著者
桐渕 壽子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.401-406, 1990-05-05 (Released:2010-03-10)
参考文献数
8

人工的に完全室内栽培で生産されているヒラタケやエノキタケに含まれているエルゴステロールおよびビタミンD2の量, また紫外線照射によるビタミンD2の生成量などを干しシイタケや生シイタケと比較検討した.(1) ヒラタケとエノキタケにはシイタケと同様にエルゴステロールが含まれており, 前者での含有率は生シイタケとほぼ同程度であり, 干しシイタケよりむしろ多いが, 後者ではヒラタケの約1/2量であった.(2) ヒラタケやエノキタケにはビタミンD2がほとんど認められなかった.(3) 干しシイタケ, 生シイタケ, ヒラタケ, エノキタケに日光や紫外線を照射すると, ビタミンD2が生成されるが, 日光に曝すよりは紫外線照射のほうが生成効率がよい.(4) 紫外線3時間の照射によるビタミンD2の生成量はエノキタケが最も多く, ついでヒラタケ, 生シイタケ, 干しシイタケの順となり, それぞれ19あたり, 1,993,897,473,453IUであった.(5) これらのキノコは食べる前に日光に曝すことで, ビタミンD2を増加させることができ, 1日のビタミンDの所要量を容易に満たすことができると思われる.
著者
桐渕 壽子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.395-400, 1990-05-05 (Released:2010-03-10)
参考文献数
11

(1) フロリジルカラムクロマトグラフィーと HPLCを組み合わせた分析法により, キノコ中のエルゴステロールおよびビタミンD2の分別定量を簡便に行うことができる.(2) 市販の干しシイタケとヒラタケ中のビタミン D2とエルゴステロールの定量を行った.干しシイタケはビタミンD2の存在が認められる場合とほとんど検出されない場合があった.ヒラタケにはエルゴステロールがシイタケと同程度含まれるが, ビタミンD2はほとんど検出できなかった.(3) 干しシイタケとヒラタケに日光や紫外線を照射するとビタミンD2が生成された.日光にさらす時間の長いほどビタミンD2の生成量は多くなり, 紫外線照射によりざらに多量のビタミンD2が生成された.
著者
桐渕 壽子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.210-216, 1995-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
7
被引用文献数
2
著者
久保田 紀久枝 桐渕 壽子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.144-147, 1978
被引用文献数
1

甘藷を加熱調理し, その際のVCの変化をしらべた.<BR>1) 蒸し加熱, 電子レンジ加熱の場合にはVCはほとんど変化せず, 焙焼加熱の場合にのみVCの減少がみられ総VCの残存率は約40~60%であった.<BR>2) 蒸し加熱および焙焼加熱の場合, 長時間加熱を続けた場合でもVC量にはほとんど変化がみられなかった.<BR>3) 焙焼加熱の場合, 器内温度170℃で40分焼いた場合より140℃で100分焼いた場合の方がVCの著しい損失がみられた.これらの結果, 高温, 長時間加熱がVC分解の要因になっているのてはないことを示している.<BR>4) 焙焼加熱の場合, 中心部の温度が60~70℃付近に長く保たれる条件で加熱されたとぎVCの減少が著しかった.この場合, 酸化型ビタミンCはいったん増加し, 次いで減少していき還元型ビタミンCが酸化型ビタミンCを経て分解されていくことを示している.<BR>5) 以上のことから, 加熱調理の際のVCの減少は, 高温による熱分解ではなく, ビタミンC酸化酵素が作用していることが示唆された.
著者
桐渕 壽子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.649-654, 1992

(1) ビタミンD<SUB>2</SUB>の生成は日光より紫外線照射の方が数倍効果的である.使用したキノコの中ではエノキタケが最も多くビタミンD<SUB>2</SUB>が生成され, 2時間の紫外線照射で約2,000IU/g (乾物), 30分で約1,500IU/g (乾物) であった.<BR>(2) ビタミンD<SUB>2</SUB>強化エノキタケを作るため, 生産レベルでの照射を想定したモデル実験では30分の照射で500IU/g (乾物) のビタミンD<SUB>2</SUB>が生成され, 実用化には培養のプロセスから考えて, 30分位が適当と思われた. (3) 紫外線照射しビタミンD<SUB>2</SUB>が生成されたキノコを乾燥するとビタミンD<SUB>2</SUB>は約10%減少するが, 十分にビタミンD<SUB>2</SUB>供給食品として利用できる.<BR>(4) 日光や紫外線照射により生成されたビタミンD<SUB>2</SUB>は保存中に減少はするものの, 乾燥キノコの場合は6カ月保存しても約80%残存しており, 比較的安定であるといえる.<BR>(5) 紫外線照射後乾燥したビタミンD<SUB>2</SUB>強化エノキタケをビタミンD<SUB>2</SUB>強化食品素材として利用することが期待できる.
著者
桐渕 壽子 川嶋 かほる
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.877-887, 1987-10-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
14
被引用文献数
3

1) 未加熱の調理においては, 一部の食品を除いては, 総アスコルビン酸量はほとんど変化がなかった.アスコルビン酸酸化酵素を有するものはただちにデヒドロアスコルビン酸に酸化されるが, それ以上変化することはなかった.2) 大根と人参の “もみじおろし” の場合も酸化型になってしまうが, 総アスコルビン酸量には変化はなかった.3) 馬鈴薯を加熱調理したさい, 高温急速加熱ではアスコルビン酸はほとんど変化せず残っていた.比較的低温で長時間 (140℃, 60分) かけて焼くと, 約60%は分解された. “ベークドポテト” は総アスコルビン酸は約50%残存し, 大きめの馬鈴薯 (約200g) を1個食べるとアスコルビン酸の1日の所要量をほぼ満たす.4) 馬鈴薯をゆでた場合, 馬鈴薯のほうには約50%残存し, ゆで汁への溶出は約10%で, 他の葉菜類に比べると溶出量は少ない.30~40%は分解されていた.5) キャベツやピーマンをゆでた場合, ゆで汁と合わせると, 総アスコルビン酸量はほとんど変化していなかった.また油いためも同様, 分解はみられなかった.6) 酸化型の生理学的効力もレアスコルビン酸と同等とみなすと, 総じて, 調理による損失はきわめて少ないといえる.
著者
桐渕 壽子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.271-277, 1989-04-05 (Released:2010-03-10)
参考文献数
7

1) きな粉の保存性に関して脂質およびアミノ酸成分の変化から検討した.2) きな粉は 150℃ で 30 分焙煎したもの (きな粉 I) と, 180℃ で 30 分焙煎したもの (きな粉 II) の2種を調製し, 5, 30, 40℃ で 180 日間保存し, AV, POV, 脂肪酸組成およびアミノ酸成分の変化をしらべた.3) きな粉 I, きな粉 II ともに 30℃ 以下の保存では酸敗がみられなかったが, 40℃ に保存すると, きな粉五ではしだいに酸敗が起こり, 保存 120 日を過ぎると POVは急激に上昇し, 180 日では食品衛生法の基準値を越えて 35mEq/kg となった.4) 脂肪酸組成は大豆を焙煎することにより, リノール酸, リノレン酸の組成比が減少し, 焙煎により酸化分解すると考えられた.保存中は 30℃ 以下ではほとんど変化はなく, 40℃ の高温に保存の時のみわずかに酸化されるようであった.5) 大豆を焙煎することにより遊離アミノ酸量の減少がみられた.とくにリジンやアルギニンおよびアンモニアの減少が著しく, これはアミノ-カルボニル反応に関与し, 褐変色素メラノイジンを生成したものと推察した.6) 40℃ で保存すると, 大豆粉は遊離アミノ酸が増加し, とくにアンモニアの増加が著しく, 脂質の酸敗臭とともに悪臭の原因をなしていると思われた.しかし十分に焙煎したきな粉ではまったく変化がなかった.7) きな粉は十分に焙煎して作られたものならば, 30℃ 以下では十分保存性のある食品と思われた.