B/Shanghaiに対して48.4%, および2004/2005のワクチン株であるA/H3N2/Wyomingに対して42.0%であり, それらは, 接種後4週後にそれぞれ92.2%, 95.7%, 76.6%, 86.5%に増加した. 接種後に4倍以上の有意の抗体価上昇を認めたのは, ワクチン接種前に40倍未満の有効防御免疫を有さない群に高率 (p<0.001) であった. 40倍以上の抗体価を有する比率は, 16週後にそれぞれ89.6%, 88.1%, 70.1%, 86.6%に, そして1年後にそれぞれ67.2%, 62.5%, 57.8%, 50.0%に漸減した. このうちA/H1N1/New Caledoniaは接種前の比率と同レベルに低下したが, それ以外は接種前と比べ高率だった. 11名のワクチン非接種群の検討において, 典型的インフルエンザ所見を示したものは無かったが, そのうち4名が4倍以上の抗体価上昇を認め, 不顕性感染の可能性を示唆した. 接種群においてもインフルエンザ所見を示したものがいなかったため, 感染防御効果は判定し得なかった. 今回検討で示したA/H3N2/WyomingとA/H3N2/New Yorkの基礎抗体価の比較で明らかとなったごとく, インフルエンザウイルスの小変異という特性から考えて毎年のワクチン接種が推奨されると考えられた.

1 0 0 0 OA 横紋筋融解症

著者
板谷 一宏 市川 博雄
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.394-398, 2015 (Released:2016-01-23)
参考文献数
17
被引用文献数
2
著者
板谷 一宏 井上 学 飯塚 奈都子 清水 裕樹 結城 伸泰 市川 博雄
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.633-636, 2016 (Released:2016-09-29)
参考文献数
10

症例は17歳の男性である.徐々に上下肢の筋力低下を自覚し,走った際にバランスを崩すようになった.加えて姿勢時に手指の振戦が出現した.典型的慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチーの病型に加えて,上肢の振戦と下肢の運動失調を認めたことから抗neurofascin-155抗体の関与を疑い,陽性であった.同抗体陽性である慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチーの詳細な症例報告論文としては本邦初であるが,振戦,免疫グロブリン大量静注療法抵抗性といった,比較的類似した臨床像を持つ一群である可能性が指摘されてきており,同抗体の検討は有効な治療選択の一助となる可能性がある.