- 著者
-
桐渕 壽子
- 出版者
- The Japan Society of Home Economics
- 雑誌
- 日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.4, pp.271-277, 1989-04-05 (Released:2010-03-10)
- 参考文献数
- 7
1) きな粉の保存性に関して脂質およびアミノ酸成分の変化から検討した.2) きな粉は 150℃ で 30 分焙煎したもの (きな粉 I) と, 180℃ で 30 分焙煎したもの (きな粉 II) の2種を調製し, 5, 30, 40℃ で 180 日間保存し, AV, POV, 脂肪酸組成およびアミノ酸成分の変化をしらべた.3) きな粉 I, きな粉 II ともに 30℃ 以下の保存では酸敗がみられなかったが, 40℃ に保存すると, きな粉五ではしだいに酸敗が起こり, 保存 120 日を過ぎると POVは急激に上昇し, 180 日では食品衛生法の基準値を越えて 35mEq/kg となった.4) 脂肪酸組成は大豆を焙煎することにより, リノール酸, リノレン酸の組成比が減少し, 焙煎により酸化分解すると考えられた.保存中は 30℃ 以下ではほとんど変化はなく, 40℃ の高温に保存の時のみわずかに酸化されるようであった.5) 大豆を焙煎することにより遊離アミノ酸量の減少がみられた.とくにリジンやアルギニンおよびアンモニアの減少が著しく, これはアミノ-カルボニル反応に関与し, 褐変色素メラノイジンを生成したものと推察した.6) 40℃ で保存すると, 大豆粉は遊離アミノ酸が増加し, とくにアンモニアの増加が著しく, 脂質の酸敗臭とともに悪臭の原因をなしていると思われた.しかし十分に焙煎したきな粉ではまったく変化がなかった.7) きな粉は十分に焙煎して作られたものならば, 30℃ 以下では十分保存性のある食品と思われた.