著者
梅枝 愛郎
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.375-381, 2010-11-01 (Released:2010-12-16)
参考文献数
3

診療における最初の重要な判断である診断について考察した. その思考過程では, まず問診・診察・検査などで患者情報を収集し, これらを整理, 分析して帰納的に仮診断を立てること (仮説法) が行われる. 次に, 確立されている疾患を大前提とし, 仮診断 (小前提) がこれに適っていること, 正しいことを演繹的論証で導くが, その際には三段論法を用いていることが多い. この診断体系を仮説演繹法というが, その仕組みと健全性を検証した. 多くの医師は無意識にこの診断過程を辿っていると思われるが, この体系や三段論法について理解・認識している者は少ないようである. また, 診断における論理について解説した書もあまり見当たらない. 本稿では, 症例を提示しながら診断の理論体系について考察したが, とりわけ仮診断とこれを導く帰納的推論の重要性を述べ, その為の情報収集と分析の技術・知識と経験の大切さについて言及した.
著者
梅枝 愛郎 北市 正則 松井 茂 色川 正貴 片貝 重之 中沢 次夫 飯塚 邦彦 三浦 進 笛木 隆三 小林 節雄
出版者
社団法人 日本呼吸器学会
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.804-809, 1986

「蚕 (カイコ)」体成分の吸入に起因する過敏性肺炎 (養蚕者肺症) の1例を報告した. 症例は48歳女性, 養蚕農家の主婦で咳, 痰, 労作時息切れ等が「繭かき」「ケバ取り」などの養蚕作業と関連して出現. 初診時軽いチアノーゼを認め, 胸部で捻髪音聴取. 血沈亢進, CRP (2+), 白血球増多, 低酸素血症, 胸部レ線でスリガラス様陰影を認め, 肺機能で拘束性障害と拡散能の低下がみられた. 免疫学的検査ではツベルクリン反応陰性で, 蚕体成分の一つである熟蚕尿に対する沈降抗体陽性であった. 肺組織には胞隔炎, 類上皮細胞肉芽腫, マッソン体が認められた. 入院後症状の自然改善が見られ, 血沈等が正常化し, ラ音の聴取されないことを確認して熟蚕尿による吸入誘発試験を行った. 吸入後捻髪音が出現し, 拡散能は前値に比し30%低下したため, 誘発試験陽性と判定した. 以上より本症例は蚕体成分である熟蚕尿に起因する過敏性肺炎 (養蚕者肺症) と診断した.
著者
梅枝 愛郎 松井 茂 色川 正貴 片貝 重之 中沢 次夫 飯塚 邦彦 三浦 進 笛木 隆三 小林 節雄 北市 正則
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.804-809, 1986-07-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
17

「蚕 (カイコ)」体成分の吸入に起因する過敏性肺炎 (養蚕者肺症) の1例を報告した. 症例は48歳女性, 養蚕農家の主婦で咳, 痰, 労作時息切れ等が「繭かき」「ケバ取り」などの養蚕作業と関連して出現. 初診時軽いチアノーゼを認め, 胸部で捻髪音聴取. 血沈亢進, CRP (2+), 白血球増多, 低酸素血症, 胸部レ線でスリガラス様陰影を認め, 肺機能で拘束性障害と拡散能の低下がみられた. 免疫学的検査ではツベルクリン反応陰性で, 蚕体成分の一つである熟蚕尿に対する沈降抗体陽性であった. 肺組織には胞隔炎, 類上皮細胞肉芽腫, マッソン体が認められた. 入院後症状の自然改善が見られ, 血沈等が正常化し, ラ音の聴取されないことを確認して熟蚕尿による吸入誘発試験を行った. 吸入後捻髪音が出現し, 拡散能は前値に比し30%低下したため, 誘発試験陽性と判定した. 以上より本症例は蚕体成分である熟蚕尿に起因する過敏性肺炎 (養蚕者肺症) と診断した.
著者
善如寺 路子 佐藤 則之 宮崎 誠 梅枝 愛郎 森 昌朋
出版者
日本炎症・再生医学会
雑誌
炎症 (ISSN:03894290)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.419-423, 1996-11-30 (Released:2010-04-12)
参考文献数
8

The chronic fatigue syndrome (CFS) is a condition of unknown etiology, characterized by an extreme fatigue that is exacerbated by minimal physical activity. Immunological abonormality is prevalent in patients with CFS (e. g. abnormal functions of natural killer cell, macrophage, and lymphocyte) . However, in our knowledge, no study has been reported about neutrophil function, so that we have investigated a neutrophil bactericidal function, luminol-dependent chemiluminescence (L-DCL), in a 24-years old female with CFS. L-DCL under whole blood condition was apparently increased, while L-DCL from separated neutrophils was in normal range. A combination therapy with vitamin C, vitamin E, and eicosapentanoic acid, those are known to be antioxidant drugs and to inhibit a generation of oxygen derived free radicals from neutrophils, apparently improved her symptoms and L-DCL under whole blood condition. These data suggest that symptoms of CFS may be partially caused by inflammatory mediators such as oxygen derived free radicals and the combination therapy may be useful to improve the symptoms of CFS. It may be possible that the measurement of neutrophil bactericidal function is available to evaluate the condition of CFS.